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LAST GAME〜楽しいゲームの世界に転生して〜  作者: あき
狂気のデスマッチ編
73/86

73. 三流剣士と三流鍛冶師

 しっかり刀に布を巻きつけて、走る。

 

 そして辿り着いたのは、クレイとアレクスの秘密基地。


 クレイがこんな状況で頼りにしたのは、親でも、村の警備隊でもなく、アレクスだった。


 誰にも後をつけられていないかをしっかり確認し、細い木々を掻き分けて中へ。


 息を荒らげて中へ入ってくるクレイに、アレクスは何かが起きたことを悟る。

「クレイ?......何があった」

「ーわかんない」

 クレイが、刀の布をしっかり巻き付け直す。

「わかんないよ...」

 恐怖、罪悪感、悲しみ、安堵、様々な感情が入り交じり、ポロポロとクレイから涙が溢れ落ちていく。


「クレイ.....」

  呆然と呟くクレイ、彼には時間が必要だと考えアレクスは、コップに冷たい水を注ぎ、クレイの横に置いた。


(村で、何かが起きた、クレイがあの剣みたいなやつから目を離さない、あれが関係してるのか。村を見に行きたいが、クレイを1人にするのは...)


 アレクスは、指先で魔法陣を組み上げ、首に当てる。

 遠距離で相手と会話できる魔法を、村にいる最近連絡の取っていない友人達へ向けて放った。



ー(アレクス?!久しぶり)

 返答は明るい女の子の声。

ー「ミカか?村の様子を教えてくれ」

ー(村の様子?ああ、なんか精霊の宿った武器が出たとかで、凄い騒ぎになってる、噂だと、何人も死人が出たって.....)

ー「..........分かっ、た、クレイの親に伝言を頼む.......」



「クレイ!行くぞ」

 各所への連絡を終わらせたアレクスが、へたりこんでいるクレイを無理矢理立たせる。

「行くって..何処に....」

「この帝国の首都、グランディオールに」


ーーーーーーー

 それから、空飛ぶ車に3日間乗り、グランディオールに着いた。 

 悪い想像、記憶を脳を駆け巡り呆然としているクレイと、魔法で何処かに連絡を取っているアレクス。


 道中に会話は無い。


 ちなみに、決して安くないお金は、アレクスが払った。


 首都に辿り着き中へ入ると、金髪の少年が待っていた。

「アレクス!クレイ!」

「タンザー?」

 懐かしい顔に、クレイは思わず声を上げる。

「久しぶり、クレイ」

「タンザー、力を貸してくれ」

(アレクスがこんなすんなり頭を下げるの、初めて見た....)

 タンザーは一瞬たじろぎ、すぐに真剣な表情になって頷いた。

「もちろん、とにかく家に行こう」

 


ーーーー

 タンザーに案内されたのはファンタジーの世界には似つかない、厳かな道場だった。

 そこの畳の敷かれた一室で、アレクスとクレイはヴィンダールの村であったあれこれを話した。

「精霊の宿った武器なんてどうすればいいのか分からん、お前の師匠ならどうすればいいかわかるかと思ってな」

「分かった、師匠に聞いてみるよ」


 そう言ってタンザーはアレクスとクレイを置いて部屋を出ていった。


ーーーー

 ボサボサの真っ赤な髪を腰まで伸ばした女が部屋に入ってきた。

 それは、アレクスがいつか見た剣聖の姿とは少し違かった。

 記憶にある剣聖はもっと、カチッとしていて、騎士といった感じの人間だったが、今目の前にいる剣聖は真逆のイメージだ。

 だが、その身に宿るオーラは凄まじく、まるで鋭い剣を向けられているような感覚に襲われる。


「見るだけで人をおかしくさせる刀かぁ、確かに厄介だなぁ」


 何も言わず、剣聖は刀の布を引き剥がす。


「な?!」

「ひっ」

 刀身を見たタンザーが、一目見ただけで何かを感じ取り後方へ距離を取り。

 クレイは焦りの声を上げる。

 アレクスは冷静に目をつぶって回避した。


「ほーん、魔力無しでこれか...クレイて言ったっけ?」

「は、はい」

「壊す、売る、俺に譲る、自分で大事に保管する、どれがいい?」


 クレイは答えを求めアレクスを見る、悩んだ時いつも助けてくれる友人を。

 しかし、答えは帰って来ない、表情を殺し真顔で何処かを見つめるアレクスの横顔は、「お前が決めろ」と言っている気がした。


「...壊してください」

「いいのか?売れば一生遊んで暮らせる金が手に入るかもしれねぇぞ」

「正直、この刀は人の手に持たせたくありません」


 クレイはそう言って頭を下げた。


「よし!タンザー!お前この刀持て」

 剣聖は豪快に笑い、庭へ出ていった。


ーーーーー


 塀で囲まれた庭先に、2人の剣士が立つ。

 金髪の少年が、恐怖に顔を歪ませながら必死に刀を握り締め。

 もう1人は先程の荒々しい雰囲気とは違う、かっちりした装いの剣聖。その手には木刀が握られている。


 その2人を、クレイとアレクスは縁側で座り眺めていた。


「しっ、師匠...」

「呑まれるなよ、タンザー、剣を自分の意思で振れないなんて、3流以下だ」

 剣聖からは荒々しい口調が消え、静かで鋭い声に変わっている。


「来い」

 剣聖がそう言うと、タンザーの手の震えが止まる。

 何故なら、剣聖の放つ殺気が、刀の精神汚染を越える程、鋭く、怖かった。


(師匠...本気だ...やばい、死ぬ)


 クレイは深呼吸し、自然体で刀を握る。


(この気持ちの悪い刀でもなんでも、使えるものは使わないと)


 タンザーの手から刀へ、青白い光が流れ込んだ。

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