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【第6章 第3話】間の市(いち)


昼前。

東筋と西筋の合間に、臨時の台が三つ立った。

焼き菓子、布、古本。人の流れが交差し、歩幅がほどける。


ノアが端末を見て眉を寄せる。

端末《異常:交差点で遅延↑/音跡:乱れ(細切れ)/時間酔い:前兆》

『合間の市で横断が増えてる。鈴→灯の呼吸がずれてる』


(飛ばしは最後の手。まず、見えるに変える)


「いまだけ」

セレネが指を重ねる。《命響リリンク》が繋がり、胸の圧が半拍ぶん軽くなる。



1)“交差の合図”を置く


ぼくは路面の拍線(—)の上に、新しい印を足した。

「《印付け》——横灯よこび交差鈴クロス

•横灯:横断のための灯。一瞬だけ横に細く点る(数えない)

•交差鈴:短音二連。横断OKの合図(縦列は一拍休む)


端末《横灯:有効/交差鈴:同期ON/縦列:休止→緩衝路受け》


セレネが読み札を貼る。


交差の約束

横灯が出たら“横”を先に。

交差鈴(二連)でOK。

縦の鈴は一拍休みます。


チリン・チン(交差鈴)。

横の台から人が二歩で渡り、縦列は間灯で呼吸を保つ。

音跡は細い横線を一拍だけ残し、数えには入らない。


ノアが頷く。『見える横断で、乱れが説明になる』



2)“歩幅”をほぐす


交差の端で荷車が詰まる。

ぼくは緩衝路へ軽く指を置いた。

「《結時むすびどき》——拍ほぐし(交差帯)」

交差帯の前後にやわらかい段差を置き、縦も横も歩幅を合わせやすくする。


端末《遅延:↓/時間酔い:回避/余拍:微→余拍箱へ》


セレネが合図係の少女に目配せし、声を重ねる。

「鈴は数える、灯は休む。——交差鈴は二連だよ」

少女が笑って頷く。「声、重ねます」


ぼくと屋台の店主、配達の青年が半拍遅らせて口上を合唱。

声重ね(コーラス)が交差帯の不安を押さえる。


端末《声紋:基準=合図係/増幅:3→有効/音跡:二拍濃度↑》



3)見習いを増やす


人の波が厚くなり、角が足りない。

(人を置く。仕事として)


「募集、ここで」セレネが手を挙げる。

合図係の見習いに、読み札と小鈴を渡す。


見習い 要点(短)

・交差鈴=短音二連

・横灯は数えない(“休む”の合図)

・届いた証(質問へ返答/整った音跡)で合図点がつきます


端末《見習い:2名着任(配達青年/繕いの婆さま)/合図点:計上開始》

ノアが微笑む。『届いた証が日給になる。名は使わない』


婆さまは背筋を伸ばし、思いのほか通る声で言った。

「横は今! 縦は一拍休み!」

交差鈴がチリン・チンと響き、路面の横灯が細く点る。

(いい。短く、届く)



4)紛れ:偽の“通行札”


混雑の端で、薄い札が配られる。

**「通行優先」の刻印。借り印の亜種だ。

『縦先と見せて固定(三)**へ寄せるつもり』ノア。


(止めて、結び替える)


「《封鎖》——偽優先の請求だけ凍結」

「《結時》——回収→帳(仮)/合図点へ置換」

札の負担は粒にして帳へ送り、人名はゼロ。

代わりに、札を返した人には合図の説明を手短に——届いた証=合図点をつける。


端末《偽札:回収→粒化→帳(仮)/名負担:ゼロ/合図点:+1》


セレネが看板を足す。


お願い

優先札は使いません。

横灯・交差鈴で交差します。

分かりにくければ声をかけてください。



5)“無音の横断”への対処


通りの陰で、無音の鈴が横断を装って一度だけ差し込んだ。

音跡はゼロ、でも人は動きかける。(影声の横断版)


ぼくは短く指を置く。

「《印付け》——横跡よこあと

正規の交差鈴には、横線の音跡を半拍残す。

無音は跡が出ない。動きが止まり、見習いがすかさず声を張る。


「今は待ち! 次、横!」

チリン・チン。今度は跡が残り、横断が滑る。


端末《無音横断:無効/横跡:可視化→混乱減》


ノアが公開箱を指す。『無音対処:横跡、記録に入れる』



6)“今日の看板”と数字


夕方、広場の長机で公開箱を開く。

ぼくは今日の看板を短く貼った。


今日のまとめ(交差版)

・横灯=横断の合図(数えない)

・交差鈴(二連)で横→縦は一拍休む

・声は重ねてOK(合図係が基準)

・偽の優先札は回収→帳(仮)

・無音の横断=無効(横跡で判別)


ノアが数字を並べる。

端末《通過:通常比+12%/苦情:減少/時間酔い:ゼロ/偽札回収:45枚→合図点換算》

『二で開示のまま。**三(固定)**は踏んでない』


合図係の少女が胸の鈴を握り、見習いの二人と顔を見合わせて笑う。

「届いたって声、いっぱいもらった」


セレネがぼくの手を握る。

「いまだけじゃなく、市の日でも回る型になったね」


(次は——影の転写。口上の真似声を、証で止める番だ)


ぼくは継承鍵を握り直し、短く宣言する。

「二で通して、三は踏まない。

止めて、結んで、返す。

明日は——声紋印で、影声を“見える”にする」


通りの拍線が夕陽を受け、横灯が一拍だけやさしく点った。

終鈴が遠くでチ、チンと二度鳴り、今日が静かに閉じられる。

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