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【第2章 第11話】“選ばれなかった者たち”
時間が正常に戻った空間に、深い静寂が広がっていた。
黒衣の男は立ち尽くし、クロを見据える。
「なるほど……君は、“あのときの子供”か。覚えているよ。選別の門で、見捨てられた少年だ」
「……何の話だ」
「君のスキル——時蝕も、逆刻も、明らかにこの世界の“秩序”を乱す。だから私は見逃せない」
クロは拳を強く握った。
「勝手に決めるな。俺は、誰かのために使うって決めた」
男の目が細くなり、言葉を投げる。
「だがその選択は、別の誰かを“奪う”ことになる。命とは、そういうものだ」
その言葉に、セレネが小さく息をのんだ。
「選ばれなかった者は、ただ消えていくだけ……?」
クロが、セレネの手を握る。
「なら、俺は……そんな選ばれなかった奴らの分も背負って、進む」
風が吹き抜けた。
男はゆっくりと後退し、闇の中に姿を消していく。
「面白い。次に会うとき、君が何を選ぶのか……楽しみにしていよう」
空間が、完全に静寂を取り戻した。
残されたクロとセレネの手の中には——確かな“時間”が刻まれていた。




