表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
black ogre  作者: zephy1024
第一章 美小鬼王編
24/68

024.宿屋にて

 部屋に一人になったシェリアナ。

 ノックもせず入ってきた鬼小鬼(オーガゴブリン)

 五体の醜小鬼(アグリゴブリン)を従えている。

 彼女を取り囲むように武器を構えた。


「シェリアナ、やはり村の者と内通していたようだな」


「あら? 古い友人が来たから話しをしていただけなんだけど?」


「嘘つけ? どうせ奴もすぐに捕まる。おらは前からおまえを犯してやりたいと思ってたんだ。これで何の憂いもなく出来るぜ」


「ボス、オレタチモイイヨネ?」


「おらが楽しんだ後にな」


 下品な顔をしている六体。

 沈みかけた表情から一転して、意を決した顔のシェリアナ。

 華麗な動きで彼女は剣を抜いた。


「お前たちのような雑魚に体を許してやる程、私は甘くはないわよ」


「へっ、一人で何が出来る!? それに俺達は妹を人質にしてるんだぜ。抵抗すればどうなるかわかっているんだろうな?」


「それは私が約束を反故にした事が、ドウラ国に伝わればの話でしょ? 今ここで死ぬあなた達には関係ないわ」


「あんだと? なめんじゃねーぞ?」


 手に持った大槌を振り上げた。

 シェリアナに振り下ろした大小鬼(オーガゴブリン)

 しかし、シェリアナの放った剣撃により、大槌は二つに分断された。


「聖騎士という名の称号の意味をよく噛み締めなさい」


 六対一という不利な状況。

 更には室内での戦闘。

 にも関わらず、彼女の繰り出す剣撃は苛烈だった。

 瞬く間に五体とも切り伏せる。


「・・・アラル、あなたの言葉を信じてみる事にするわ」


-----------------------------------------


 シェリアナとの会談を終えたアラル。

 一目散に宿屋に向う。


 だがまるで待ち伏せしていたかのようだった。

 醜小鬼(アグリゴブリン)の群れが道を塞いだ。

 その数は三十はいるであろう。

 各々武器を持ち明らかに臨戦態勢だ。


「やはりシェリアナと内通している村人がいたか」


 隊長らしい、他のより少し豪華な鎧を着ているのが言葉を発した。

 どうやらアラルを村人の誰かと勘違いしているようだ。

 しかしこれは好都合。


「だったら何だ? 急いでるんだ、雑魚はどけよ」


「ざ・・雑魚・・だと? たかが村人風情がなめるな!! 殺せ!!」


 レイピアを即座に抜いたアラルは一気に距離を詰める。

 その動きに反応すら出来ていない。

 一撃目が、隊長らしき敵の喉を狂いなく突き刺す。


 突き刺したレイピアを抜くと同時。

 逆の手のレイピアの鍔で、切りかかってきた敵の剣を絡めとる。美  更に抜いたレイピアの柄頭で顎を殴りあげた。


 数の暴力で挑んでくる彼等。

 だが、巧みな挙動で彼らの動きを翻弄するアラル。

 そこにアラルの来た道から、シェリアナが現れた。


「アラル、お前の言葉を信じてみる事にする」


 シェリアナは手に持っていた剣で戦闘に介入してきた。

 アラルとシェリアナの二人は息の合った連携。

 瞬く間に、数の暴力を圧倒していく。

 戦いが終わった後、そこには三十以上の死体が出来上がっていた。


-----------------------------------------


 突然騒がしくなって聞こえてくる音や声。

 一階で何かが起きているようだ。

 確認しにいくべきか放置しておくか迷う。


「アキトさん、何かな?」


 少し不安そうな表情で俺の手を握るリラ。

 反対側の手は無表情なアムに握られた。

 二人に握られた手を優しく握り返した俺。

 この場から動かない事を選択した。


「俺達の事がばれてないと絶対に断言は出来ないからな。何が起きているかは気になるけど、俺達はここにいよう」


「わかった」


「ン!」


 しかし俺の考えは甘かったようだ。

 階下から聞こえてくる複数の足音。

 徐々に近づいてきている。

 そしてとうとう、俺達の借りている部屋の前で止まった。


 おそらく数は六人。

 ノックをする事もなく開かれた扉。

 相手は鬼小鬼(オーガゴブリン)一人と醜小鬼(アグリゴブリン)が五人。


「こいつらで間違いないんだな?」


「ハイ」


 鬼小鬼(オーガゴブリン)の質問に、醜小鬼(アグリゴブリン)の一人がそう答えた。


「何か俺達に用でも?」


「ふん? 説明する必要なぞない。捕まえろ。抵抗するなら男は殺して構わない。女二人はわかっているな」


 下卑た笑いの男の言葉に、首肯する醜小鬼(アグリゴブリン)達。

 リラに三人、アムに三人向かおうとする。


 俺はリラとアムを背後に匿おうとする。

 が、アムが一足早く俺の手を離す。

 拳で醜小鬼(アグリゴブリン)の一体を吹き飛ばした。


 予想外の出来事に驚いている奴ら。

 俺にとっても予想外だ。

 一瞬頭が真っ白になった。


「抵抗したなぁ!?」


 鬼小鬼(オーガゴブリン)が突進して来る。

 その手にもつ両刃の斧を振り下ろしてきた。

 梓を鞘から抜き一閃。

 斧そのものを斬り裂く。


黒縛鎖(ブラックチェーン)


 リラの唱えた魔法。

 三人の醜小鬼(アグリゴブリン)の足元から現れた黒い鎖。

 彼らを縛りつけ動きを封じる。


 俺の出る幕は特になかった。

 残り二人を叩きのめしたアム。

 隊長らしい鬼小鬼(オーガゴブリン)をも、拳で床にキスをさせていた。


「アムの強さやリラの機転にびっくりだな」


「こいつら敵。アキトに手出そうとした」


 アムさん、案外物騒な思考してらっしゃいます?


「汚したら宿屋の人に申し訳ないので」


 リラは良い心がけだな!!

 鎖に縛られた三人は締め上げられている。

 意識を刈り取られて沈んだのだろうな。

 部屋に置いとくのも何か嫌だ。

 なので廊下の隅っこに固めて寝かせておいた。


「何がどうなってるのかわからないけど、こうなった以上アラルを迎えにいくぞ」


 一階に下りていく俺達。

 数人の怪我人が、傷の手当てを受けている。

 そこで宿屋の主人に声をかけられた。


「兄さん達大丈夫だったか?」


「あ? はい、大丈夫です。ただ部屋を少し汚してしまいました。すいません」


「ん? 気にするな。あの糞野郎共は?」


「気絶させました」


「そうか。仲間を探しに良くんだろ?」


「はい、そのつもりです」


 主人と話している俺。

 リラとアムは怯える事も無くにっこりとしていた。

 アムはともかく、リラがにっこりしている理由はよくわからん。


「それなら奴らの始末は俺達にまかせろ」


「廊下の隅っこに寝かせてあります」


「わかったぜ」


 同じ小鬼(ゴブリン)だ。

 でも、さっきの奴らと違ってこの人は共感が持てるな。


「お嬢ちゃん達も連れてくつもりか?」


「えぇ、奴らを撃退したのはこの二人ですし」


「えっ!? あんたら何者だ?」


 もう姿を偽装している意味もないか。

 撃退してしまった以上、遅かれ早かれ駐留軍には狙われるだろう。

 予定外だが倒した方がてっとりばやいかもな。


「リラ、偽装の魔術を解除してくれ」


「え? いいの?」


 驚きの顔で俺を見上げるリラ。


「構わない」


 しばらくお互いの瞳を交差させていた。

 が納得してくれたようだ。


「わかった」


 彼女は腰にさしていた杖を抜いて握る。


解魔偽映像(スペルブレイクフェイクビジョン)


 杖が一瞬輝き、即座に俺達の姿が元に戻る。


「魔術だ?」


「それも単詠唱だぞ? すげぇ」


「瞳の色の違う銀髪? まさか竜族?」


「おい!? 黒髪に黒眼だぞ!?」


「黒き鬼の再来か!?」


 怪我を手当てしている宿屋の女性店員さん。

 逆に怪我を手当てされている男性。

 たまたまご飯を食べにきていたらしい方々。

 様々な人達の、いろいろな声が聞こえてくる。


「兄さんあんた??」


 宿屋の主人も例に漏れず、驚きの表情で俺を見ている。


「騙しててすいません。どうしてもこの姿だと目立ってしまうもので」


「そ・そうか? まぁ、そうだよな」


「それでは仲間を迎えに行って来ます」


「ちゅ・駐留軍がたぶんいると思うぜ?」


「もうこうなった以上は邪魔するなら叩き潰します」


「そ・そうか? ちゃんと戻ってこいよ」


「ええ。もちろん戻ってくるつもりです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ