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【0話】時間を通貨にした世界で
この世界では、時間がすべてだ。
パンを買うにも、バスに乗るにも、家を借りるにも——“寿命”を差し出す必要がある。
生まれ落ちた瞬間、誰もが寿命口座を持ち、
「今、生きている残り時間」を通貨のようにやり取りする。
現金もカードも存在しない。手首に刻まれた“ライフリング”が唯一の財布だ。
そして、寿命は、容赦なく減っていく。
働いて時間を稼ぎ、使っては減らし、
寝ている間も、誰かと笑っている時でさえ、寿命は刻々と消えていく。
奪う者、奪われる者。
生きる者、朽ちる者。
そんな世界で——
彼は、残り寿命“10分”から始まった。
そして、彼の持つ《スキル》が、すべてを変えていく。
これは、寿命を喰らう異能《時蝕》と、
光すらも奪い合うこの世界で、
“最期の10分”から成り上がる少年の物語。