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プロの仕事。

「初めてのご利用ですね。よろしければわたくしがお持ちいたしますが、いかがいたしましょうか?」


便底メガネの先に知的な光が輝き、白髪が少しまじった灰色の髪を綺麗になでつけ、お前は執事かというようなパリッとしたシャツを着こなした職人はのたまった。


「お願いします。」まるでお嬢様のように広いテーブルへ案内され、エスコートされ座らされる。黒いテーブルと椅子は綺麗に磨かれていた。


図書館、なんですけどね。


「では、何がご入用で?」


「この国の近代史、政治経済、地図、世界史、食物、文化、あと雑学も少し。いずれもできる限り簡易なものから。そこから先は自分で探します。」


「かしこまりました。少々お待ちください。」そう言ってまるで幽霊のようにすっと消えていく。端に、天井まであるだろう本棚と本棚の間に消えたのだろうが。



図書館はどうみても「図書室」という「室」の範囲を超えていて、一つの県の図書館くらいは蔵書があるのではないかー少なくともここから見える範囲で。


毎週増加する書籍をどうやって保管しているのかと聞くと、ある一定以上の年数になった書籍は書庫へ移動し、中身は『魔石』に保存され、『魔石』だけがこの図書室に置かれるのだそう。

つまり、データへ移行して媒体だけがあるという状態。


「それから、『術師』に関する本を。」後丁寧に、司書のナイスミドルは3段階くらいの差をつけた難易度の本を各種私の目の前に積んだ。


一度ぱらりと見て、その内容の十分すぎることに目を見張る。そして何よりこの検索と運搬に、たった5分しかかかっていないことが、このナイスミドルな司書の仕事人加減を示している。



職人が、職人がいますよ!ここに!!


ただ、5分でどうやってあれだけの本ー目の前には20冊ほどーを運んだのかは不明である。恐るべし、職人。


昼食後で少し眠いがそうも言っていられない。時間は限られているのだから。


「読み終えたものはこちらへ置きます。」言外に暇なら仕舞っておいてね、と心で言う。


私は一度伸びをしてから、目の前の山を攻略し始めた。





「はい、次。」


「こちらをどうぞ。」


「あれ、この内容どこかにありましたよ?」


「申し訳ございません、そちらの資料はこちらと重複している部分がございます。」


「ああそうなの、じゃあここは飛ばします。」



どさり、と読み終えた本を積んで行く。


ひとまずあれから大体あらかた簡易の書籍は読み終えた。ネットサーフィンで培った速読力は馬鹿にならない。私の場合、文字を画像として認識し、一瞬で記憶することができる。ただ、年齢と共に随分衰えてきたものだけど。主に、記憶する部分が。


悲しいかな、歳には勝てません。



別に一字一句覚える必要はないので概要が頭に入れば良いのである。


ちなみに、職人さんはプロ魂を触発されたのか、つきっきりで付き合ってくれている。


「何をお探しでしょう。」


「そうだねぇ、『黒の術師』に関する書籍は?」怒涛のごとく読み込んでいたので、もうお茶の時間は過ぎた。気になる書籍があるとすればそれである。


「申し訳ございません。『黒』に関する書籍は禁本扱いでして、王家の管理となっております。」


「・・・・・あっそう。1冊も流通していないわけ?」


「はい。」


そ知らぬ顔をしてはいるが、『術師』関連の本で色々調べてみたのだが、なんとなく、それなりにあたりさわりのないような雰囲気で『黒』が漂ってるわりに、明確な記述がほとんど無いのがおかしいと思ったので、聞いてみてよかった。



『術師』それは、次の区分に分けられる。


一般術師・・・日常に差し障りない程度に術を使う人間のこと。

特定術師・・・特定の術に関して専門的に研究または使用している人間のこと。

専属術師・・・術師を生業として、雇われている人間のこと。

宮廷術師・・・宮廷に仕える術師の集団のこと。


主に、こんな感じ。


どうやらこの世界には精霊が存在するらしく、その四大の属性を使える人間が『術師』に成り得るそうだ。もちろん、力の大小はあるし、『術師』で仕事になるレベルというのは、医療で貢献できるレベルー白の術師ー、戦いにおける戦力となるー紅の術師ーなどなど様々。呼び名は一般的ではないが、総称として使われたりもするらしい。


四大というのは、よくある「地・水・火・風」の四大精霊のこと。大抵が人の目や髪の色にその属性が現れ、それにより使用できる属性が限られるそうだ。

最も、目と髪の色が2種類だけでも、中には3種類以上の属性を使える人間もいるらしい。


そこはアバウトだが、基本的には2種までが普通。特に術師たる力がなくとも日常的には問題のない文化のようで、逆に、術師であることは命をかけるリスクが高いため就職活動では推奨されていないらしい。


とりあえず、魔法のようなものが使えるー精霊の力が使えるーというのがファンタジー決定版というべきだろうか?


では魔法はあるのかというと、精霊の力に寄らない術もあるらしい。それは人間の体内にある魔力に左右されるため、魔法使いと呼べる人間は半世紀に数えるほどしか居ないようだ。現在確認できているのは、全世界で8人。


ちなみに、四大精霊のほかの属性もあるらしいが、基本的には四大が人間に一番近いところに存在するそうだ。


では、黒は一体なんだろう。


安直に考えると『闇』かなとは思う。けれど『闇』属性で病を治すとはなんとも奇妙な感じがするのは私だけだろうか?



しばらくそんな感じで考えていると、目の前に一冊の本が差し出された。




タイトルは、『黒の総本』・・・まんまですね。


本から顔を上げ持ち主を見た瞬間、目が固定された。




「必要だろうから持ってきた。」



そこには、きらきら輝く王子様がいらっしゃいました。

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