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LESSON1 吸収

『ようこそ!


鳥でもできる黒の術入門へ。


まずは周りを見回してみましょう。』



・・・・・1P目にそんな台詞が浮き上がってきました。もちろん、紙は黒なので、文字は白です。目に悪い。




わけがわからない。


周りを見回すって言っても・・・・・。


見回すって言っても・・・・。



見回・・・?



どうしよう。



壁の先の先の先のずううううううっと先の部屋に、黒いものが見えます。



「黒の・・・図形?」黒いものを見ようとすると、壁がその瞬間だけ透過して、黒いものにピントが合った瞬間、この部屋に視界が戻される。


「気持ち悪っ・・」急激に視界が遠近したのでとっさについていけなくなる。


『黒の総本』を落とさないように開き、黒い図形に向かってー壁に向かってー立つ。



『黒の術の基本は、吸収と開放。


これは、対象者を死に至らしめる陣型です。』


そして次のページに先に見えた黒い図形がそのまま描かれる。


よく見ると、サークルが描かれた中にいくつかの文字と図形がちりばめられている。


「魔法陣みたいなもの・・・?」


『世界の全ては呪われ


黒は呪う 全てを呪う』


呪いって。怖いんだけど。


「ひとまず、近づいてみるか。」私は本を持ちながら部屋を出た。


『魔法は魔法により

精霊は精霊により


呪いは黒にのみ開放される』


「よくわからないから。もう少しくだけた言い方だと?」途中で一度止まってまた黒の図形の方角を確かめる。


『今度の子はあまり賢くないようだ。


黒は呪いをかけることも解くこともできる。


それが正か負かというのは些細なことでしかない。


黒の術師はどうしたい?』


「呪い!?っていうか、どさくさにまぎれて賢くないとか言うな!本の分際で。」・・・・まさか、とは思います。だんだん近づいてくる廊下を、私は覚えている。



セラフィナの部屋だ。



部屋の前まで来ると、ますます黒い図形が大きく表示されている。何もない空間に、だ。


「一番嫌なのは、呪いだとわかっていてもこの図形に何にも感じないし気持ち悪くもならない私の状態。」


『黒は呪う すべてを吸収開放する。


故に 黒を厭うことはない。』


本は語る。


「で?これがもしかして原因不明な病の原因?」嫌なものを見てしまった。


別に嫌ではないんだけど。何も感じないのだ。心象としては、あんな別嬪な彼女に呪いをかけた奴をどうにかしてやりたくはあるが。


『左様。


さて、どうする?


開放か、吸収か。』


「ちなみに、開放って何。」2P目を開くと、そこにいくつかの手段が出てきた。


『開放ー呪いを解き、呪った相手に返す。


相手が死に至る場合も有り。


吸収ー呪いを吸収する。』


「うわ、微妙。開放しても死人が出て、吸収したら自分が呪いを吸収するってこと?他の手段は無いわけ!?」


『現在の黒の術師のレベルでは不可能。


総本は閲覧可能なページのみ使用可能。』


「何じゃそらーーーーー!!!!」



思わず、叫んでしまった。


ぱらぱらとめくると、確かに、いくつかの図形や文字が見える。見えるが、ほとんどは真っ黒な紙面のままだ。


つまり、何か。


私のレベルが足りないから、初歩の術しか使えないよん、てことではないだろうか。


「最悪。全然万能じゃない・・・。」


『黒はすべてを呪う 故に


術者は己を知る必要がある。』


「最もらしいこと言っても、他に手段が無いんでしょ。じゃ、吸収で。」なんだかどっと疲れたのは私の気のせいではないはずだ。


『それでは次のPを開いてみましょう。』


「こんな時だけ上から目線・・・!」そうこうしているうちに、目の前の扉が開いた。





「『黒の術師』!」


え?


使用人女性が、私をにらみつけた。



『媒体』


「ええぇぇえええ!?」突進してきた女性を避けて部屋の中へ転がりこむ。本は抱えたまま。


顔を上げて立ち上がると女性が何かを取り出した。


って、刃物!?


刃物だ!!


ナイフを両手で引いて、ああ今にも助走つけて走ってきそうですよ。



私にね。




「エル・ブリッド!!」鋭い声が上がる。


瞬間、使用人のナイフごと手が凍る。


「あ、あ”あ”あ”・・・・!!!」彼女が悲鳴を上げる。それでも彼女は私に向かって足を進める。


私は彼女に背を向けた。


セラフィナのベットの上に鎮座ましまししている黒い図形ー呪いを睨みつける。



「我は黒。黒を統べる者。正しき色の継承者にして唯一の契約者成り、我が名は杉崎璃桜、我が命を許諾せよ。『吸収』!!」長い長い。もう舌噛むかと思ったわ!


読みながら本の文字をなぞる。


白い文字が黒く変わる。


浮いていた図形は、一瞬震えたと思うと、吸い込まれるように本の中に吸収された。


「!」


私に吸収されるわけじゃないのか。ほっとした。


その瞬間、後ろでどっという音がする。


振り返ると使用人が倒れていた。



そして、扉の向こうに目を見開くウリセスと、にやにや笑う『宮廷術師』。




私はそのまま、ふらりと意識が傾くのを感じ、本を握り締めた。



視界にまたウリセスが入ったが、それももうわからない。



杉崎璃桜、本日二度目の気絶。・・・ちょっと、勘弁してください。

精霊系呪文はわりと普通にしてみました。

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