第1話
風が吹いている。
雨が降り続いている。
社会。羞恥。宗教。人種。孤独。
「叫べ」
「幸せ?」
結依は突然、僕に聞いてきた。
「結衣といるだけで幸せだよ。」
「そうじゃなくて。幸せ?」
「何を聞きたいの?」
「別に。」
「何だよ。それ?」
「ただ、毅を試しただけで、深い意味はないのよ。怒った?」
「こんな事で怒ってたら、世界に怒れないよ。」
結衣は笑った。
「私は最近、幸せなのか、ただ疑問に思うのよ。」
「何かあったの?」
「いいえ。ただそう思うだけよ」
僕は少しだけ不安になった。
結衣は話を続けた。
「この世界には数えきれないくらいの人が存在していて、同じ時を共にしている。でも、私たちが生活しているのは、世界から見たら、点に過ぎないのよ。もしかしたら点にもみたないかもしれないのよ。あまりにも寂しいじゃない?」
結衣は毅に訴え続けた。
「この閉塞感がある世の中で、人間同士の関わりみたいのって、限りなく少なくなっているように感じない?私は、実際には、引きこもってなくても、心のひきこもりを感じてしまって仕方がないのよ。」
「心のひきこもり?」
「ネットだけでつながっているだけで、本当の人間同士の繋がりみたいなのが薄くなっているように感じるのよ。」
「それを言って、結衣はどうしたいわけ」
「政府にでも訴えるわけ」
「いや。そんな大げさなものでもないのよ。でも、最終的な目標は、世界に革命を起こすことよ。」
「十分、大げさな事を言ってるじゃない?」
二人して笑った。
「世界を動かす為に、私達は、その手伝いをしようと思うの。」
「実際に、どうするの。」
「一度、帰ってお互いに考えてみましょう。これは、世界を動かす大プロジェクトなのよ。」
毅は、同意した。