【第3章 第10話】“時蝕”の真価と覚悟
時計塔の中枢部。
歯車が絡み合い、光と影が交差する神聖な空間で——クロは“真実”と向き合っていた。
「ノア……俺の《時蝕》って、いったいなんなんだ」
ノアは静かに口を開く。
「それは、“寿命を消費する異能”なんかじゃない。
《時蝕》は、本来“時を喰らう力”——観測者の資質そのものよ」
「……!」
「寿命を奪い、それを“蓄積”し、時間そのものに干渉する。
本来なら人間に扱える力じゃない。
けれど、あなたは“可能性”を持っていた。だから私は、あなたにリングを託した」
「リングって……お前のだったのか」
「ええ。あれは、私が“人間”だった頃の最後の遺物。
あなたがそれに適合した時、私は……もう一度、誰かを信じてみたくなった」
ノアの声が、震える。
セレネは静かに寄り添い、クロの手を取る。
「それでも……クロは、“人間”として戦ってる。あたしも、それを信じたい」
「……ありがとう。セレネ」
クロの胸の中に、静かに“覚悟”が芽生える。
「ノア。俺は《時蝕》を使う。だけど、それはただ生き延びるためじゃない。
誰かの“寿命”を奪うことじゃなくて——
“未来を繋ぐため”に使ってやる」
ノアが、初めて優しく微笑んだ。
「……その言葉を、待ってた」
その瞬間——リングが赤く輝き、空間に“共鳴”が走る。
《《スキル進化条件達成》》
《《時蝕》→《時蝕・刻限》に変化》
《対象の寿命を喰らい、未来の一点に“蓄積”できる能力へ進化》
《発動時、蓄積された時間を一括使用可能》
「これは……」
「“未来を喰らい、未来を救う”力よ。使い方は、あなた次第」
クロのリングに走る紅い閃光。
それは“人間”としての限界を超えた、新たな力の始まりだった。
「ありがとう、ノア。俺、もう迷わない」
クロはまっすぐに前を見据えた。
——次なる戦いへ、彼の“時間”が走り出す。




