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LAST GAME〜楽しいゲームの世界に転生して〜  作者: あき
狂気のデスマッチ編
74/86

74.超越者達

 青白い光が、電撃のようにバチバチと刀へ纏わりつく。

 生まれて初めて食らう魔力の味に、刀が歓喜の声を上げる。

 その声は海底に響く、鯨の鳴き声似た声で、聞くものに恐怖を沸き立たせる。


「あれが、魔力の満ちた、精霊の武器...」

 アレクスが呆然と呟く。

 

 

 タンザーが目にも止まらぬ速さで走る。

 そのまま、様子見の一撃を放った。


 そんな踏み込みの甘い攻撃を、当然、剣聖は防げれる、はずだった。

 剣聖の動きが止まり、その刀をそのまま受け入れる。

 剣聖の肩から腹へ開かれた傷から、滝のように血液が流れ落ちる。

 その血液の滝を、剣聖は驚いたような顔で見ている。

「回避も防御も出来なかった...」

 剣聖がニヤリと笑う。

「師匠?!」

「おいおい、お前が俺の心配か?」

 剣聖の威圧感に狂気が混じる、その威圧感は怪我をする前より数段上がっていた。

 その威圧感に、タンザーは気圧され、1、2歩後退していた。


 剣聖は仁王立ちし、木刀を持った左手を上げる。

 初めて剣を持った子供のような、隙だらけの構え。

 そんな構えに、タンザーとアレクスは息を飲む。


(く、くる、師匠の本気の一撃が)

 タンザーがその間合いから逃げようと下がろうとする。

(逃げないと)

 だが、恐怖に硬直した体は動かない。

(逃げ、ら、はとりあ....死ぬ)

 必死に腕を上げ、その一撃を何とか防ごうと、刀を構える。

 

 剣聖が1本足を踏み出し、全身を使い剣を振り下ろす。

 誰よりも、力強く、早い剣が、誰よりも上手い剣の技術で放たれた。


 タンザーもアレクスも、その剣を捉えられず、気がついたらもう剣は振り下ろされた後だった。


 タンザーに怪我は無い。刀にすら傷は無い。

 しかし、その空間に剣で斬られたような傷が付いている。


「な、何が起きた....」


 剣聖の木刀には、それまで付いていなかった、ピンク色の液体が付いている。


 1拍置いて、タンザーの持つ刀から悲鳴が上がる。

 キィィィィィィィィィィィィィィィィーー


 ガラスの引っ掻くような、それでいて生き物の悲鳴だと分かる、奇妙な声。

 

「精霊を斬ったのは初めてだ、これは...癖になるな」

 木刀に付着した血液を眺めて、剣聖は呟いた。

 

ーーーーーーー


 剣聖の道場を出て、クレイ、アレクスの2人は力なく道を歩いていた。

 クレイの手には、布に巻かれた刀が握られている。


「クレイ、お前これからどうする?」

「...お、俺は...」

「グランディオールには元々来る予定だった」

「え?」

「だから部屋ももう借りてある」

「な、何のために?」

「ここには、アルカナ学園がある」

「.........」

 アレクスが拳を握り締める。

「タンザーにも、剣聖にも、俺は勝つ」

「な?!」

 2人の脳裏に蘇る、剣聖の一撃。

 2人とも気づいていた。あれは、アレクスが、いや人には、辿り着けない領域だと。

「どんだけ負けず嫌いなんだよ...」


「お前の剣があればできるかもしれないだろ.....」

 アレクスは俯き、呟く。

「それって....」

 それは事実上の敗北宣言だった。

 アレクスが自分から認めたのだ、自分だけの力では剣聖を越えられないと。


「クソが....」

 アレクスの目から、涙が流れ落ちた。


ーーーーーーーー


「そうゆう訳で、俺は本気は出さない」

 クレイが苦々しい顔で、水を飲み干す。


「はぁ?」

 苛立ちを全面に表に出した声。

「クレイ...お前、ふざけんなよ?」

 オニキスはクレイの襟に掴みかかる。

「ぐっ、何すんだ!」

「クレイ、長々と言い訳しやがって、つまり、俺の剣を造るのに手を抜いたって事だろ?」

「いや、でも、」

「分かったよ、俺が魔法で無理矢理作らせてやる」

 オニキスの体に黒い光がまとわりつく。

「おい!辞めろ!」


「精霊に頼らず、自分の力で最強の武器を造る、あれは嘘か?」

「.......」

「今の、本気を出さないお前にそんな事が出来るのか?」


 クレイの脳裏に、師匠と交わした最初の約束が思い出される。

 もう、決して果たされる事の無い約束が。


『最強の武器を見せてやろう』


「でも...仕方ないだろ!もしまた精霊が宿ったりなんかしたら」

「じゃあ、俺が殺ってやるよ」

「........何を?」


 オニキスがどこからか取り出した黒い剣の切っ先を、クレイへ向ける。


「剣聖みたいに、俺が精霊殺してやるよ」


 オニキスから迸る、黒く暗い魔力、その禍々しい魔力の気配が、オニキスの言葉に説得力を持たせていく。

 まるで、全てを壊す為に産まれて来たかのような...

 剣聖とは似ても似つかぬ、おどろおどろしいオーラだが、剣聖と同じような超越者の雰囲気を纏う少年。


 ああ、そうだ、アレクスと、タンザー、俺の尊敬する2人の剣士を相手に軽々と勝ってみせた男。

 俺とは違う、一流の人、彼ならあの刀にだって操られる事は無いだろう。


 オニキス、お前なら。

 

 本気を出せるのに出さないというのは、ストレスの溜まる行為だ。

 特に自分の得意な分野、好きな分野なら尚更だろう。


 クレイはオニキスに希望を抱いた。

 とても小さな希望だが、必死に押さえつけていた欲望の扉を開けるには十分だった。


 炉に火が灯る。

 

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