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LAST GAME〜楽しいゲームの世界に転生して〜  作者: あき
狂気のデスマッチ編
66/86

66.前夜祭(3)

 少し大きなテーブルを囲むように、オニキス、アミィ、クレイ、ガーネット、アシュリーが座る。

 そして、目の前に1枚ずつカードが配られていく。

「やっぱ最初はババ抜きだな」

 ワクワク顔のオニキスがカードを配る。

「罰ゲームありにしようぜ」

 オニキスがそんな事を言うと、クレイの肩が跳ね、突然落ち着きがなくなり、ソワソワとし始めた。

「この前、クレイとかと遊んだ時はさぁー」

「ちょっ!」

「1日女性用の下着で学校に来るって罰ゲームでやったんだよ」


「「え....」」

「.........」

 オニキスの突然の爆弾発言に、女性陣は絶句している。オニキス大好きなアシュリーでさえ、オニキスに疑念の目を向けるほどに。


 そんな周りの反応など気にせず受け流し、オニキスはカードを配り終えた。


「それで、誰が、罰ゲームを受けていたんですか?」

 アシュリーがおずおずとオニキスに質問する。


「それは教えない方が面白いでしょ」

「...........」

「俺か、クレイか、タンザーかシルバー、誰かがあの時Tバック履いてたなんて知ったらみんなびっくりするだろうなぁー」

 オニキスは口を抑え、腹の底から出そうになる大きな笑いを必死に抑える。

「...........」

「クッ、クッ、はぁー、おもしろ」


 アミィがチラっとクレイを見ると、彼は自分の持つカードの内容を、穴が空くほど見つめていた。


「.....それで、罰ゲームはなんですか」

 アミィも目の前に置かれていた手札を確認する。

「うーん」

 オニキスは何もない空間に腕を突っ込み、掻き回すようにぐるぐると腕を回す。

 すると、何かに気づいたように目を見開き、次の瞬間にはゲスの笑みに変わっていた。

 腕を空間から引き抜くと、そこには黒い液体がパンパンに詰まった一升瓶が握られていた。

「これは、昔、水をワインに変える魔法の実験をしてた時の失敗作、甘くて苦い、しょっぱくて辛い、鼻をつきぬける爽快感とクラクラするほどの気持ち悪さが同居する奇跡の水」

 禍々しいオーラを放つそれを、テーブルの中心に置くと、部屋のあちこちから唾を飲み込む音が聞こえた。


「負けたらこれをクイッといって貰おうか、大丈夫、ちゃんと人数分の解毒剤もあるから」



ーーーーーー


 それは、この世に顕現した地獄だと錯覚するほど、醜い光景だった。


 白目を剥き床に転がるクレイ、ピクリともせずにテーブルに突っ伏しているガーネット、口から液体を垂らしながら壁倒立するアシュリー。

 

 今だ意識を残しているのは、アミィと、机を挟んだ反対側にいるオニキス。

「やっぱり、残ったのはアミィか」

「トランプで負けた事ないので」

「へぇ、その涼しい顔がどうなるのか、楽しみだよ」

 

 アミィの持つ札は2枚、オニキスの持つ札はハートの2の1枚だけ。

 つまり、アミィの持つ札のどちらかがジョーカーでどちらかが2の数字を持つカードだ。


 オニキスがアミィの札に手を伸ばす。

 右と左2つのカードを、彼の手が行ったり来たり.....

 アミィはそれを全く表情を動かさず見ていた。


 オニキスは彼女の表情の変化を見逃さないよう、少し魔力の孕んだ目で見つめる。

 すると、オニキスの手が右のカードに近づいた時、アミィの眼球が少し震えるのが見えた。

(動揺?アミィが?ならブラフか?いや、あんな小刻みに眼球を震わせるなんてできるのか?)


 そのまま、右の札に手をかける、すると、アミィの額に少し汗が滲むのが見えた。

(いや、これは本能、体の機能だ、寒ければ体が震えるの同じような条件反射、いくら頭が良くてもどうにもならない分野だ)


(つまり、これがアミィの引かれたく無い札、これが当たりだ)

 オニキスはそのまま右の札を引く。


 彼が札を確認すると、それは、ジョーカーの札、ハズレだった。

「はぇ?」


 呆然とアミィをみる。

 彼女は涼しげな顔でオニキスを見ていた、その額にはもう汗の1滴も無い。


「お前、好きなタイミングで汗かけるのか?」

「心拍数上げただけです、簡単ですよ?」

「へぇ、そう」

(女優かよぉ....)

 オニキスは内心の動揺を隠すように、忙しなく手の中にある2つの札をシャッフルする。


「アミィ...自分の体を完璧に操れるのはお前だけじゃねぇよ」

 アミィは目の前の男の内側に魔力が渦巻くのを感じ取った、しかし、目には見えない。

「魔法はずるじゃないですか?」

「なんの事?」

 オニキスから魔力の気配が消える。

「まあいいです、勝てませんよ、貴方じゃ」


 オニキスは2枚の札を前に掲げる。


 アミィが札に手を伸ばす。


 その手がアミィから見て右の札に向かうと、オニキスの顔が強ばり、唇が震える。

 ただでさえ白い肌を一層白く、唇も青くなったオニキスを見て、アミィは少し、目を細めた。


 そして左の札へ。

 するとオニキスの表情が安堵に染る。

 震えも止まり、力も抜け、少し顔色も良くなる。


「私に心理戦を仕掛けるなんて」

 アミィはそう呟くとニヤリと、挑発的な笑みを浮かべた。


 普段は無表情のアミィの笑みを見てオニキスは自分の失策を悟る。

 表情管理でアミィを出し抜くなら、右と左の札、どちらも同じ顔をするべきだった。

 下手なブラフをかけたせいで中途半端な心理戦になってしまった。

 人の心理を研究するアミィにそれは明らかな墓穴

 

「オニキスさんって、相手に嫌な事されたら、同じ様な事をしてやり返すのが好きでしょう?」

 ポツポツとアミィが呟く。

「そして貴方は裏の裏はかかない、嘘は最小限、嘘が得意である事は確かなのに。

 罪悪感では無いでしょう、嘘をついて痛い目を見た経験したあたりが妥当でしょうか...」

 そんな事を言いながら平然とアミィは右、数字の札を引き抜いた。


「クソ!」

 オニキスは糸の切れた人形のように項垂れ、悔しそうにアミィを睨みつける。

「俺のプロファイリングは終わったって訳か......」

「ーいいえ...正直貴方の精神構造はとても難解です」


 アミィはカードをテーブルに置き、隣の紅茶のカップに口をつけ、静かにオニキスを見据えた。

「個人主義的な言動をしながら基本全体主義、快楽主義でありながら自己犠牲を厭わない。

 幼稚なフリをした大人のような、そんな違和感があります」


 自問自答しながら性格を把握していくその言葉に、オニキスはどんどんと自分の首を絞めていくような感覚を味わう。


「まるで詐欺師が捕まって、生まれ変わったみたいですね」

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