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LAST GAME〜楽しいゲームの世界に転生して〜  作者: あき
狂気のデスマッチ編
69/86

69.虹の王

 ガーネットが悪魔の取引をしていた、同時刻。

 月の光の届かない漆黒の森を歩く者がいた。

 黒く艶やかな髪を靡かせながら歩く女。

 その女を黒い光の粒子が照らしている。

「一、二、一、二、一、二」

 まるで運動会の行進のような掛け声を発しながら彼女は歩く。

「一、二、一、二、一、二」


 彼女の後ろを着いてくる足音が無数。

 暗闇で姿は見えないが、その足音だけでもかなりの数だと分かる。

 彼女のかけ声とは全く揃っていない、その音の群れは明らかに人の足音ではなかった。


「一、二、一、二、ぜんたーい、止まれ」


 彼女が止まると、足音も止まり、辺りに静寂が訪れる。

 そのまま1、2歩、彼女が足を進めると、目の前に大きな穴が現れる。

 穴の底には大規模な銀色の封印。


「じゃあみんな、しばらくここで待機」

 そう言って、彼女は自分の服の襟を引っ張り、その胸元をさらけ出す。


 そこには綺麗な谷間と、真っ黒な石。

 

 彼女がその石に触れると、その石の色が抜け、透明になった。


 そんな石と呼応し、彼女と髪の毛の色が変わる。

 赤青黄、白、黒、様々な色の混じった虹色の髪に。


「合図するから、それまで大人しくしててね」

 彼女が中指と親指を弾き音を鳴らすと、背後にいたおびただしい数の、多種多様なモンスター達が一瞬で姿を消した。



ーーーーーーーーー


 翌朝、シルバー、メーガン、エメリア、タンザー、アガットは、封魔の勇者、ディアナと一緒に封印の周りをパトロールしていた。


 シルバー、タンザーの前衛が先導し、エメリアとメーガン、ディアナが最後尾だ。


「ディアナさん、結界に変わりはありませんか?」

 エメリアが周りへの警戒は解かずに、話しかける。

「はい....モンスター、一、二匹がちょっかいを出していましたが、他には何もありません」

「そうですか....」

 エメリアが真剣に呟く。

「モンスターといえば、今日は1匹も見かけませんね」

 アガットが後ろを振り返って言う。

「うちのクラスメイト達が全部狩り尽くしてしまった....は流石にないか」

 タンザーは真剣な様子で顎に手を当て頭を悩ませている。


「あ、あの...皆さんはどうしてここまで協力してくれるんですか?」

 ディアナが申し訳なさそうな顔で申告する。


「....それは、、もし、邪神が復活したりしたら、この国、いや、世界が危ないですし.....」

 アガットが答える。

「でも、貴方達はまだ子供じゃないですか、大人に任せて逃げた方がいいんじゃ...」


「逃げませんよ、俺は勇者だ」

 短く、簡潔に、シルバーが答え、その答えに、ディアナとメーガンは、悲しそうな顔で押し黙る。


 少し悪くなってしまった空気を察し、エメリアが口を開く。

「ディアナさんも、邪神と闘った当時は10代だったと聞きましたけど....貴方はなんで邪神と闘ったんですか?」

「え....」

「あ、言いにくいなら、大丈夫ですよ」

「いや、そうね、ちょっと言いにくいんだけど.....」

 止まった言葉の続きを、シルバー達は固唾の飲んで待つ。


「復讐よ」

 そう言って、ディアナは懐かしげに笑った。

「邪神が暴れ回って、友人がちょっと、ね、」

「ふく、しゅう....」

 エメリアが呟く。

「やっぱり、幻滅した?」

 ディアナがエメリアに笑いかける。

「い、いえ、そうじゃなくて....」

 いつも毅然としているエメリアの動揺に、パーティーメンバー達も少し困惑していた。

 そんな周りの目線に耐え切れず、ポロポロと言葉を紡ぎ出す。

「私も、魔王にお父さんを殺されて、復讐しようと思ってました」

「過去形って事は、今は?」

「その、昔言われたんです、復讐なんて楽しくなさそうなのを人生の目標にするなって、人生短いから、そんな事の為に時間使うのはもったいないから、俺と遊ぼって」

「ふふふっ、面白い人ね」

 ディアナが花のように笑う。

 一方、ディアナとエメリア以外の4人は、オニキスだな、と心の中で呟いた。


「でも、そうね、私もいっその事、復讐だけを目的にして闘ってたら、こんな事にはならなかったかもしれないわね........」

 ディアナは自嘲的な笑みを浮かべ、遠い昔に思いを馳せる。

「復讐の為に戦ってたはずなのに、いつの間にか世界の救世主になってて........その期待は私には重すぎた.....だからさっさと終わらせる為に、封印して自滅なんて無責任な結果になってしまった、ごめんなさいね」


 ディアナの告白は、シルバー達のパーティーに、重い何かを残していった。

 彼らがなろうとしている英雄とは、そうゆう事なのだ。



 分不相応な望みの結末を、彼らは知った。



「あ、でも....」

 ディアナがエメリアに向けて話しかける。


「初めて邪神をぶん殴った時は、凄く気持ちよかった」

 

 そう言って笑うディアナの顔は、誰が見ても分かる、彼女の心の底からの笑顔だった。


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