13/92
【第12話】寿命が語る“生きたい”という本音
廃ビルの一室。
クロはソファに座りながら、手首のリングを見つめていた。
『寿命残量:00:05:12』
ギリギリの戦いを終えたあとでも、たった五分残っていた。
そのことが、不思議な希望を灯していた。
「命って……削れるだけじゃないんだな」
ノアが隣に座る。
「そう。誰かのために使った命は、時に“延命”すら超える奇跡を起こす」
クロは首をかしげる。
「それって……俺がやった《時蝕》のこと?」
「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」
ノアはふわりと笑った。
「スキルは確かに力。でも、力だけじゃ“生きたい”とは言えない。……あなたの中に、本当の願いが芽生えたからこそ、命が応えたのよ」
クロはリングを握りしめる。
「……俺、生きたいって思ったんだ。昨日まで、そんなこと一度も考えなかったのに」
セレネは別室で休んでいる。
ノアは、彼女の手配や身元の保護を進めているようだった。
「これから、どうするの?」
「……もっと時間を稼ぐ。生き延びるためじゃない。生きる意味を見つけるために」
クロの言葉に、ノアの瞳がわずかに揺れる。
「あなたは、きっと遠くまで行ける。——誰よりも、深く時を超えて」
窓の外、夕日が差し込む。
命は、まだ五分しかない。
でも、たった五分が、世界を変え始めていた。




