【第10話】“時蝕”発動!クロの反撃が始まる
リミットバザール、最深部。
市場のざわめきに紛れ、クロは指定された死角へと身を滑り込ませる。
「ここだ……」
檻の前に辿り着いたクロは、静かに周囲を確認し、リングをかざした。
カチリ——。
セキュリティが一瞬だけ揺らぐ。ノアの言った通り、死角は生きている。
「大丈夫か……!」
中の少女は、クロに気づいて目を見開いた。
「き、昨日の……お兄ちゃんの……!」
「助けに来た。立てるか?」
少女は震えながらも頷く。
その瞬間——
「おい、そこ!誰だッ!」
鋭い声が響く。巡回警備が早まったのか。
「ちっ、早かったか!」
クロは少女の手を引いて走り出す。
だが、その後方から響くのは——
ズガァンッ!
「っ……重火器!?」
金属音と共に着弾する閃光弾。逃げ場は——
「ノア!非常脱出路はどこだ!」
≪南ブロック、東壁の裏。死角ルートをナビするわ!≫
ノアの声が脳内に響く。
「任せた!」
だが次の瞬間、警備隊の一人が目前に現れた。
「密売妨害者、削除対象——!」
「くそ……!」
クロは反射的にリングに意識を集中する。
《時蝕》——発動。
時間が、ねじれる。
敵の動きが、止まったように見えた。
クロの指が彼の腕を掴む。刹那、その男の寿命が削がれ——
『00:06:02 → 00:06:33』
クロの寿命が、増えた。
「——時間は、奪い返すものだ!」
叫びと共に、クロは少女を抱きかかえ、死角ルートへと駆け抜けた。
リングが、微かに赤く瞬いた。
「ノア、あとどれだけ持つ!?」
≪寿命の限界検知……発熱反応あり。リング、限界を超えつつある!≫
≪——熱暴走を起こしてる。これは、限界を超えてる証拠……!≫
だがクロは、止まらない。
彼の心に宿るのは——
奪われることへの、怒りと悲しみ。
「もう誰にも……時間を奪わせるもんかよ!」
闇の市場に、少年の反撃が始まった。




