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【第3章 第4話】“記録者”の涙


「観測者になり損ねた……?」


クロの言葉に、男はわずかに反応した。


「俺は、見ていた……ずっと、ノアを……彼女だけが、時間を超えて……」


その声には、悲しみと、執着が混ざっていた。


「この街は、ノアが最後にいた場所だ」


セレネが小さくつぶやいた。


クロの胸が締め付けられる。

ノアの過去、彼女の存在が、この世界にどう影響しているのか——


それを知るには、立ち止まるわけにはいかない。


「お前の時間は、終わってる。

それでも生き続けるなら、俺が“止める”!」


クロは指輪に意識を集中する。

リングが震え、紅い光を放った。


《時蝕》


発動と同時に、男の影が揺らぐ。


だが——


「無駄だ」


男が呟いた瞬間、塔の空間がひずんだ。

無数の“記録の本”が空中に舞い、文字が宙を漂う。


「俺は観測し続ける。ノアがいた時間を……彼女が笑っていた日を……

たとえ寿命が尽きようとも、“記録”は終わらせない……!」


「狂ってる……!」


クロが再び踏み込もうとしたその時、

塔の天井から、淡い光が差し込んだ。


——いや、光ではない。


それは、青白いローブを纏った“少女”の姿だった。


「……ノア……?」


現れたのは、間違いなくノアだった。


彼女の瞳は、まっすぐに男を見つめている。


「もう、やめて」


「ノア……俺は、お前の時間を……!」


「あなたが見ていたのは、私じゃない」


少女の声が響いた瞬間、空間のひずみが静かに消えていく。


男は、膝から崩れ落ちた。


「ありがとう、でも……さようなら」


彼のリングが、静かに砕けた。


そして、彼の体は、ゆっくりと光の粒となって消えていった。


——寿命を終えた者が還る、最後の光。


クロはその様子を、ただ黙って見届けていた。


ノアは振り返り、少しだけ微笑んだ。


「さあ、次に進もう。ここは、止まった時間。君は——進む者」


彼女のその言葉に、クロは頷いた。


終わりの先に、新しい始まりがある。

止まった世界に、動き出す時が来ていた。

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