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【第3章 第9話】ノアという存在

時計塔の麓に辿り着いたクロとセレネは、ひとときの静けさの中にいた。

高くそびえる白銀の塔。そこには時を司る歯車が、永遠に回り続けている。


「ここが……ノアがいる場所」


クロは手のひらに視線を落とした。

赤いリングは微かに脈打ち、ノアの存在を感じさせる。


——カコン。

鉄の扉が、独りでに開いた。


「ようこそ、観測の終点へ」


その声に振り返ると、そこにノアがいた。

銀髪に水色のローブ。まるで時間から切り離されたかのような少女の姿。

けれど、彼女の瞳は、以前よりもずっと深く、どこか哀しみを宿していた。


「久しぶりだね、クロ。そしてセレネ」


「……やっぱり、人だったんだよな」


クロはゆっくりと歩み寄る。


「観測者になるって、どういうことなんだ? お前は何を見てきた?」


ノアは小さく微笑んだ。


「“観測者”はね、この世界の“歪み”を記録する存在。

でも本当は……ただの選ばれし落伍者。寿命を使い果たし、“可能性”だけが残った者よ」


セレネが息をのむ。


「じゃあ、あなたも……この世界の犠牲者なの?」


「そうかもね。でも——」


ノアはクロに視線を向けた。


「私は後悔していない。クロ、あなたのスキル《時蝕》は、私と同じもの。

それが、あなたをここへ導いた」


クロの心がざわめく。


「俺と……同じ?」


「ええ。あなたは“選ばれた”。この世界の終わりに抗う、唯一の存在として」


塔の最上階から、巨大な時計の音が響いた。


——ゴォン。ゴォン。


「もうすぐ、すべてが動き出す。あなたたちの物語は、ここからが本番」


ノアの声は確かに“人”の温もりを宿していた。

けれどその奥には、観測者としてすべてを知る者の覚悟があった。


「……クロ。私はあなたを信じてる。生きて、この世界の真実を暴いて」


クロは頷く。


「必ずやる。俺たちで——運命を、変えるんだ」


そして三人は、静かに塔を見上げた。

その頂にあるのは、失われた時間と、取り戻すべき未来。

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