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black ogre  作者: zephy1024
第一章 美小鬼王編
23/68

023.アンギム村での出会い②

 夕日が出てそうな時間に二人は戻って来た。

 四時間から五時間って所かな?

 とりあえず俺は、安堵の表情になっていると思う。


 二人を待っている間、俺とアムは小声で、いろんな話しをしていた。

 特に食べ物の話しが彼女には好評だったな。


 姿を変えているのはわかってはいる。

 それでもやっぱり違和感を拭えない。


 何か紙袋をリラが持っている。

 中身を手渡された俺とアム。

 それは赤い林檎だった。


「アププレっていうんだそうです」


「アププレ?」


 随分と名称違うな?

 そのまま一口齧ってみたが、味はまんま林檎だ。

 あぁ、そうか?

 英語が基本にあるのかもしれないな。

 だから塩もソルテか。


「おいしい」


 俺と同じように齧り付いたアム。

 しかし口が小さい為、一口で食べれる量は少ない。


「丸齧りかよ? まぁいいけどよ」


 若干苦笑気味のアラル。

 手に持ったナイフで林檎を切りわけている。

 気付けば何処で手に入れたのか?

 皿と人数分のフォークまで用意してあった。


 手馴れた様子でまな板なども使わず林檎を切るアラル。

 リラとアムは、興味津々に見ている。

 皿の真上で切っているのは、果汁が落ちる可能性を考慮しているのだろう。

 林檎を切り終わり四人で食べ始めてから聞いてみた。


「皿はどうしたんだ?」


「宿屋の姉ちゃんに林檎と交換で借りた」


 食べ物に釣られたんだね。

 宿屋の姉ちゃんそれでいいのか?


 そんなこんなでおやつ的な感じで、俺達は林檎をおいしく頂いた。

 ちなみにこの林檎は、リラが買いたいと言い出したらしい。

 アラルって何だかんだでリラに甘いのか?


「夕飯は下で食うぜ。二人だけずっと部屋に篭っているのも怪しいからな。もちろんリラの魔術で偽装はしてもらう」


 林檎が口の中なので俺は首肯するに留めた。

 リラとアムもまだ林檎が口の中なのだろう。

 首を縦に振っているだけだ。


「その後に俺は、シェリアナに会いにいくつもりだ。とりあえず何処に住んでるのかは確認出来たしな」


「そうか」


 止めたい気持ちもある。

 だけどアラルの決意は揺るがなさそうだ。

 ここは有事に備えて二人の護衛に徹するか。


「朝までに戻らないようなら、リラとアムネシアは頼んだぜ。暴れるならせめて二人が巻き込まれないようにしてくれよ」


「わかってる」


「まぁ、捕まらないように努力はするけどもな」


-----------------------------------------


 リラの魔術で姿を変えた俺達四人。

 宿屋の一階で夕食を食べた。

 アラルは食事を終えると、金貨袋を俺に渡す。


 予定通り、シェリアナに会いに宿屋を出て行った。

 アラルを見送った俺達三人。

 宿屋の部屋に戻って、ただ待つだけとなった。


 正直俺は、宿屋を取って一日留まるか、情報だけを集めて先に進むか迷った。

 一日留まれば、その分リリラに追いつくのは遅くなる。

 しかし、アムはともかくとして、リラはかなり疲労が溜まっているだろう。


 その事を口に出す事も、文句を言う事もなかった。

 だからこそ一日ここに留まり、休ませる意味も含めて宿屋を取る事を提案した。

 アラルの顔見知りがいるなんてのは、予定外の事ではあったけどな。


「アキトさん・・・アラルさん、無事に戻ってくれるよね?」


 心配そうな顔のリラ。

 そんな表情するなよ、俺だって心配なんだからさ。

 でも何か言って安心させないとな。


「心配でも信じる」


「心配なのは俺も同じさ。だがアムの言う通りだ。信じて待ってようぜ」


-----------------------------------------


 一人村の中を疾走するアラル。

 何処にいるかとどの時間にいるのかは彼は調査済みだ。

 移動中、特に誰かに咎められる事もなく、目的の場所へ到着した。


 そこは村のはずれの古びた宿舎のような建物。

 村人の話しでは、ここにいるのはシェリアナ一人だけらしい。

 それでも彼は念の為、正面からは入らずに裏手に回る。


 ほとんどの部屋は人がいないようだった。

 明かりらしきものは点けていないようだ。


 ただ一箇所だけ窓が僅かに開いている。

 そこから明かりが漏れている部屋があった。

 僅かに開いている窓に移動したアラルは躊躇する。

 カーテンがある為、部屋の中がどうなっているのかわからない。


「アラルなんでしょ?」


 部屋の中から聞こえてきた声。

 シェリアナの声に間違いなかった。

 やはりあの時に、気付かれていたようだ。

 アラルは警戒しながら、窓を静かに開けて中に飛び込んだ。


「アラル、久しぶりね」


 左の顔に傷のある女性。

 純白に染められた鎧を着て立っていた。

 その手には、彼女の愛剣が鞘から抜かれて握られている。


「久しぶりだな。何でこんな所にシェリアナがいるのかはわからないが」


 しばし見つめ合う二人。

 アラルは不本意ではあった。

 だが、いつでもレイピアを抜けるように構えている。


「魔術で偽装しているって事はお忍びって事なのね」


 剣を鞘に収めながら、シェリアナはそう呟いた。


「それもそうか。そうだよね」


「おいおい、シェリアナ!? 一人で呟いて一人で納得してんなよ? わけわからんねーよ!?」


 若干イライラしながら吼えるアラル。

 今までの真剣な表情から一転。

 寂しげな笑顔になるシェリアナ。


「あいかわらずの性格で嬉しいわ。そうね。一つ一つ話しましょうか。まず私がここにいる理由だけど。あなた方が去った後にドウラ国が攻めてきたわ。そして私達は負けた。シェリイナ共々囚われてね」


「お前が負けただと? シェリイナもいながら負けたっていうのか? それじゃ顔の傷はその時に出来たって事か?」


「そうよ。妹の命を盾に取られて自害も許されなかったわ。実際にドウラ国の捕虜になったのがどれ位の数なのかはわからない」


 悲しみと悔しさが言葉の端にもにじみ出ている。

 それ程に、彼女は悔しさの溢れる表情をしていた。


「それで?」


「私はバルルリ村攻略の第二陣の一人としてこの村に連れて来られた」


「何だと? それじゃこの村に駐留しているのが多いのはまさか?」


「そうよ。端から第一陣の全滅の可能性は考慮されてたのよ。そして今朝全滅の知らせが届いたわ」


「くそ、どっちにしてもここの奴らは潰さないと駄目ってことかよ!?」


「バルルリ村を守るならそうなるわね。勝てればだけど」


「負けはしねぇよ」


「負けない? あぁ、それともう一つリリラも昨日の夜ここに来たわ。何を考えてるのか自分の身分を明かしてね」


「何だと? 何考えてるんだくそっ!? リリラは今何処に?」


「今日の昼頃に馬車でドウラ国に連行されたわ」


「くそ、これじゃ追いつくとか所の話しじゃなくなってきてるじゃねぇか?」


「ところで負けはしないって本当に勝算があるわけ?」


「あぁ、本当はドウラ国に到着するまではやっかいな事は勘弁して欲しかったんだがな。それでバルルリ村に侵攻するのはいつだ?」


「明日この村を立つみたいね」


「くそっ、時間もねぇって事か」


「そうなるわ」


 苦々しい表情のアラル。

 予想外の事態の頻発に、歯噛みしている。


「馬車ならあるわよ」


「何だと?」


「私単独でドウラ国に向うつもりだったから」


「いや待て? どうゆう事だ? 今のお前の立場ならそんな簡単に準備出来るものじゃねぇだろ?」


「そうよ。でも駐留軍のやり方には村人も反感を持っているわ。このままいけばそう遠くない未来に村人も慰み者にされるでしょうしね。だから村人達は明日駐留軍が出立する時に背後から襲撃するつもりよ」


 何処か遠くを見るように、儚げな顔になるシェリアナ。


「ちょっと待て? そんな事して勝つつもりなのか?」


「負けるでしょうね。でもそれだけドウラ国に対して思う所があるって事なんでしょう。残念だけど私では止められないわ」


「おい、シェリアナ、駐留軍を全滅させる代わりに俺達も馬車に乗せろ」


「別にそんな事しなくても乗せてあげるわよ」


「そうか。だがどっちにせよ駐留軍を全滅させなきゃバルルリ村に向っちまうんだろ?」


「そうね。あなた達は四人のはず。そんな少人数で出来るとは思わないけど・・・いい事教えてあげる。ここにいる駐留軍は鬼小鬼(オーガゴブリン)に支配されているわ。彼等さえ倒せれば駐留軍は降伏すると思うわよ」


「そうかわかった」


「駐留軍の指揮官はワンドル・ドウナ。サウザンの弟よ」


「情報ありがとよ。終わったらまた来るからな、今度は正面から堂々とな」


 アラルはシェリアナが止めるのも聞かない。

 窓から体を投げ出し、外に出る。

 状況をアキト達に伝える為に、彼は走り出した。

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