81.弱点探し
(あの女の作戦は不発!)
メーガンは白い魔力を身に纏い、立ち上がる。
白い魔力はメーガンの身にある小さな擦り傷を癒していく。
「魔法を使わずに傷を治せるなんてすごいねー」
心ここに在らずな表情で、トルマリンがメーガンを眺める。
「はぁ、せっかく勇者を引き離したのに...どうしよう」
トルマリンは死んだ魚のような目で壁の一点を見つめている。
そんなトルマリンの横顔に、メーガンが容赦なく白い光を叩き込む。
白い光は、トルマリンの足元から昇ってきた黒いモヤにぶつかり、吸い込まれて行った。
トルマリンの髪と魔力が青色に変わる。
「もうこうなったら、色々試してみるしかない!」
彼女の手から大きな水球が現れる。
彼女は水球を大きく振りかぶって殴りつけるように、銀色の壁へ叩きつけた。
だが、結界は相も変わらず他の魔力を寄せ付けない。
「次はー」
「止めなさい!」
メーガンは魔法で作り出した白い剣を持って、トルマリンへ斬り掛かる。
「ちょっと!邪魔しないでよ!殺さないであげるから」
トルマリンが水の盾で剣を受け止める。
「邪神が解き放たれたら、どっちみち死ぬでしょ!」
メーガンはもう片手に剣をを作り出し、女を斬りかかる。
しかし、メーガンの攻撃は右手で簡単に受け止められた。
「運が良ければ生きられるよ」
そう言ってトルマリンはメーガンに前蹴りを放つ。
トルマリンのつま先はメーガンの鳩尾に深々と突き刺さり、その体が吹き飛ばされた。
「少し静かにしててねー」
「グッ....貴方....何が目的、なの...」
「復讐よ....私なんか太刀打ちできない巨悪を、邪神を使ってぶん殴る、これが私の目的、だから関係ない子はあんまり殺したくないの....分かってくれた?」
トルマリンが右手をメーガンへ向ける。
「じゃあ、おやすみ」
右手の先に魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣には魔力が満ちて......
突如、洞窟に響く轟音。
吹き上げる風の様な音が近づいてくる。
蘭々と燃える大きな炎が近づいてくる。
炎は瞬く間に2人を包み込む、大きな炎は洞窟を埋めつくし、回避する事は出来ない。
必然的に2人は防御を選択する。
「ぐっ、熱つ、くない...」
トルマリンが魔力の壁で身を守る。
真っ赤で熱を持たない炎の効果は、2人の視界を奪う事。
炎という膨大な魔力に囲まれ、魔力感知と視覚が機能しない空間を、疾走する影が1つ。
その影はメーガンを小脇に抱え、トルマリンから引き離した。
魔力が緑色になったトルマリンが空気を操る魔法で消火活動を始める。
「誰?」
火が消える。
視界が晴れ、人影の正体が明らかになる。
現れたのは真っ赤な髪と目を持つ少年。
「アレクス、さん」
アレクスは小脇に抱えた少女を下ろし、背中に庇う様に立つ。
「メーガン、どうゆう状況だ?」
アレクスがメーガンに問い掛ける、しかし視線は目の前の女に固定されたままで。
「あの....女が....結界を...壊そう..と...して..ます」
「私の名前はトルマリン、マリンって呼んで」
女が妖しい笑みを浮かべる。
「お願いがあるんだけど....そのまま何も聞かずに、回れ右、してくれない?」
「あぁ、わかった......死ね」
アレクスの目の前に魔法陣が浮かび上がる、その魔法陣はアレクス背丈の2倍はある、大規模な魔法だ。
魔法陣から炎が飛ぶ、それはバスケットボールくらいの大きさの炎。
赤より赤い、真紅の炎。
大規模な魔法陣にしては平凡な魔法。
トルマリンの魔力が鮮やかな青色に変わる。
そして、水を纏った左腕で受け止めた。
水とは水素が燃え、酸素と結びついたものである。
そう、水は燃えた結果出来た残った、燃えカスの様な物。
だから、水は燃えない。
しかし、トルマリンの左腕が燃えている。
彼女は左腕を、魔法で作った水球へ突っ込むが、その火が消える事は無い。
むしろその炎は大きく、より熱くなっていった。
水の中でも燃え続ける炎、いや、水そのものが燃えている。
「違う、水が燃えてるんじゃない、燃えてるのは私の魔力か....」
トルマリンはそう結論づけ、左腕にありとあらゆる魔力を消す。
魔力という燃料を失った炎は次第に弱々しくっていく。
同時に、あらゆる防御を失ったトルマリンの左腕は、弱々しい炎に焼かれ、火傷の跡を刻む。
「良い魔法ね......あ....」
何かに気づいた様子のトルマリンは、左腕に魔力を込める。
再び燃料を得た炎は蘭々と燃え上がった。
「あちち」
そう言って彼女は銀色の壁の方を振り向く。
「まさか?! 辞めろ!」
アレクスも、トルマリンがやろうとしている事に気付き、新たな魔法陣を展開する。
彼女はその炎を銀色の壁へ押し付けた。
炎は銀色の結界に込められた魔力を燃やす。
ようなことは無く、炎をまるで磁石の同じ極を近づけたみたいに反発する。
「............」
「............」
トルマリンが気まずそうに振り向く。
「これも違った......」




