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【第3章 第7話】記録の守人との戦い

「セレネ、距離をとれ!」


クロは叫びながら、リングに意識を集中させた。

この男、“記録の守人”は、記憶に干渉するスキルの使い手。

まともに喰らえば、思考すら奪われる危険がある。


「なるほど……君はまだ、《時蝕》を使えるようだね」


影の男が静かに手を広げると、周囲に本のような欠片が無数に浮かび上がった。

それぞれが“記憶”の断片らしく、触れた者の精神をかき乱す。


「“記憶干渉領域”——《クロノ・リバース》」


瞬間、クロの足元の地面が砕け、重力が反転したかのように身体が浮かび上がる。

思考がぐらつき、現実と幻覚の境界が曖昧になる。


(マズい……思い出が……混線していく……!)


だが、クロは意識の奥に沈みながら、心の底から呼びかけた。


時蝕じしょく


光と闇が交差し、リングが淡く赤く輝く。

クロの右腕に“歯車のような紋章”が浮かび、時間がねじれる。


「記憶ごと、時間を奪う。——それが俺の異能だ」


《時蝕・断層吸収》


その瞬間、記憶干渉の空間が吸い込まれるようにねじ曲がり、破断する。


「なに……っ!?」


影の男の構築した記録領域が崩壊し始めた。


「お前……“本物の時術師”なのか……」


クロは剣のように変化したリングを構える。


「俺はただ、生きるためにこの力を使ってるだけだ!」


《斬時・クロノブレイク》


空間を斬り裂くような一閃が走る。

影の男の身体が歪み、後方へ吹き飛んだ。


「セレネ! 今だ、あの記憶の書片を!」


セレネは頷き、中央に浮かぶ光の欠片へと手を伸ばす。


——カチリ。


リングに新たな情報が刻まれた。


《観測者の記録:断片001》


影の男は、膝をつきながら、うっすらと笑った。


「……やはり君か。“あの少女”に選ばれた男……」


「“あの少女”って……ノアのことか?」


だが、男はそれ以上答えることなく、光の粒子となって消滅した。


静寂が戻った空間で、クロとセレネは顔を見合わせる。


「観測者と、この世界の真実。やっぱり繋がってる……」


「ノア……君は、いったい何を知ってるんだ?」


リングが静かに脈動していた。

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