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【第6章 第8話】二重公開:時寿分離(クロノ=ライフ・デカップル)


昼。

広場の長机に公開箱を二つ並べた。

左はいつもの街側、右はテンペスト側。右の窓には細い欄が一行、余計にある——寿命署名ライフサイン


(最近、時間(拍)と寿命の話が薄い。——なら今日、絡め取らせないを見える形で決める)


灰のスーツの代理長が書面を置く。

「我々の帳は**“時刻”と“寿命署名”を並べる慣習だ。換命は使わない前提だが、欄は残る」

白衣のミリィが立会う。「欄は見る**ため。勝手に動かさないことを公開で確かめたい」


ノアが端末を開き、短く言う。

『二で開示/三は踏まない。今日は時(拍)と寿命を分けて結ぶ』


「いまだけ」

セレネがぼくの指に触れる。《命響リリンク》が繋がり、胸の圧が半拍ぶん軽くなる。



1)結び:時と寿命を別の道に


ぼくは継承鍵を半回転。

「《結時むすびどき》——時寿分離(クロノ=ライフ)」

刻限針(時間)と寿命署名線(命)を別々の路に結び、交差点には返し輪を置く。

これで、時間の増減が寿命線に伝わらない/寿命線の揺れが刻限へ乗らない。


端末《設定:時寿分離/交差:返し輪ON/観測摩耗:0/固定:未実行(二止め)》


セレネが読み札を貼る。


時と命の約束

鈴と灯は“時”だけを動かします。

寿命は使いません/動きません。

もし動いたら見える→その場で戻す。



2)公開の一歩目——空欄のまま進む


初鈴。列が動く。音跡二拍が足元に残り、街側の窓に第1拍→第2拍と数字が並ぶ。

右の窓(テンペスト側)——寿命欄は空欄のまま、0が並ぶ。


端末《街側:通過更新/テン側:時刻=同期/寿命=0固定》

ノアが頷く。『二で開示の動きは時刻だけ。寿命は不動』



3)最初の仕掛け——“+1刻(寿命保証つき)”


通りの端で、薄い札が配られた。


《+1刻保証:あなたの寿命署名を1/∞だけ預かります》

(寿命の影を使って、刻限の**+1**に“保証”を付けるつもり)


「止めてから、返す」

ぼくは札の足元に指を置く。

「《封鎖》——寿命線への裏配線」

寿命署名に触る細い線だけを噛んで止め、

「《結時》——刻限・表裏結び(時だけ)」

表で+1されても裏で反発し、寿命線は不動のまま。


端末《+1刻:反発消去/寿命線:不動/札:回収→粒化→帳(仮)》


セレネが短く告げる。

「寿命は預けません。——結果は二で返します」


右窓の寿命欄に朱の0が灯り、**“動かず”**が記録された。



4)次の仕掛け——“時間酔い→寿命で補填”の提案


人垣の真ん中で、囁き声。

「高齢帯の酔いは寿命をひと匙足せば楽になる——」

(換命の婉曲。酔いを命で埋める提案だ)


ノアが低く言う。『受け皿は余拍箱にある。寿命はいらない』


「止めて、結んで、返す」

ぼくは緩衝路に触れる。

「《結時》——拍ほぐし/余拍前倒し(小)」

こぼれた拍は余拍箱が受け、配給側へ返送。支援流は届印→合図点へ。


端末《酔い:回避/寿命:不使用/余拍:返送→支援(小)》


セレネが看板を足す。


酔いへの対応

寿命では払わない。

余拍で返し、働きに回す。


右窓の寿命欄はやはり0。**“使わず”**が続く。



5)“寿命の影針”——無音の吸い上げ


屋根の上で、無音の針が寿命欄へ細く刺さる。

数値は動かない。だが、欄外に薄い陰が一瞬だけ走った。(帳外スキミング……)


「見えるようにして、移す」

「《印付け》——寿命影ライフシェイド

寿命に触れた影を淡い輪郭の灯で一拍だけ表示。

「《結時》——影→仮名義(鍵側)」

刺さった重みは名の線ではなくぼくらの仮名義へ微小移設。

清算は余拍→返送に置換、寿命・観測ともに削らない。


端末《寿命影:可視化→仮名義へ移設/清算:余拍置換/寿命欄:0維持/観測摩耗:0》


ミリィが公開箱に書く。


《寿命影:可視→移設(鍵)→余拍清算/寿命動作=0》

「A:合格。寿命線は不動のまま、影は移し替えで捨てられた」



6)二重公開の“差異”調停


二十九拍目。右窓のテンペスト盤が**+1に傾く前兆**(計算の自動補正)を示した。

(終わりを長く見せる補正が寿命欄の**“予測”**に滲む)


「終鈴(夜版でない昼二層)」

チ、チン。終灯が一瞬点る。二拍の音跡が帯になり、くぐりは止まる。

ぼくは右窓の差異に指を置いた。

「《封鎖・判定》——時の確定=30、寿命=0」

差異は街側の“見える合図”で即時調停。数は30で一致、寿命欄は0のまま確定。


端末《刻限:30確定/差異:解消/寿命欄:0固定》

代理長が頷く。「記録で裁く。**固定(三)**は使わない——約束通りだ」



7)読み札(最短)と、ゼロの証


セレネが掲げる。


時寿分離(最短)

鈴・灯→“時”だけ

寿命→使わない/動かない

動いたら見える→その場で戻す


ノアが窓に数字を出す。

端末《通過:通常比+8%/時間酔い:低→回避/+1刻試み:反発3/寿命欄:0→0→0(全拍)》

『ゼロは数字。言葉じゃなく記録で出てる』


合図係の少女が胸の鈴を握り、少し誇らしげに言う。

「二で通して、三は踏まない。——命は使わない」


サジが続ける。

「合図点で働きに回る。名の重さも命の重さも、ここじゃ商売にしない」



8)今日のまとめと、次への宿題


終鈴が二度鳴り、終灯が一瞬点る。音跡二拍が帯になって静かに消える。


公開箱へ入れる今日の看板。


今日のまとめ(二重公開×時寿分離)

・時(拍)と寿命を別の路に結ぶ(返し輪つき)

・+1刻(寿命保証)→反発/札は回収→粒化

・酔いは寿命で埋めない:余拍で返し、働きに回す

・寿命影は可視化→仮名義へ移設→余拍清算

・差異はその場で調停(時=30/寿命=0)


端末《公開:完了/閲覧:自由/改ざん:不可/観測摩耗:0/固定:未実行》


ミリィが静かに言う。

「二で守った“ゼロ”。続けなさい。無名は次、**“零を嫌う揺らぎ”**を入れてくる」


ノアが頷く。『ゼロの証をもっと短く見せる方法……**零印れいじるし**だね』


セレネがぼくの手を握る。

「いまだけじゃなく、毎回“ゼロ”が見えるように」


ぼくは継承鍵を握り直す。温度は変わらない。

時は列を運び、寿命は動かないまま守られた。

——次は、零を嫌う揺らぎを言葉と印で止める。

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