60.いざ!聖剣越え
オニキスは両手で剣を抱え、その透明な宝石に目を向け、集中を始める。
気がつくと、真っ白な空間にいた。
ここはオニキスの持つ宝石の中、この世界ではエディタと呼ばれる領域に、オニキスは入る。
ー(オニキスさん聞こえますか)
オニキスの脳にアミィの声が届く。
「聞こえるよー」
ー(貴方の脳に直接魔法陣の情報を送ります、私の指示通りに...と言いたい所ですが、私はまだ黒魔力の特性について正確に把握できてません、気になるところがあったら直してください)
「オーケー.....」
オニキスのその不服そうな返事に、アミィは少し眉を顰める。
ー(何か懸念点でもありますか?)
「いや?アミィにもちゃんとメリットがあって良かったよ」
ー(ふふっ、私が無償でオニキスさんの手伝いをすると思ってたんですね)
「フン!アミィのバカ!」
ー(遊んでないで行きますよ)
「分かった」
オニキスの頭に大量の情報がなだれ込む。
「うっ、アミィ?1工程づつ送ってよ...」
ー(これで1工程です)
「マジか」
ーーーーーーーーー
「はぁ、はぁ」
膝に手を付き、肩で息をするオニキス。
その周りには黒いインクで描かれた魔法陣が所狭しと浮かんでいる。
それはまるで、本や資料のばら撒かれた部屋、アミィの部屋を思い出させれる。
「やっと....終わった....」
ー(お疲れ様でした、帰ってきてください)
オニキスの意識が引き戻され、アミィの部屋に戻ってくる。
「後は魔力を流しながら、識別コードを呼んでください」
魔法陣を作る際、アミィの人工知能と区別できるよう、この魔法に名前を付けた。
ちなみにアミィの人工知能の名前はアイ、AIから取ったらしい。
そしてオニキスは、
「マナ」
アミィが愛の音読みなら、オニキスは訓読みだ。
名前を呼ぶと宝石に刻まれた黒い魔法陣が光を帯び始める。
【はい、どうしましたか?、ご主人様】
抑揚がなく感情の見えない平坦な声、しかし、イントネーションに違和感はない、少しアミィに似た声でマナが返事をした。
「アミィ、この子って何ができるの?」
「とりあえず、学園の図書館にある、あらゆる本と、学園で閲覧出来る論文は全て覚えさせました、彼女が覚えてる魔法なら使えるはずです」
「マジか、ちょっと行ってくる、ありがとうアミィ、お礼は後でするからー」
オニキスは剣を抱えて部屋から出て行て行った、逸る気持ちを抑えられず、アミィへの感謝はおざなりになっていたが、彼女に気にする様子は無かった。
ーーーーーー
外はもう完全に日が落ちており、森の中は真っ暗だった。
「マナ、暗視の魔法使える?」
【はい、分かりました、私に魔力をください】
「おーけー」
オニキスが宝石に魔力を流すと、その魔力が勝手に動き始め魔法陣を形作っていく。
「自動で魔法が使える....ゲームやってるときと同じ感覚だ」
次第に視界が晴れ、まるで昼の様に森の中を見渡せるようになった。
「索敵できる?」
【はい、しかし相手にも位置がバレてまいます】
「いいよ」
剣から黒い波動が発せられ、森を駆けた。
そして、オニキスの頭に森の情報が入ってくる。
「ははは、すごい集まってくる」
【北東方向から来ます、数は5】
マナの言葉と同時、木の影が狼のようなモンスターが襲いかかる。
オニキスは剣に魔力を込め......
(ん?)
首を傾げた。
剣に込めた魔力に呼応するように、オニキスの右腕が震え始める。
【ご主人様?】
狼の牙はオニキスに届かなかった、剣から発せられた黒いバリアによって。
(勝手にバリアが...マナか? ちょっと怖いから勝手に動かないで欲しいんだけど....)
「ありがとうマナ、なんか右腕に違和感がある、調べてくれ」
【はい】
「よし、マナ、バリアはもう解いていい」
【はい、分かりました】
今度こそ狼が襲いかかる、オニキスは切るというよりぶん殴る様に、剣を振る。
すると、スパスパと狼が切れていく。
「いい切れ味だ、重さもちょうどいい、クレイ、ちょっと怖くなるな」
狼と戦闘していると、空から蝙蝠のようなモンスターか襲いかかる。
「マナ、落ち落とせ」
【はい】
マナから黒い矢が数本放たれ、正確にそのモンスターを貫いた。
「クレイ!越えたぞ!聖剣を越える武器がここにあるぞ!」
オニキスが笑いながら、残りのモンスターを屠っていく。
ーーーーーーー
「...オニー?」
丘の上、風に乗って感じる威圧感にエメリアは目を顰める。
「どうしましたか?」
そんな様子に目敏く気づいたアガットが、エメリアに話しかける。
「いや、なんでもない」
「そうですか...それにしても手がかり1つ見つかりませんねー、本当に封印にちょっかいかけてる人なんているんですかね?」
エメリアとアガットは崖の下を覗く。
山に開いた大きな穴、その奥に輝く銀色の光でできた大きなドーム。
風はその穴に吹き込み、鳴動する。
それはまるで大きなモンスターの鳴き声の様だった。




