【第3章 第1話】時の止まった街
今週から、3章が始まります。
ぜひ、3章も読んで頂けると嬉しいです。
寿命の表示が——動いていない。
「……セレネ、今、リングの表示、どうなってる?」
クロは、立ち止まったまま手首を見る。
いつもなら1秒ごとに減っていく数字が、まるで凍りついたようにピクリとも動かない。
「……え? これ、止まってる……?」
セレネもまた、目を見開いたまま自分のリングを確認していた。
彼女のライフリングも、寿命の残りが“00:13:44:27”から一切変化していない。
「まさか、こんなことって……」
寿命が動かない——それはつまり、この空間だけ“時間”が動いていないということ。
セレネがそっと空を仰ぐ。白い雲は、まるで写真のように動かず、鳥も風も、何もかもが静止していた。
それは美しく、けれど異常で、不気味だった。
「クロ、この街……普通じゃないよ」
「……ああ。たぶん、俺たち……“止まった時間”に入り込んだ」
クロとセレネは、誰もいない街を慎重に歩き始めた。
路地裏の自販機、花屋、子供用の公園……すべてが、ほんの数分前まで動いていたような形跡を残していた。
「まるで、時間だけが抜け落ちたみたいだな……」
と、その時だった。
「きみたち、外から来たの?」
どこからともなく、少女の声が響いた。
振り返ると、そこに立っていたのは、小さな体の女の子。
真っ白なワンピースに、無機質な微笑み。だが——彼女のライフリングには、寿命の表示が“0000:00:00:00”。
「——寿命、ゼロ……!?」
少女は、うなずいた。
「うん。ここは“終わらない街”。みんな、死なないし、歳もとらない。ずっとこのままだよ」
クロとセレネは、異常な世界の中心に、足を踏み入れていた。




