64.前夜祭
メーガンと別れたオニキスは、アミィの部屋へ来ていた。
部屋は昨日のように魔法陣で散らかってる、なんて事はなく、綺麗に片付いていた。
「あれ?綺麗な部屋じゃん」
アミィのベットに遠慮なく寝っ転がるオニキスが、机でお茶を入れているアミィに話しかける。
「部屋を片付ける為に作った魔法が昨日の魔法ですから」
「ーー」
最初はその言葉の意味がわからなかったがは少し考えその意味に気づく。
王都にあるアミィの部屋。
そこはアミィの研究資料や、本の山でとっちらかっていた。
全ては研究のための部屋だ。
アミィはその散らばった本を1つの本に纏めようと考えたのだった、それがアミィが魔法で人の脳を再現するようになったきっかけであった。
大量のデータを纏める魔法、そんな魔法がどうして脳になったのかオニキスには分からなかったが、前世のAIを思い浮かべ、あの部屋が片付きそうだと何となく感じた。
お茶を入れ終わったアミィがオニキスに手渡し、オニキスの隣に座る。
「それで、今日はどうしたんですか?」
「......マナが法律違反になるんじゃないかって、マナに聞いたんだけど...」
「その心配はありませんよ」
「え、そうなの?」
「ええ、治安維持部隊にも、騎士にも、弁護士にも、宮廷魔法使いにも、法務省にも、元老院にも、貴族にも、王にも、この魔法を完全に理解する事なんてできませんよ、分かってるのは私だけ、故に、法廷では私に誰も勝てません」
アミィが首にかけた宝石を眺めながら答える。
「そっか、一安心だ...じゃあ皆に言ってもいいの?俺の剣の事とかさ」
「それはどうですかね....」
「えぇ?」
「強い魔法が込められた武器は、それだけで問題の種ですから」
「ーーーー?」
オニキスは考えもしなかった問題について思考する。
「精霊が宿った武器が一国が持つ財産並に値がついた事もあります」
悩むオニキスにむけ、アミィがサラッとヒントをだす。
(うわぁ、金絡みの問題とか想像したくねぇな)
「強い魔法や精霊を宿すにはその武器にもそれなりの器が求められます」
アミィが淡々と言葉を紡ぐ。
「強い魔法を刻むにはもっと強い武器でなければ器が耐え切れずに壊れます、精霊もそうです......」
「.....」
オニキスの頭にあの剣の製作者の顔が浮かぶ。
「.....クレイさんは、何者ですか?」
ここ、ルミナリエ島はリゾートとしても有名だが、魔法を込めることのできる宝石の名産地としてもまた有名であった。
宝石はその質が高ければ高いほど、多くの魔法を刻むことが出来る、アミィがこの島で人工知能を完成させたのはこの島で器として完璧な宝石を仕入れる事に成功したからであった、引き換えにに多くの研究資金を失って。
この島は魔法使いに必須のアイテムが安く買える街。
ここを試験会場に選んだ人にはそんな思惑もあったのだろう。
アミィが首に掛けた大きな宝石を持ち上げ、怪しい笑みを浮かべる。
「これに匹敵する器を人の手で作るなんて...」
沸き立つ知識欲により、アミィは凶悪な笑みが抑えられない。
見る人が見ればゾッとするようなその表情を、オニキスはまるでアイドルを見る様に、微笑ましげに、羨むように、誇らしげに、期待するように、見つめていた。
(こうゆう感情を後方彼氏面って言うのかな)
「本人に聞けばいいよ、ちょうど皆呼ぼうと思ってたんだ」
ーーーーーーーー
オニキスとアミィがたわいもない会話でケラケラと笑っていると、ドアをノックする音が部屋に響く。
アミィに招かれ最初に部屋に来たのは、長い茶髪を元気な犬の尻尾のように揺らしながら、満面の笑顔でオニキスに近づく女の子、アシュリーだ。
顔にはしっかり、それでいてナチュラルなメイク施し、肩を剥き出しにした挑発的な服をきていることからその高い気合いが伺える。
「おはようございまーす!」
彼女は明るく挨拶しながらオニキスの横たわるベットへダイブしオニキスに抱きついた。
「グッ、おも、、おはよ」
アシュリーの予想外の攻撃に少し変な声が出るが、すぐにいつもの飄々とした顔に戻る。
人のベッドではしゃぐ2人をアミィは侮蔑の目で見下ろす。
「まだ、操る魔法解いてないんですか?」
「いや、解いたけど...操られた時の記憶は残ってるから...」
侮蔑の目を受け、気まずそうに頬をかきながらオニキスは答えた。
するとコンコンとドアがノックされる。
入ってきたのガーネットだ。
「おはようございます、今日は何をするんですか?」
入ってくるなり本題に入るガーネット。
「トランプ大会」
「え?」
オニキスの答えにガーネットが唖然としている、もっと真面目な予定だとでも思っていたのだろうか。
そんな彼女をおいて、また、部屋がドンドンと乱雑なノックの音をたてた。




