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【第2章 第5話】ふたりの境界線
「数が多すぎる……っ!」
クロが息を荒げながら刃をかわし、再び《時蝕》を放つ。赤い光が敵の身体を焼き尽くすが、そのたびにクロ自身の寿命が削れていく。
セレネのリングが強く光り、クロの手の震えが一瞬おさまる。
《セレネのスキル《命響》が代償を肩代わり。寿命使用量の一部が転送されています》
「そんな……セレネ、無理するな!」
「大丈夫。……クロだけに、辛い思いはさせないって決めたから」
その声に、クロは息を呑む。
(重ねてきた命が、今、ひとつになろうとしてる……)
だが、戦況は依然として厳しい。
クロックバンディットたちは、単なる兵士ではない。
寿命を奪うために最適化された動きと戦術で、ふたりをじわじわと追い詰めてくる。
「ノア、敵の中枢はどこだ!」
《奥の階層。寿命波の集中を確認。指揮系統か中枢装置の可能性あり》
クロは深呼吸する。
「セレネ、突破するぞ。どっちかが倒れたら、もう前には進めない」
「ううん、倒れたら……背中を預けるだけ」
ふたりは息を合わせ、薄暗い倉庫の奥へと駆け出した。
その背中に、赤と銀の光が共鳴していた。




