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良薬は口に苦し・・たぶん。

ごくり。


喉が嚥下したのはわかりました。


でも、目の前が真っ暗です。



「リオ!」ウリセスの焦った声が聞こえたような気がした。





異世界四日目、杉崎璃桜すぎさきりおう


毛生え薬で気絶。






「シュベール!」ウリセスは朝からご機嫌な『宮廷術師』に食ってかかる。


「別に死ぬわけじゃない。30分もすれば効果が出る。そうすりゃ、ホンモノかニセモノかはっきりする。・・・随分、肩入れしているな。」シュベールと呼ばれた『宮廷術師』はふん、と鼻で笑うと床に転がったガラスの瓶を拾う。


ウリセスは床に倒れたリオを抱き上げ、シュベールを一度見ると、


「別に、そういうわけではない。」そう呟いて部屋を出た。




リオに当てている部屋へ行き、ウリセスはリオをベットへ降ろす。軽い身体だった。


そっと撫でた髪はまだ栗色をしていた。


「リオ・・・」


そこでノックがして、ヨアキムが入ってくる。


「旦那様・・・これを。」ヨアキムは『黒の総本』をウリセスへ渡す。


「・・・・。ヨアキム、お前はどう見る?」ウリセスは本をベットサイドへ置き、長年仕えてきた男に向き合う。


「リオ様が『黒の術師』であるかどうかですか?」


「リオが来てから、いやに精霊たちが騒ぐ。」ウリセスは庭を思い出していた。この屋敷のほとんどすべてに精霊は存在する。特に庭は彼らの楽園だ。その彼らが、一歩リオが庭の敷地に踏み込んだ瞬間から、歓喜の声を上げていた。それも一斉に。リオは気づいていないようだったが。


「リオ様がお読みになった書籍は多岐に渡ります。婦女子が嗜むにしては少々・・・」ヨアキムはリオの取り付かれたように知識を入れる様を見てきた。我が主が連れてきた少女は少々風変わりだ。


年頃の女性が好むロマンスを一切読まず、歴史、政治、経済、文化まるで湯水のごとく知識を吸収していく様は、見ていて気持ちが良かった。


しかし、少々気になることもある。


彼女には、当然のごとく知っているべき知識が、欠けていた。そのたび、ヨアキムに質問し、自問自答し、納得していた。それは、ごく些細なことではあったが、リオという人物を語る際にはとても重要で見落としてはならないポイントのようにも思えた。


「そのようだ。殿下もそうおっしゃった。」嵐のごとく過ぎ去っていった王太子は、あの一瞬でリオの呼んでいた書籍類のタイトルを覚え、


『不思議な女だ』とこぼしていた。


何を探しているのか、調べているのかはわからないが、少なくとも、リオに関しては通常の婦女子とは異なるのだとウリセスにもわかった。


ウリセスの話しを聞いた後にも特に態度が変わらなかった。


「リオ・・・君は一体・・・いや、いずれわかるか。」ウリセスはもう一度リオの髪を掬うと、祈るように一度口付けた。






自分がどこにいるかわからなかった。

けれど、一瞬後にここは違うとわかる。



「残念だ。」私は呟いた。



見慣れない天井が、確かに現実だとわかると、ベットに起き上がる。



「・・・・あんの、変態宮廷術師め・・・!毛生え薬で昏倒するって、どういう了見だ。」きりきり吐かせないことには気が済まない。


ようやくプチストレスが終わると思ったら、この世のものとも思えない不味さと衝撃を味わうことになるとは、誰が想像しただろうか。


誰かがー多分ウリセスだろう。部屋まで連れてきてくれたのだろう。ベットから降りて、バックを漁る。


手鏡を出して生え際をうつす。




「・・・・生えてる・・・」


およそ、3センチほど黒い髪が生えてきていた。


何て中途半端な。いっそ魔法で一気に黒くなるとかは無いのだろうか。経費か。経費の関係なのか・・!?


でもまぁこれで、嘘をついていないことは証明できる。




ぞくり。



視線を感じて振り返ると、誰も居ない。


でも確かにベットの近くから何かが私を見ていた。


そう、何かが。



「・・・・・お前か。」『黒の総本』何故ここに。


ヨアキム、持ち出し厳禁じゃなかったの?


そっと指先で触れるとほのかに暖かい気がする。


「気持ち悪い・・・」表紙を開く。




『ようこそ!


鳥でもできる黒の術入門へ。


まずは周りを見回してみましょう。』




私が鳥頭だって言いたいわけ?

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