壱 ~騒音~
副会長「すみません。あの、塾が・・・」
有也「嘘だろ!書記も1年も帰って、お前しか頼れないんだぞ!」
副会長「ですが、テストもあって・・・」
有也「仕方ないな、明日は早めに来いよ。」
副会長「ありがとうございます!」
有也「今日中に終わるかな・・・」
静かな校舎。
人影も無い。
って、あたりまえだ。
今は夜の8時。
誰かいたらそのほうが問題だ。
俺はこの桜魔法学園の生徒会長。高野有也。
つい最近、高3になった。
この時間まで学校に残っていたのは、
明日の入学式の準備をしていたからだ。
2年のやつらは塾があるらしいから、早めに帰らせた。
副会長と3年書記は・・・塾だったな。
まったく、役に立たない奴らだ。
結局、俺一人で準備をした結果この時間だ。
あ、戸締りの点検をしてなかったな。
一年の校舎の廊下を歩く。
おい、1-Aだけ電気がついてるぞ。
消し忘れか?まったく、いいかげんにしろよ!
ドアを開ける。
ふわ・・・
風が俺の頬を撫でた。
窓が開いてる。
ここは一階。窓からなら中に入れるよな。
嫌な予感がする。もしかして不審者・・・
「ねえ。」
肩に手を置かれた。
「とりゃ!!」
反射的にその手を掴み・・・簡単に言えば「背負い投げ」をした。
「痛ぁ~何するんすか。」
黒髪の少年だった。俺より背が少し低いから年下だろう。
「何だ、子供か。」
「子供じゃないっすよー明日、この学園に入学するんすよー」
そいつの服は全身黒の服だった。その横には大きな鞄があった。
「じゃあ何でこんな時間にいるんだ。」
「えっと・・・妖精さんに誘われて・・・」
こいつ、バカだろ。
「とりあえず保護者に連絡する。名前は?」
「本条鴉。」
「本名は?」
「いや、本名ですって!カラスって名前なの!!」
「そんな名前の人間がいるか。」
「本当ですよ調べたら分りますよ!」
顔を覗き込む。嘘はついてないようだ。
「とりあえず家に帰れ。親が心配するぞ。」
鴉は急にうつむいた。
「親がいないんすよ。昔、捨てられたから。」
「・・・家は?」
「里親のとこに居たんすけど、高校受かったら出ていけって言われて。」
「じゃあ、何処に住んでるんだ。」
「漫画喫茶に居たんすけど、制服とか買ったら金が底をついて・・・」
鴉が捨て犬のような目で俺を見る。
「明日からは寮に泊まるけど、今日は公園にしか・・・」
「・・・仕方ないな。俺の家に泊まるか?」
そういった瞬間、鴉の目が輝いた。
「わーい!先輩大好き!!」
俺はこの選択を一生後悔するとは思ってもいなかった。
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「高野君。」
副会長が俺に話しかけてきた。
今は朝の7時。
入学式のセリフの練習をしている。
「なんだ。」
「あの・・・」
おどおどしている。何かミスがあったのか?
「噂で聞いたんですが・・・」
「なんだ。はっきり話せ。」
「男の人を家に連れ込んだって、本当ですか?」
沈黙が続く。
周りを見ると、全員俺の方を見ている。
「あの、学園中の噂になっていて・・・」
噂の元は見当がつく。どうせ、新聞部だ。
「とにかく、そんな噂は嘘だ。大体なんで男の俺が男を連れ込むんだ。」
副会長の目が泳ぐ。
「あの、2年ぐらい前から高野君は男色という噂が・・・」
「・・・お前。その噂信じてたのか?」
「えっと、その・・・はい。」
周りを見る。みんな下を向いている。
衝撃的な事実を知り、俺は泣きそうになっていた。
みんな、俺をそんな風に見ていたなんて・・・
そして、入学式が始まって、気がつけば『生徒会の挨拶』だった。
ステージに上がる足が重い。
そして、視線が痛い。
「新入生のみなさん。おはようございます。」
視線が針のように刺さる。早くステージから降りたい。
「この学園のルールを守って、楽しい学園生活を過ごしてください。終わります。」
1/6ぐらいの長さで無理やり終えた。
ステージから降りる。視線が突き刺さる。
姿を消す魔法でも、勉強しよう。
つづく
ここまで見てくださってありがとうございます!!
恋愛中心になりそうだな・・・
次回も見てください!