第5話 オルセー美術館の絵画は日本で見る方がエエかも、です。
オルセー美術館は、ルーブル美術館の収蔵品から時代の下がる作品を所蔵している美術館です。
まあ、印象派とその前後の時代がメインですね。
ここら辺の絵画は日本人にも人気で、日本でも「オルセー美術館展」はちょくちょく開催されています。そこで名作をご覧になった方も多いでしょう。
そして、絵画については日本の展覧会ってホントいい機会だと思うんですよ。
いや、別に鷲生がフランス旅行でオルセーに行ったことを後悔しているわけじゃないんですが、「オルセー美術館」で鑑賞することが結構しんどかったので。
オルセー美術館は、5階=日本式の数え方で6階に印象派(とその後くらいの時期I)の作品、0~2階に彫刻と印象派前後の絵があります。
オルセー美術館の建物が昔は駅舎だったというのはよく知られているかと思います。
鉄道輸送に手狭になったから移転したとはいえ、10ホーム備えたターミナル駅であり、ルーブルほどでなくても広いです。
そして、ルーブルはもとが宮殿だったせいか一つ一つの部屋が大きく座れるベンチなどもたくさんあり、休憩を取りたくなったらすぐに手近などこかに座れたのに対し......。
オルセーには、訪問客に対して休憩スペースが潤沢ではありません。
低層階の彫刻のあるエリアには座るところはありますが、そこまでいかないと休めない……。
印象派の5階にだってベンチは用意されていますが、いかんせん客の方が多すぎて。
日本人に限らず人気ですからねー。
鷲生のパリ旅行の中で一番体力的にしんどかったのが、このオルセー美術館だったかと思います。
そもそも、ホテルの最寄り駅のパリリヨン駅からオルセーに向かう途中でももたつきまして。
リヨン駅からメトロの14番に乗り、とある駅で、オルセーの最寄り駅まで行くRERのⅭ線の西行き電車に乗り換えようとしたのですが。
東方向に向かう電車のホームしか見つからなかったんです。
「どういうこと?」と不安に駆られながらウロウロしているうち、やっと「この駅って、東行きと西行きとでフロアが違ってたりする?」と気づきまして。
階段上ってやっと西行きの電車のホームにたどり着きました。
いやー、こんな段階でエネルギーを浪費してしまいましたw
やっとこさオルセー美術館に到着。
開館すぐの時間を予約しましたが、やはり入り口に行列はできてましたね。
あ、この入り口から写真を撮っており、noteに投稿しております。
( https://note.com/eagle9052/n/nc5e154fa188f )
さて。朝の鉄道駅の雰囲気がするオルセー美術館内。
鷲生は館内を効率よく回ろうと、5階まで行こうとしたのですが(入り口から入って最奥に5階まで直通のエスカレーターがあると受付でもらえる地図に書いてあります)。
そのエスカレーターに向かう途中の低層階で、マネの「笛を吹く少年」とか、ホイッスラーの「母の肖像」とか目に入り、そしてフランス旅行で予習してて気になったバジールの作品もあったので、とうとう「このエリアを先に見ちゃえ」と思いまして。
これらの名画が堪能できたのは良かったですが、さて、ここから5階に行くエスカレーターはどこにあるのやら?
その場所がわからず、とりあえず階段でもう一つ階に行ってみたんです。
しかし、ここはアールヌーヴォーの家具などの展示らしいことしかわからず。
これらの展示は後回しにする予定でしたから、もう一度下に降りて、5階行のエスカレーターを探すことに。ああ、しんど。
このエスカレーター。
突き当りの壁みたいなのの後ろに隠れるようにあるんですよ。気づかないわけだw
(そしてほかの階からは出入りできないようになっています)。
で。
5階に行ったら行ったで人がいっぱい。
そして、モネ・ドガ・ルノワール、それにゴッホにセザンヌの超有名作品がずらり。
そりゃ気合い入れてじっくり見ますよ。
ところが、こんだけの密度で名画が並んでいると、早々に集中力がすり減っていく……。贅沢な悩みですけれど。
この時点で疲れましたし、この日は終日オルセーにいるつもりでしたから館内のカフェで昼食をとる予定にしてましたし、5階にあるカフェに入ろうかと思ったのですが。
お昼時に差し掛かって待ち行列がずらりとできてます。
とりあえず、5階でトイレだけでも済ませとこうかと行ってみると、トイレは5階からさらに階段をあがった場所にあり、階段にまで待ち行列ができています。
ちなみに、トイレやお食事処は5階か地下にしかありません。
観光客は5階の印象派中心のエリアと、0~2階だけを見るもの、という前提なんでしょうか……。
でも、鷲生は大枚はたいてフランスまで来たんですから、ざっとでも全フロアを見るつもりだったんです(そして実際に見ました)
なので、トイレが5階と地下にしかない・休憩ベンチが実質彫刻エリアにしかないというのが不便でしたし、そこに行き来するのに余計に体力を消耗した感じです。
あと、日本にオルセー美術館展が来るように、世界のあちこちでもオルセー美術館から所蔵品を借り出しているようで、せっかく訪問してもオルセーには展示してないっていうのもありました。
絵画に関して言えば、日本で「オルセー美術館展」が開かれるのにせっせと通えば、そちらの方が、絵画鑑賞に集中できていいのかなという気がします。
行きの交通機関で言語がわからなくて迷うとかないでしょうし、美術館内外の休憩場所で休憩タイムを調整できるでしょうし、トイレも近くにあるでしょう。
そうそう、今、東京の国立西洋美術館で「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」(※1)展が開催中です。
私が見たかったバジールの作品は東京にいたから、見られなかったんですねw
さて。
ヒイヒイ言いながらもオルセー美術館に展示中にあった絵画の感想は……。
ゴッホの「ローヌ川の星月夜」(北斗七星が描かれているアレ、です)。
鷲生も好きな絵ですし、こうして名画の中にあってもひときわ訴えかけてくるもののある絵のように思います。
そう思うのは日本人の鷲生だけでなく、いろんな国の人からも大人気。
いつ足を向けても数人以上の人が集まっているので、近くで見るのはあきらめました(20年位前に日本のオルセー美術館展でじっくり見たことありますし※2)。
で、思ったのは。
こんなエエ絵なんやから、ゴッホが生きている間にもっと買い支えてあげてればよかったのに......と。
いや、よく考えてみれば、ゴッホの死後に弟テオやその家族の尽力でゴッホの良さが世界に広まり、そのことで現代のわれわれの感性が形作られたのですから、そういう時間の巻き戻し方はやはり意味がないんでしょう。
あ、この「ローヌ川の星月夜」、2026年に東京に来ますよ(※3)。
お近くならぜひ!
関西に巡回してくれるなら、鷲生も行きたいですw
ルノワールは、あの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」が見られてよかったです。
最初期から、晩年に至るまでの作風の変化がわかるようなラインアップでした。
あと、美術史上の評価が高いわりに、鷲生の好みではないセザンヌ。
鷲生が持っている、世界的にも評価の高い美術史の本『美術の歩み』(ゴンブリッチ著)によると。
セザンヌは絵画の平面の中で「充実した固体」を描きたかったのだと指摘されています。
そりゃ、セザンヌ以前にも遠近法とか写実的な描写でも立体を平面で描く取り組みはあったんですが、セザンヌはそういった技法を用いることなく、それをやり遂げたかったのだ、と。
これまでもセザンヌのサン・ヴィクトワール山を主題にした作品は何回か目にしてきましたが、あまりピンときていませんでした。
しかし、今回、オルセーでリンゴの静物画を見て、「ああ、艶のある丸いリンゴがそこに『ある』。中身がぎゅっと詰まった質も量もある球体が『ある』」ということが絵から感じられて、「ああ、これがゴンブリッチ氏が言ってたことかー」と納得がいきました。
ま、好き嫌いでいえば、今でも特に好みではないんですがw
でも、実感をもって尊敬する気持ちになれました。
今回は印象派のエリアにあった絵画についてのお話でした。
次回は、印象派のエリアに近いけど特別展の関係かちょっと離れた別室にあった絵や、低層階にあった絵について振り返っていこうかと思います。
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※1 「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」 国立西洋美術館
2025年10月25日[土]ー2026年2月15日[日]
https://www.orsay2025.jp/
※2 京都市美術館で見たはず……と検索して見つからず。
GoogleのAIくんとお話しして、どうやら2002年の兵庫県立美術館で見たようだとわかりました。
※3 美術館ナビ
東京都美術館開館100周年記念「オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び」東京都美術館
2026年11月14日(土)~2027年3月28日(日)
https://artexhibition.jp/topics/news/20251106-AEJ2775654/




