【第3章 第2話】永遠に生きる子供たち
少女に案内されて、クロとセレネは“街の広場”へと足を運んだ。
そこには、寿命ゼロの子供たちが十数人。
誰もが楽しげに笑い、遊び、時折こちらに無表情で手を振る。
「……この子たち、全員……?」
セレネがそっとつぶやく。
クロはあたりを見回しながら、静かにうなずいた。
「寿命ゼロ。たぶん、この街の時間は、本当に止まってるんだ」
遊具も、建物も、全てが綺麗すぎる。
まるで“時間の経過”という概念が存在しないようだった。
「ねぇ、おにいちゃんたちも、ここに住むの?」
さきほどの少女が、ふいに問いかけてきた。
「ここなら安心だよ。死なないし、誰も傷つかない。
時間が過ぎないから、ずっと楽しいままでいられるの」
その言葉に、クロは静かに目を細めた。
「……それって、本当に“生きてる”って言えるのか?」
少女は首をかしげた。
「わかんない。でも、悲しくないよ。痛くも、怖くもない。
毎日が同じなら、それでいいじゃない」
セレネが、クロの袖をそっと引く。
「この子たち……“感情”が薄れてる。まるで、時間と一緒に、心まで止まってるみたい……」
「……ああ、たぶん、これが代償なんだ」
「代償?」
「寿命を消費しないってことは、“生きている証”をどこかで捨ててるってことだ」
クロの声は低く、重かった。
「ここにいたら、たしかに寿命は減らない。でも……自分の時間も、生きてる意味も、きっと少しずつ失っていく」
少女が、少しだけ笑った。
「そう言ってた、大人がいたよ。“観測者”って名乗ってたの」
「観測者……!」
クロとセレネの表情が変わる。
「もしかして、その人……銀髪で、水色のローブを着た……?」
「ううん。違うよ。フードの、もっと暗い感じの人だった。
でも、“ノア”って名前、何度も呼んでた。……『ノアはもういない』って」
その言葉に、クロの胸がざわついた。
セレネの指先が、彼の手にそっと重なる。
「クロ……ノアに、何かあったのかも」
「……ああ。行こう。たぶん、“この街の時間”と、“ノア”は、つながってる」
何が待つのかはわからない。
けれど、立ち止まっているわけにはいかなかった。




