7.チュートリアル
異世界に来てからずっと寝ているベットで目を覚ます。
(くそ眠い)
「やっぱ緊張してんのかなぁ、そんなキャラじゃねーだろ」
オニキスは額に手を当て魔法を発動する。
その魔法は精神を落ち着かせる魔法。彼のオリジナル魔法。
「よし!完璧」
ーアルカナ学園ー
これからオニキス達が受ける学園の名称、先先代の王によって、この国のすべての優秀な人間を見つけ出すことを目的に創設された学園。
そんな目的なので、受験に資格は必要なく、受験料も必要ない、成績優秀者には学費免除の高待遇だ。
なので受験者は身分や国、関係なく集まりまくり、この世界の最難関の学園の1つになった。
ーーーー
ベリルさんに見送られエメリアと家を出る。
「なんかあったら私が守ってあげる」
エメリアが真剣に呟く。
「姉ちゃん緊張してる?」
「オニーが落ちないか心配なだけだよ」
「俺が落ちたら全人類落ちるよ」
「生意気」
試験会場につく。掲示板を見ながら進む。
オニキスとエメリアの試験会場は別のようだ。
「がんばれよ」
エメリアと別れ、机と椅子が並べられている部屋に入る、試験官らしき男がオニキスを睨みつけている。
(やっぱり警戒されてるか)
すでに願書には経歴から魔力の色まで記載し提出している。
当然試験官にはオニキスの魔力の事は広まっているだろう。
周りに空席が埋まる。そろそろ始まるようだ。
試験官が注意事項を話し、問題用紙が魔法で配られる。
「始めてください」
カンニング防止魔法が発動したのだろう、周りの人が認識できなくなる。
(いいね、あとからカンニングの疑いをでっちあげられる心配は無いわけだ)
オニキスが知ることがないが、カンニング防止魔法が発動していたのは、彼のいる部屋だけである。
すべての科目が終了する。
これから休憩後、実技試験が始まるようだ。
外にある待機場に移動させられる。待機場の隣には広々とした演習場を見ることができ、人が多すぎてエメリアは見つからない。
演習場に4人ずつ呼び出しがかかる。
試験官が演習場の奥に四角い物体を4つ魔法で出現させ、呼ばれた人が攻撃魔法をそれに向かって何度も放つ。
あれを壊すことが試験のようだ。
次の人が呼び出される。
その中に1人銀色の髪を持つ少年がいた。
ー勇者だ...
ーえ?まじで?どこ?!
受験生の1人が呟くと周りがざわざわしだす。
ーあれが...
ーかっこいい//
勇者はそんなざわめきに目もくれず、銀色の魔力を迸らせる。
銀色の光の粒子が彼の体にまとわりつき、徐々に指先に集まり、放たれる。
彼が放った銀色の弾丸は、対象を5発程度で破壊した。これまで見てきた受験者の中で一番早かった。
彼が会場から去っても、ざわめきが止まる事はない。
そしてオニキスの番号が呼ばれる。
(じゃあ俺は一発で壊してやるよ)
演習場に出ると、試験官は嫌悪感丸出しの顔でこちらを見てくる。相変わらず嫌われているようだ。
試験官が物体を生成すると、隣で試験を受けてる子は困惑している。
明らかに俺の目の前の物体だけ込められている魔力の質も量もおかしい。
(観客達は気づかないか、まあ、このくらいのハンデがちょうどいいか)
スタートの合図が鳴り、横にあったタイマーが動き始める。あれが試験時間らしい。
オニキスは体の前に魔力で模様を描き始める。
魔法とは、この魔力でできた図形の組み合わせで発動する事ができる。
例えば、今オニキスが描いた模様は魔力をエネルギーに変換する図形の組み合わせ、そしてそれに次にそのエネルギーを対象にぶつける図形を組み合わせる。
この時現れる幾何学模様を魔法陣と呼ぶ。
図形のような記号を使って、数式を作るイメージだ。
その黒い魔法陣からはバチバチと音をたて、地面が少し揺れてしまう。
オニキスの周りに黒い光が大量に漂うのを見て、
勇者以上の喧騒が待機場で起こる、軽いパニックになっているようだ。
オニキスの前に黒い大きな玉が現れ、物体を目指し、地面を抉りながら飛んでいく。
物体に当たると爆発し、残骸が足元まで飛んでくる。
(よし!一発)
オニキスがガッツポーズすると、試験官は絶望の表情を浮かべている。
試験時間を大いに余らせたオニキスは周りの受験生を見る。 オニキスが気になってなかなかうまく行ってないらしい。
(ごめんね...頑張れ!)
時間が終わり次の部屋へ案内される。歩きながらポッケから回復薬を取り出し飲み干す。
(また待機場)
案内された場所にはもう勇者はいなかった、どうやら次の試験に行ったようだ。
少し待つと前の試験を終えた人が入ってくる。
当然のようにオニキスの周りから人がいなくなり、ひそひそと話す声が聞こえる。
(さっき迷惑かけた受験生に謝ろうと思ったけど、いいか)
しばらく目を閉じて休む事にした。
「おい!」
(やべ!寝てたか?)
気がつけば目の前に大柄な男が立っていた。
「魔族がこんな所に何をしに来たんだ!」
男が怒鳴りつける。
「まあ、落ち着いてよ..俺は魔族じゃないよ?」
「ああ?」
その男は今にもオニキスに襲い掛かりそうだ。
オニキスが立ち上がりその男の肩に手を添える。
すると、先程まで怒りに震えていた彼の肩が落ち着きを取り戻した。
「ああ、そうだな...すまなかった」
その男から綺麗さっぱり怒気が消えてしまう。
「こちらこそ、起こしてくれてありがとね」
その場面を見ていた数人は恐怖した。
彼らにはオニキスが指先一本で人を操る悪魔に見えていた.....