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体罰のウワサ

学校では、「ヘイズ」の話題で持ちきりだった。


「え、見た!?あの黒スーツのやつ、かっこよすぎ!」

「でもさ、ちょっとやりすぎじゃね?犯人ボロボロだって噂」


SNSで「ヘイズ」とエゴサしてみると学内と同じように肯定派と否定派に分かれ、論争が起きていた。

だが、俺はその中心で黙っていた。

この議論が、自分自身のことだなんて言えるはずがない。


「タツキ、何見てんの?」


そう話しかけてくるのは、ユイ。

俺が、自分の席でエゴサしていると顔覗き込むように俺のスマホを見てきた。


「何でもねぇよ」

「今、ヘイズ見てたじゃん!やっぱりタツキも気になるんだね!」

「うるせぇ。周りの奴らと一緒にすんな」

「ムキになっちゃって、かわいいなタツキは」


呑気な女だな。

まあでも、これがこいつのいいところか…。


「ねえ、知ってるタツキ?うちの高校の野球部の顧問がすごい体罰してるって噂」

「野球部の顧問が体罰?」

「うん、噂だけどね。なんか、色々揉み消してるみたい」


ユイが真剣な表情でそう語った。


今の時代に体罰か…。

何か、大ごとにならないといいが…。

まあ、昼休みにでも野球部の奴らに聞いてみるか。


□□□


「なあ、佐藤。野球部で体罰あるって本当か?」


俺は、昼休みのチャイムと同時に同じクラスの野球部の佐藤のもとに事情聴取に行った。


体罰のことについて聞くと、佐藤は急に怯えてような顔になりそっけない態度になった。


「そんなんねえよ。俺昼飯食うから」

「お、おう…」


あの顔、なんかあるな…。

しかし、俺が介入したところで何もならないしな…。

昼飯のパンでも買いに行くか…。


「はい、焼きそばパン150円」


さてどこで食べるか…。


やっぱりここだな。

俺が選んだのは屋上。

景色が一望できて、何か落ち着く。


俺が、焼きそばパンを食べていると屋上手前の踊り場から何やら話し声が聞こえた。


「なあ、マジでやばくねーか」

「今度は、佐伯がやられたもんな。いつ、死人が出てもおかしくないぜ」

「ああ、なんとかしたいけど武田には逆らえない…」


俺は、野球部員の会話を屋上のドア越しに聞き流した。


やっぱりユイの言ってたことマジだったんだな…。

武田か…。


野球部顧問の武田先生。かつて甲子園に出場した監督歴を持ち、強豪校から引き抜かれてうちの高校にきたやつだ。


実績はあるやつだ。

しかし、その噂は本当みたいだった。


□□□


放課後。


「タツキ、帰ろ!」


そう元気に話しかけてきたのはユイ。

スクールバッグにリュックを担いでもう帰るだけのようだ。


「悪いな、ユイ今日は一人で帰ってくれ」

「ええ、また?夕飯はどうすんの?」

「そんなに遅くならないから、後で食う」


「もう」、っと呆れた顔で見つめてくるユイ。

しかし、不安そうな表情でまた話し始めた。


「今朝の話の続きなんだけど、昼休み友達から聞いてね。佐伯君っていう野球部の一年生。なんか、頭を怪我して休んでるらしいの」


佐伯…。

昼間、野球部がコソコソ話題にしてたやつの確か佐伯だったな。


「それで」

「噂によると、武田先生に殴られたんじゃないかって話…。ひどいよね」


ユイの声が少し震えていた。

正義感が強く、弱い人を見過ごせない。

それが月嶋ユイという少女だ。


「あの体育教師の武田に?」

「うん、しかも練習で怪我したことにしろって口止めされてるって噂」

「ひっでぇ話だな」

「でしょ、大人って何なんだろうな」


大人か…。

ユイの言葉が、俺の心に何か引っかかった。


「じゃあ、私先に帰ってるから!」

「おう」


誰もいない放課後の教室。

突然腕時計が鳴り出す。


通信モードになり、あの男の声が聞こえてくる。


「やあ、タツキ君。スーツの着心地はいかがだったかな?」

「お前、誰なんだ!?」

「言っただろ、君の可能性に投資をする者だとね。今日は、君のためにスーツのイカした機能を教えてあげよう」

「イカした機能?」

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