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初めて挑戦するジャンルです。見苦しいほどに拙い点が露呈するとは思いますが、温かく見守ってくださると幸いです。

 ネロは眠りを知らない少年でした。



 

 ネロはこの世に産声をあげてからというもの、一度として眠りにつこうとはしなかったのです。

 幼い頃は、夜泣きの止まないネロをあやすのに、母親は随分心労したそうでした。


 そんなネロも6つになりました。12時を知らせる時計の針が、ネロの6歳の誕生日を祝ったとき、ネロは声をあげて町を駆け回りました。


 オルセーおじさんの家に飛び込んだネロは、家の戸をどんどん叩きます。


「ハッピーバースデー!!!!」

「……誰の誕生日だって?」

 眠気まなこを擦りながら、オルセーおじさんは聞き返します。

「ぼくだよ!! ネロの6つの誕生日さ!!」

「ああ……そうかい、おめでとうネロ」

「パーティーを始めよう!! オルセーおじさん!」

「ああ……ネロ、悪いけど、10時間ほど寝かせてからにしておくれ。眠たくて仕方がない……」

 そう言って、オルセーおじさんは扉をばたんと閉めてしまいました。



「ペチュニアおばさん! パーティーを始めよう!!」

 次にネロは、坂を降りてペチュニアおばさんの家にやってきました。

「ねえ!! ペチュニアおばさんったら!!」

「うるさいね!! 何時だと思ってるんだい!?」

 ネロは飛び上がって驚きました。上の窓から、寝巻き姿のペチュニアおばさんが叫んでいたのです。

「おばさん!! でも、今日はぼくの誕生日で……」

「おばさんはねえ!! 今日は畑仕事で疲れてるんだよ!! こんな夜中にパーティーだって!? まっぴらごめんだよ!!」

 ばたん! 寝室の窓も乱暴に閉められてしまいました。ネロはぽかんと口を開けて、しばらくぼーっとしていました……。

 


 そう。ネロにはどうしてもわからなかったのです。普段優しいおじさんやおばさん、そしてお母さんまでもが、どうして夜になるとあんなに怒りっぽくなるのかと。

 眠る、というのは、そんなに大切なことなのかな。横になって目を瞑って、何時間も何十時間もぼーっとしてる。そんなこと、何が楽しいというんだろう?



 そう思ったことを、ネロは次に町長さんの家で話しました。町長さんは町のことに詳しいからです。

「眠っているときに仕事をすれば、みんな昼間に遊べるじゃない。ねえ、そうでしょう?」

「ああそうだねネロや……。なあ、ネロ。もう寝てもいいかな」


 眠りを知らないネロには、一生かかってもそんなみんなの気持ちを分かることはないのでしょう。





 玄関まで見送られて、肩を落しているネロに、町長さんは声をかけました。


「ネロや。レムという女の子を知っているかい?」

「レム?」


 くるりとネロは振り返ると、不思議そうな顔をします。


「レムはね、向いの屋敷に住んでいる女の子だ」

「お屋敷って、あの幽霊屋敷?」

 ぶるり。思い出してネロは軽く震えました。友達がよくウワサしていた。幽霊の出るお屋敷。絶対に入っちゃいけないお屋敷。不安そうなネロを見て、町長は笑います。

「はは。ネロ、あれは幽霊屋敷なんかじゃないよ。人も住んでいる」

「ウソだよ町長さん! あそこには誰もいないんだよ!」

「子どもたちがそう思うのも無理はないね。レムはね、お屋敷から出たことはないんだから」

「どういうこと?」


 ふわあ……。町長は扉を閉めながら、大きなあくびをしました。


「レムはね。産まれてこの方、眠りから目覚めた事がないんだよ。レムの前ならいくら騒いでも大丈夫だから、一緒に遊んでおやり。じゃ……おやすみ、ネロ」

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