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パリの京都人 京都のおばちゃん、おフランスを旅行します!  作者: 鷲生 智美


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10/17

第10話 ガラスキ・ルーブル大助かり ルーブル美術館で丸一日(3)

 ルーブル美術館といえば世界で最も有名なミュージアム。いくら夏の観光シーズンから外れるとはいえ、季節は芸術の秋。それなりに混雑しているのでは?


 ……それは展示品によります。

 再三再四このエッセイで書いているように、「モナリザ」前はいつも混雑です。

「サモトラケのニケ」もそう(ここは直近の入り口から「モナリザ」に向かう途中にありますしね)。

「ミロのビーナス」もそれなりですが……。

 これらのルーブル美術館三大至宝のあるエリアから外れると、途端にガラスキです。


 前回書いた、メソポタミア文明のエリアがほぼ人がいないのはまだわかります。

(美術というより考古学の範囲に近いですし、興味がない人も多いでしょうから)。


 しかし。

 フランス絵画のエリアが、こうもすいているとは。

 いや、おかげさまでじっくり名画鑑賞できて助かりましたがw


 さて。

 フランス絵画のエリアに行こうとして到着したものの、そこは絵画史の中で後の方の時代の部屋だったらしく、このまま展示を見ていくと絵画史を逆に辿っていくようだったので、まずは通過して一番歴史の古そうな絵を探しました。


 どうも、「ジャン2世(善良公)」の肖像画がフランス絵画のエリアのスタート地点のようです。

 部屋中央に設けられた壁に一枚だけが飾られていましたし。

 ジャン2世は百年戦争でイギリスで捕虜生活を送ってた人で、善良ではあってもあまり……ネットで検索すると、佐藤賢一さんが「お人よし」と評したという記事が出てきました。


 ただ、この肖像画はwikiによればフランス最古の肖像画だそうです。

 そういった意味では美術史上重要な作品でしょう。


 あ、この記事に登場する絵画の写真はnoteに投稿しております。

 https://note.com/eagle9052/n/nf507f2da3ab0


 次にご紹介するのは「聖ドニの祭壇画」。

 鷲生が持参した本にも紹介されています。

 聖ドニは、首をはねられて殉教した聖人ですが、はねられた首を持って歩いたという伝説のある人です。


 この絵画の画面左下隅では、牢獄にとらわれたドニが聖体拝領を受けています。

 鷲生もカトリックのミサに出席しますが、コレ、この白い丸いコレ、聖体拝領でいただきます。

 小麦粉と水で作られ、発酵しないパンです(ホスチア)。今でも日本のカトリック教会でもコレなんですよ。

 伝統を感じますね(ふう)。


 また、ルーブルには「アビニョンのピエタ」が展示されています。

 これは、長らく地方の小さな教会にあり、19世紀になって「再発見」。

 その美術的な素晴らしさから驚きをもってルーブルに迎らえれたものです(市民による「ルーブル友の会」が募金で購入したとか)。


 製作年代は違いますが、後世に再発見されてインパクトを与えた点は、日本の「高松塚古墳壁画」に近い立ち位置かもしれません。

 それなのに……。

 21世紀現在、やはり観客はいません。人が来ても通り過ぎるばかり。

 何回か鷲生はこの絵の前に来たんですが(道に迷ってw)、午後遅くに学生さんのグループが講師の先生からなにかレクチャーを受けている場面に出くわしましたので、これから有名になっていくのかもしれませんね。


 その次にある「どこかで見たことある」肖像画。

 シャルル7世だとか。あー、ジャンヌ・ダルクに助けられたくせに見殺しにしたあの王様か……。


 展示エリアで、特に壁に囲まれて、照明を落として中が暗くなっている一室に飾られているのが「フランソワ1世」の肖像画。


 対外戦争や中央集権化で世界史でも有名、かつダヴィンチを招いてフランス文化も向上させた有名な王様です。

 また、この絵画も(全体として古拙な印象も受けるとはいえ)、美術史畑の本では衣装・装飾品の描き込みが褒められていました。


 まー、日本でいうところの「伝源頼朝像」みたいな立ち位置の絵画……ということになるでしょうか。

 さすがに、ここはいつ足を踏み入れても、何人かは観覧者がいる状態でした(言うて2,3人くらいでしたが)。


 同じ暗室には「エリザベート・ドートリッシュの肖像画」もあります。

 今でもヨーロッパの街を歩いていそうな顔立ちで、なかなかの美人さんです。


 さて。

 いろんな人物の名前が登場しました。

 鷲生はフランス旅行の前にフランス史をざっくり予習してきたのですが、この辺で頭がこんがらがってしまって。


 ここで椅子のない暗室から出て、座るところを探してスマホで調べました。

 スマホで何を見たか。

 それは自分のカクヨム記事です。

 自分用にフランス史をまとめて日記エッセイに投稿していたのです。

 ↓

「受験生もご参考に! エンタメでたどるフランス史(近代まで)」 https://kakuyomu.jp/works/16817330661485429107/episodes/822139838162438430

 自分が書いたものなのに忘れているというw

 でも、自分が書いたものだからぱっと読めてすぐ思い出しましたから、書いて投稿しておいてよかったですw


 ええと。

 フランソワ1世の息子が、アンリ2世。

 カトリーヌ・ド・メディチを妻に(一方で愛妾ディアーヌ・ド・ポワティエには終生首ったけ)で、ノストラダムスにその死が予言されている人。


 アンリ2世とカトリーヌとの間の娘が『王妃マルゴ』。

 萩尾望都さんの漫画で予習しましたw


 その兄のシャルル9世の妻が、鷲生が美人さんと思ったエリザベート・ドートリッシュ(つまりマルゴの兄嫁にあたります)。


 部屋から出ると、中野京子さんの本で取り上げられていた「アモルの葬列」があります。

 中野京子さんは、これをディアーヌと関連付けておられました。


「アモルの葬列」は、アモル(キューピット)の死体を運ぶという、あまり見かけない画題です。

 こういう幻想的な絵を見ていると、ファンタジー小説を書く上での何かヒントになるかもしれません(オルセーでギュスターヴ・モローの絵を見たときにも思いました)。


 また、王妃マルゴはアンリ4世の王妃だったのですが、この夫婦はどちらも愛人を持っていました。


 ルーブルに「浴槽に座る二人の女性の片方が片方の乳首を摘まんでいる、謎めいた絵」があります(すっごく昔に化粧品か何かのCMに使われていたというおぼろげな記憶……)。

 この右側の女性がアンリ4世の愛人の「ガブリエル・デストレ」と言われているのだとか。


 アンリ4世の次はルイ13世、14世、15世、16世と覚えやすいですw

 16世がマリーアントワネットの夫で、フランス革命で斬首された王様ですね。


 この時期には、古典主義のプッサンが活躍します。

 鷲生の西洋美術史の知識ははゴンブリッチ著『美術の歩み』に大きく拠っているのですが(つい最近『美術の物語』として新訳が出版され、「世界で最も読まれた美術史の本」という触れ込みでしたよ)。


 ゴンブリッチ氏がプッサン、特に「我アルカディアにもあり (アルカディアの牧人)」を高く評価してましたし、この絵、ダヴィンチ・コードでも取り上げられたとか。


 名実ともにフランス絵画の代表作の一つだと思うのですが、足を止めて見入るお客さんもいません。

 なんちゅうか、もったいないというか。

 おかげさまで、鷲生は隣のプッサンの自画像とともに自撮りをしてしまいましたw


 この辺のエリア、お昼時にもなったからか人はちょくちょく通るんですが、作品をじっくり鑑賞する人が少ないです。

 まあ、広い部屋に数多くの絵画が展示されているので、事前の知識がないと鑑賞の対象を絞りづらいからかもしれません。

 EU圏内で気軽にルーブルに来られるような国の人たちはそれでもエエのかもしれませんが、日本から行くなら予習は大事です、うん。


 人が少ないので、せっせと鷲生は名画と自撮りをしておりました。

 noteの写真を見て、「なんでこのオバはんは、自分が写り込もうとするねん」(しかも、背景の名画のピントが合っていなかったりする)とお思いの方もおられるでしょう。


 しかしながら。

 今日び、その絵を見たければネットで綺麗な画像が出てくるでしょう。


 鷲生としては「自分が行った」「周囲に人が多かった(少なかった)」「客の身体からみたその絵のサイズ感」「どんな感じで展示されていたか」などなどの背景情報込みの、実際にそこに行かなければ撮れない写真を撮りたかったんですよ(言い訳)。


 さて。

 この時期の絵で有名なのが、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの風俗画「女いかさま師」。

 ガイドブックでも紹介されている有名な絵ですが、ここも人がいませんw


 同じ画家ですが、ろうそくの光を効果的に使った静かな作品もあります。

 コチラの方が日本人、あるいは現代人好みかもしれません(でも人いないんですけどw)。


 クロード・ロランの風景画も何枚かありました。

 印象派よりずっと前の時代ですが、明るい黄色で太陽を描く、その色の使い方が印象に残りました。


 てくてく歩いていて、なんか感じのいい肖像画があるなあ!と思ったら。

 ルブランの作品です。


 ルブランは女性画家で、マリー・アントワネットと親しかった人です。

 たしか「ベルばら」にも登場してませんでしたっけ……。

 それじゃあ、革命のときは大丈夫だったのかなと、今この文章を書くのにwikiを見ていると、革命後はいったんフランスから逃れ、各国の上流階級の肖像画を描いて活躍したそうです。

 ああ、無事だったんですね。


 さて。

 ここでフランス革命。

 ここらあたりの有名絵画、「民衆を導く自由の女神」(ドラクロワ)や「皇帝ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠式」(ダヴィッド)などの大作は、これらのエリアではなく、モナリザ近く部屋にどどーんとまとめておかれています。


 西洋絵画にこの表現はおかしいかもしれませんが、それらの大作は、なんか「畳何畳分」で測りたくなるようなスケールです。

 そちらについては別記事で書いておりますので、今回もここでいったん記事を終わります。


 ※ドラクロワの大作などについてはコチラ↓

「第3話 観光のスタートはやっぱりモナリザでしょう!」

https://ncode.syosetu.com/n4467lk/3

 

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