表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/92

【第7章 第1話】入口の審査


朝。

型の舟が本流に出て半日、川霧の切れ間から最終都市の門が現れた。

大きなアーチの内側で、検印機が低く唸る。

掲げられた札は三行。


門規げんき

① 氏名を記すこと

② 固定印を押すこと

③ 遅延は寿命署名で補うこと


(……**三(固定)**に寄る規則が三つ、か)


ノアが端末を開く。

端末《門前広場:混雑(中)/固定印=自動/寿命補填=“参考”条項/公開:限定》

『二準拠の“暫定発火”を交渉しよう。見せて運ぶしかない』


「いまだけ」

セレネがぼくの指に触れる。《命響リリンク》が繋がり、胸の圧が半拍ぶん軽くなる。

(手の温度が半拍ぶん、落ち着かせる)


灰の外套の門審官がこちらを見る。

「氏名・固定・寿命補填。この三つが通過の条件だ」


「二で通します。三は踏みません」ぼくは短く答える。

「印名+証+時間。見える形で公開します。——暫定発火の場所をください」


審官は顎を引いた。「三十拍で示せ」



設営——“最短の型”を置く


桟橋から下ろした木箱を最小限に開く。

公開箱×2(鏡)/読み札(最短)/合図キット/零印札/返し輪の糸。

看板は三行、門規の向かいに並べた。


《暫定発火:門前》

鈴は数える、灯は休む。

名は使わない(印名+証+時間)。

二で通して、三は踏まない(寿命=0○)。


ノアが端末で基盤を結ぶ。

端末《時寿分離:ON(零印○)/二重公開:門側×街側/観測摩耗:0/固定:未実行》


「《結時むすびどき》——受け口↔門前」

ぼくが継承鍵を半回転し、切らずに結ぶ。


初鈴。合図係の少女が鳴らすと、足元に音跡二拍が現れる。

**零印(○)**が右下で小さく灯った。


審官の眉がわずかに動く。

「寿命欄は空白のまま……0と印(○)。記録は?」


「公開箱で鏡です。改ざん不可」ノア。



審査①:氏名を求める欄


門の窓に氏名欄が光る。

(名は通路にしない)


「《印付け》——読印どくいん

印名(やることの名前)+声紋印+息印+拍鍵で読みの箱を作り、氏名欄を停止する。

読み手が替われば鍵も替わる。


端末《氏名欄:停止/読印:有効/差異:0》

審官「責任は?」

ミリィ(いつの間にか立会い)「公開で担保。印名+証+時間で誰でも確認できます」



審査②:固定印の要求


門の自動ハンコがわずかに前へ。

(三を入れたい癖——返し輪で戻す)


「《結時》——返し輪(固定回避)」

固定線に返しを置き、押されても二へ戻る。


端末《固定印:作動→返し輪で戻り/二止め維持》

セレネが読み札を掲げ直す。


固定は使いません。差異はその場で調停。



審査③:寿命補填の脚注


審官の端末に小さな脚注。


《遅延時は寿命署名より微量補填》

(また換命の婉曲)


「止めて、結んで、返す」

「《封鎖》——寿命線への裏配線」

「《結時》——拍ほぐし/余拍前倒し(小)」

遅れは余拍箱へ吸い、配給側へ返送。必要ぶんだけ支援流→合図点へ。寿命は不使用。


端末《遅延:解消/寿命欄:0(零印○)維持/公開:ON》

審官は顎に手を当てた。「数字で」


ノアが窓に出す。

端末《通過:+5%/遅延→余拍:12→返送予約/支援:小→合図点/寿命欄:全拍0(○)》



小さな混乱——録り声の口上


検印機の陰から録り声が重なった。


名はいりません。恋名で通ります——

(また恋名!)


「《印付け》——声紋印+息印(二層)」

基準声=合図係。息印(半拍の灯)は録り声に出ない。

「《結時》——声重ね→基準へ集合」

録り声は増幅に変わり、証は基準ひとつだけ。


端末《録り声:無効化→増幅転化/音跡:二拍維持》


セレネが慌てて言い直す。

「恋名じゃなくて印名! 鈴は数える、灯は休む!」

広場にさざ波の笑い。審官の口角が一瞬だけ緩む。


(三にしないから、言い直せる。それでいい)



“見える”整流——交差と合流


合流側で半拍のズレ。

「《印付け》——波見なみみ/横灯」

「《結時》——交差鈴(二連)/拍ほぐし」

横が先、縦は一拍休み。足元の横跡は半拍、音跡は二拍で濃い。


端末《ズレ:可視化→緩衝吸収/時間酔い:回避/苦情:低》



門の“最後の質問”


審官「切らずに結ぶと言う。刃が来たら?」

黒外套のグラムが一歩だけ前へ。「交差切りは検証済みだ」

ぼくは頷く。

「表+裏+逃げの三重結び、面は網結び。入力は余拍→返送。記録は公開、寿命=0」


ノアが短く重ねる。

端末《入力返送:今日=9→予約/観測摩耗:0/差異:即時調停》


審官は門標のレバーに触れ、静かに告げた。

「暫定発火、許可。三十拍を二で運べ。寿命欄は0のままに」



三十拍、見せる


初鈴→一鈴一灯→終鈴(二層)。

音跡二拍が門前から都市の中へ細い道を描き、零印(○)が全拍灯る。

固定印の針は返し輪で戻され、氏名欄は読印に置換。

遅延は余拍で受けて返送、支援は合図点へ小さく回る。


端末《刻限:30確定/差異:0/寿命欄:全拍0(○)/固定:未実行(二止め)》


審官は門札を裏返した。


《条件付承認:二準拠》

最低合図セット=初鈴/間灯/終鈴二層/声紋印

氏名→読印/固定→返し輪/寿命補填→余拍


ミリィが立会印を押す。「A:合格。次は広場標準の合意だよ」



ラブコメ休憩(超短)


安堵の空気の中、セレネがぼくの袖をつまむ。

「いまだけ……門の中で、二拍だけ手、つないで」

「三にしない範囲で、ね」

指を重ねると、《命響》がふっと灯り、息印が半拍だけ路面に浮いた。

ノアがむせこみ、合図係の少女が肩を震わせる。

(いい。誓いはまだ言葉にしない。二で続ける)



今日の看板(門前・暫定)


・氏名は使わず読印(印名+声紋+息印+拍鍵)

・固定印は返し輪で回避(二止め維持)

・遅延は余拍で返し、支援は小さく合図点へ

・寿命=0(零印○)を二重公開で維持

・最低合図セットを採用(初鈴/間灯/終鈴二層/声紋印)


端末《通過:門規下で+7%/苦情:低/録り声→増幅転化:5件/入力返送:9→完了予約/観測摩耗:0》


審官が最後に一言。

「三で固める街だが、二で見えるなら——続けてみよう」


ぼくは継承鍵を確かめ、舟の甲板に積んだ型へ視線を戻す。

二で通して、三は踏まない。

切らずに結んで、見せて運ぶ。

そして、二拍で並んで。

——最終章は、門の内側から始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ