4月
初登校日。幸い、前からの部活友達の杉田里奈。通称すぎやんといっしょに登校できた。
かつらの木と十字架とダサい制服…やっと帰って来れた。
この3つを見て私はこの世で幸せな人BEST100以内に入ってるなと感じた。
クラスを確認して私の新天地である教室に入る。一歩入った瞬間
「あっ、始まったんだ」と思った。確実に時計の針がこの時動いたんだ。
私のクラスは34クラスだった。中1のときからの知り合いは何人かいたが
特別仲の良かった子は学校を辞めてていなかった。
心の中をうごめくような不安が私を取り巻いた。
「そのうち慣れるよね…」そう思った。いや、そう思いたかった。
シンガポールでの嫌な思い出がふと頭をよぎった。
「あっ、かこちゃん」
名前を呼ばれた。その声の主はー…
「あっ、船田!!」
何かがほどけるような感覚だった。部活友達が私と同じ教室に2列右に今まさにバックを置こうとする姿勢で止まっていた。
そのゆるっとした雰囲気と嬉しさのあまり思わず笑みがこぼれた。
船田と話してるうちに中1の頃の友達が話しかけてくれたりした。
みんな覚えてくれてたんだ。と少し心配要素だったこともいつの間消えていた。
「かこちゃん」
「あっ、イッシー久しぶり」入学したばかりの時の行事、オリエンテーションキャンプで
同室だった色素の薄い可愛い子だ。
「あのね、この子このクラスで仲のいい子がいないみたいなんだけど、佳子ちゃん一緒に行動してくれる?」
「あっ。えーっと、うん」
私が素直に返事をできなかった理由は2つ。言っては悪いけどいかにも地味な感じだったから。
あと友達になりたいんだったら自分で声かけてほしいから。
「じゃあねー」と自分のクラスに帰ったイッシーに少し腹を立てたのは言うまでもない。
この会話以後、私が目があったので手を振ろうとした時ふっと視線をそらす態度も気に入らなかった。
「よろしく」といきなり馴れ馴れしい態度で赤嶋奈津子は話しかけてきた。悪夢が蘇る。
私がこんなにも地味な子を嫌がるには理由がある。
シンガポールでのことだった。転校したばかりの時はクラス内の女子はグループ化し、がっちりと固まっていた。その中に放り込まれた私は戸惑っていた。そんなとき話しかけてくれたのが有香ちゃんと仁美だった。私がこの子たちと仲良くなった後気付いた。私たちのクラス内での存在を。
女子だけでワイワイ騒いでいる輪の中に入れなかった。集合写真に入れてもらえなかった。
いじめられているんじゃない。多分、そういう立場を作っておくことで彼女たちは安心したに違いない。でも、私はすごく気分が悪かった。
もちろん、恋愛の土俵にも上がれず自分の気持ちを外に出せなかった。この気持ちを誰かに打ち明ければ私も相手も冷やかされる。それも、違う目の色で。好きな人に迷惑かかるからと思って、だけど好きでもどかしかった。
女子校だからもうそんなことはない起こり得ないかれどただ自分を表現するためにはクラスの下じゃだめなんだ。
自分って最悪だなと分かっているけれど、そう考えずにはいられなかった。
結局赤嶋さんとには悪いけどそっけない態度をとった。するといつしか彼女は違う気の合う友達ができたみたいでその子といるようになった。私は安心した。その安心感は残念ながら罪逃れだけれども。
波乱の始業式を迎え、やっとクラスに馴染んできたのは4月の下旬だった。
まだ音取りの段階だけれども全国音楽コンクール、音コンに向けて部活もフル活動だった。
朝起きて「今日が楽しみだな」と思える喜びを感じながら登校した。