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black ogre  作者: zephy1024
第一章 美小鬼王編
19/68

019.アムネシア

「おし、これ位距離があれば大丈夫だろ。銀髪のお嬢ちゃん、悪いけど少し目を瞑って耳を塞いでくれるかな?」


「ハイ」


「素直でよろしい。それじゃいくか」


 俺は一気に魔力を集束させる。

 収束し、高密度のエネルギーに変化していく魔力。

 そして俺は、奴らを倒す為に唱えた。


灼熱爆発(フレアバースト)


 あらゆるものを飲み込む爆発が、竜達を巻き込み暴発してゆく。

 それに伴い俺達を叩きつける風圧。

 彼女に怪我でもされちゃ困る。

 なので、俺は詠唱と同時に体を百八十度回転させていた。


 それだけでは些か不安だ。

 念の為、彼女の体を覆うように黒い粒子の力を展開させている。

 だが魔力の消耗が激しく飛んでいるのも辛い。

 とうとう俺は着地し膝を折り曲げた。


「ダイジョブですか?」


 心配そうに俺の顔を覗いてきた少女。

 安心させるように俺は笑顔で微笑んだ。


「大丈夫。ちょっと魔力を消耗し過ぎただけだから」


「ソウですか」


 爆風が過ぎ去った後、振り向いた俺は、自分でやった事ながら絶句した。

 巨大なクレーターが出来ており、竜達の欠片どころか痕跡すらなさそうだ。

 警戒しながら近付き、クレーターに足を踏み入れようとした。

 しかし、熱気が凄く、熱いなんてものじゃない。

 こりゃしばらくは、踏み入る事すら出来なさそうだ。


型式解除(ディサーム)


「ふぅ」


「アノなにが?」


「ん? あぁ俺もよくわからないかな」


「ソウですか」


 手近な岩場に彼女をおろして俺はその場に座る。


「悪いが少し休ませてくれ。後これを上から羽織ってくれないかな?」


 俺は自分の上着を脱いで彼女に羽織らせる。

 お年頃の少女がそんな半透明な服で出歩くのはちょっとね。


「ハイ、ワカリました」


 所々棒読みに聞こえるのは何だろう?

 まぁ俺は中に黒いシャツ着てるし問題ないだろ。


「ハオルってどうすればいいんですか?」


 えっ?

 なんだと?

 驚愕している場合じゃないや。


「両腕伸ばしてくれるかな?」


「ハイ」


 俺は彼女に服を着せて上げる。

 うん、竜退治した後に、何してんだろ俺?

 半透明なブラウスとスカートの上から着せてあげる俺。

 その間、彼女は何故か嬉しそうな表情だった。


 良く見ると彼女はオッドアイだ。

 左の瞳が銀で右の瞳が金。

 髪の毛も銀髪だが、カールしている内側の部分だけ金髪になっている。

 ちょっとおしゃれだな。


「とりあえず仲間の所に戻るけどいいか?」


「ハイ」


 彼女は右手で俺の服の裾を掴み、左手で俺の左手を握ってきた。

 振り解くのも可哀想なのでそのまま歩く。

 リラとアラルがいるはずの場所へ、俺達は向かった。


「アンデッド化してる最中の土竜(アースドラゴン)の群れの中に君は倒れていたんだけど。なんでそんな所にいたのかわかる?」


「ン・・ワカラない」


 少し思案したような表情をした後、彼女はそう答えた。


「そうか。それじゃ両親とかの記憶はある?」


「リョウシン? キオク? オボエてるのは水の中にイタ。プカプカしてた。たまに何か髪長い紫のヒトにハナシかけられた」


「水の中? プカプカ? 浮いてたって事かな?」


「たぶんソウ」


 話しが断片的過ぎてよくわからないが、髪の長い紫の人が親か?

 見た限りは普通の人間にしか見えないけど。

 あぁ、そう言えばまだ名前聞いてないな。


「俺はアキト」


「アキト?」


「そうだよ。ところで君の名前は?」


「ナマエ・・・? ナマエ?」


 言葉が微妙に通じてないのか?

 いやそれにしては反応はしてるしな。

 この娘何なんだろう?


「紫の髪の人に何て呼ばれてた?」


「ン? ヨバれてた? ナマエ」


 思案して考える仕草になった少女。

 しばらくしてから彼女は答えた。


「アムネシア。たぶんアムネシア」


「たぶん?」


「髪紫のヒトにソウ呼ばれてたキガシタ」


「そっか。アムネシアか」


 言葉の意味を知っててつけたんだろうか?

 それとも深い意味なんてないのだろうか?

 この後どうするにせよ、アムネシアの情報が無い事にははじまらない。

 リラとアラルを探して見つけるまでいろいろな質問をしてみた。

 それでも結局わかったのは、名前がアムネシアらしいという事だけだ。


「やっと見つけた」


「あ・アキドざぁぁん? ぶじだっだ。よがっだぶじだっだぁぁ」


 俺を見つけると、涙腺が崩壊したように泣きながら抱きついてきたリラ。

 アラルも俺を見た途端安堵の表情になったみたいだ。


「あの娘は無事助けれたようだな? しかし竜達といいあの爆発といい、何が起きたんだよ?」


「あぁ、竜達に追いかけられたから魔術で撃退した」


 意味の理解出来ない事を呟きながら、俺に抱きついて泣き続けるリラ。

 彼女の頭を、空いている手でなでなでしながら説明した。

 その間、アムネシアは無表情のままリラを見ている。


「はぁぁぁ? 撃退しただと? あれお前の仕業なのかよ?」


 びっくり仰天、漫画とかなら目でも飛び出しそうだな。

 それ程驚愕した表情のアラル。


「あ、あぁ」


 その驚きに俺の方がびっくりするわ。


「ただ威力が強すぎるのと、威力の調整が効かないから、あんまり使いたくはないんだけどな」


「クレーター拵えてしまうぐらいだしな。そりゃそうか」


「それに制御にすんげー集中力いるし、威力制御出来ないから味方も巻き込みかねない。こんな場所じゃなきゃ使えないさ。巻き込んだ動植物がいたら申し訳ないけどな」


「心配した俺らが馬鹿みたいだ・・」


 呆然と額に手を当てて項垂れるアラル。


「あ・アギドさんだずげたこのごはどうずるの?」


「あぁ、彼女はアムネシア。アムネシア」


「ハイ」


「泣いてるのがリラ」


「な・・ないでなんがいばいぼん」


「あーはいはい。よしよし。んでそっちがアラル」


 俺はリラを慰めながらアラルも紹介した。


「リラとアラル」


「嬢ちゃんよろしくな」


「ジョウチャン?」


 アラルの言葉に、何を言われてるのか理解出来てないようなアムネシア。


「アムネシアの事だよ」


「ン!」


「それでだ、話しをいろいろ聞いてみたんだが、アムネシアって名前以外は今の所わからないんだわ」


「なんだそりゃ?」


 今日のアラルは忙しいな。

 今度はアムネシアを訝しげな眼差しで見てるや。


「リラ、彼女に服貸してやってくれないか? それと一人じゃ着れないかもしれないから手伝ってやってくれ」


「わがった」


 大分涙が止まり始めたリラ。

 アムネシアの手を引いて俺達から離れていく。

 俺もアラルも、万が一の為視線は二人を追っている。


「詳しい話しは明日だな。寝床作らなきゃだし」


「そうだな」


 リラはアムネシアを連れて木陰に隠れている。

 着替えをさせているのだろう。

 リリラ用に布製の寝袋を多く持ってきていたのが幸いした。

 寝心地がいいとは言えないだろう。

 だけど、無いのとあるのとでは暖かさは違うだろうし。


「わぁ!?」


 突然のリラの驚きの声。


「どうしたリラ?」


 思わず木陰に確認しに行った俺だったが・・・。

 アムネシアの一糸纏わぬ姿。

 控えめな体つきの女の子である。


「アキトさんのエッチ!? 何見てるんですか?」


 リラの本気の怒りの篭った声と顔。

 無表情のようで、かすかに笑みを浮かべて俺を見ているアムネシア。

 フリーズした俺はその光景をまじまじと脳裏に焼き付ける事となった。


「いつまで見てるんですか!?」


暗黒霧(ダークミスト)


 リラのお怒りを受けて、俺の視界を埋め尽くす黒い霧の闇。

 視界どころか音も何も聞こえないじゃないか?

 突然の出来事にどうしたものか手で霧を掻き分けようとする。

 だけど、視界が回復する兆しも見えない。

 そんなこんなで一人じたばたしていると、突如視界が元に戻った。


 音が一切聞こえなかったので何を話していたのかはわからない。

 そこには呆れ顔のアラルと、無表情のアムネシア。

 怒りに顔を真っ赤にしたリラ、三者三様の顔が見えた。


「あ? えっとリラさん? お怒りですか?」


「もちろんです。プンプンです!! 女の子の着替えを覗くなんて信じられません!!」


「アキトもやっぱ一人の雄って事だよな。少女趣味の毛があるみたいだが」


 一人納得したような表情のアラル。

 いや何勝手に納得してんのさ?


「アキト、私の裸スキ?」


「いやちょっとまてお前らそれは誤解・・」


 この状況で何言っても無駄なような気がしてきた。

 待てでもさっきのは不可抗力だ。


「いやほら、リラの叫び声っぽいのが聞こえたからさ」


「言い訳は聞きません。アムの裸を見て嬉しそうだったのは事実ですもん。そんなに私の体よりアムのって何考えてるの私」


 後半はぼそぼそ過ぎて何言ってるかわからんかった。

 けど、何でそこで怒りの顔から羞恥の顔になっているのか?

 さっぱりわからないよ、リラさん。

 とりあえず俺が悪いみたいなので正座してみた。


「ともかく、故意もで故意じゃなくても覗き見たのは変わりません」


 びしっと俺を指差したリラ。

 怒ってるんだか?

 恥ずかしがってるのか?

 よくわからん顔。


「今度やったら許しませんからね!!」


 正座する俺の前に立ったリラ。

 額の前に添えられる手。

 何をするのだろうかと疑問に思っている俺。

 一発額にデコピンされた。


 いやリラさん、なんでデコピンなんて知ってるんですか?

 それとも万国共通ならぬ異世界共通の知識なんですかね?


 全く痛くないのに罰になってなくね?

 そう思いつつも言葉には出さない。

 いくら俺でも今回は空気読めたぞ!

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