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6.ゲームスタート

 あれから6年とちょっとして。

 ある男女二人組がダンジョンと呼ばれるモンスターの集合住宅へ挑んでいた。


 その男性は黒い光を身に纏いながら、モンスターを安っぽい剣で次々と斬り伏せていく。

 女性は身の前に若葉色の幾何学模様を浮かび上がらせ、モンスターを爆風で蹴散らしていく。


 まるで無双ゲーの様だ。


 2人は一度も止まることなく突き当たりに到達する。

「え?!もうステージクリア?余裕じゃん」

「そうね、副作用は大丈夫?」

「うーんちょっと痛いかな」

「分かった」


 そう言って女の子は男の子に抱きつく。

「回復してくれんのはありがたいけどさぁ、いちいち抱きつく必要ないよね」

「オニーの魔力は特殊なの!これじゃないとできないの!」

 

 女の子から出た優しい光がその部屋を包み込んだ。



 ダンジョンから出て人通りの多い道を歩くと、群衆は2人を見て大きく道を開ける。


 原因は2人の容姿にあった。


 女性の方はまるで童話から飛び出してきた王子様のような雰囲気を纏った女性だった。

 高い背丈にしなやかな体つき、歩き方から溢れる気品が王子様感を増幅させる。

 肩まで伸びた髪は風になびいても乱れず、絹のような艶を持ち、前髪から覗く切れ長の瞳は、優しさと凛々しさを絶妙に兼ね備え、男女問わず魅了する。


 男性の方もまた、その存在感は圧倒的で、ただ立っているだけで場を支配するカリスマ性がある。

 彫刻のように整った顔立ちは端正で、その瞳は鋭く冷静だ、少し長い真っ黒な髪と白い肌、それに少し赤い唇がゾッとするような色気を醸し出し、その真っ黒な目に観衆の視線が吸い込まれていく。


 街の人の半分位が彼らを姉妹と勘違いしたままになっており、その黒い子が男だと気づいている人からはアンドロギュノスと呼ばれ更に恐れられている。



「エメリア姉ちゃんは相変わらずモテモテだね」

「オニーの顔が怖いからみんな避けてるだけでしょ」

「え⁈俺はどっちかというと可愛い方でしょ!」


 しばらく歩き続けると大きく、派手な建物が現れる。

 中に入るとその広い部屋に武装した人達がいる。

 ここはハンターギルドと呼ばれ、モンスターを倒してくれるハンターのサポートと行う施設である。

  ダンジョンに入るのにはここの許可がいるし、ダンジョンで何をしたかも報告書に書かなければならない。


 そこで2人で報告書を書いていると、女の子のパーティが、複数の男に言い寄られている場面を発見する。

 

 オニキスはうきうきしながらそこに向かった。


 オニキスが、ギルドに来た目的はモンスターと戦って実戦を積むこと、そしてもう一つ、地域の信頼を獲得することである。


(ここであの子を助ければ、きっと好感度アップだ)


 気がつけばヒートアップして男が武器に手をかけようとしている。

 オニキスは咄嗟に前に出ようとするが、その前に背後で魔法の気配がし、気がつけばエメリアがその男から武器を奪っていた。


「今、報告書を書いてるの、静かにしてくれる?」

 エメリアは不機嫌さを隠さず、奪った武器を丁寧に返した。

(まるで王子様だ....俺があの女の子だったら絶対惚れちゃうね)

エメリアが踵を返し帰ってくる。


「俺の手柄取らないでよ」

「そんな下心持ってる人には任せられないでしょ、てか黒魔力が露見したらもっとめんどくさい事になるよ?」

 エメリアはオニキスの文句もひらりと躱わし、報告書を書きに戻る。

 オニキスはぐうの音も出ずにエメリアについていく。


 報告書を書き終え帰路に着く。


 2人でわいわいしていると、突然背後から声をかけられる。

「あの!」

 振り向くと宇宙のような藍色の髪を持つ女の子がいた。なんとなく小動物のような可愛らしい子だ。

(同い年くらいかな?)

「助けてくれてありがとうございました」

「ああ、さっきの子か、そっちは?怪我は無い?」

「はい!大丈夫です!」

「よかった」

 エメリアとその子の会話が途切れ、沈黙が訪れる。

「じゃ、じゃあ気をつけてね」

 エメリアが去ろうとするが、まだその子は話したそうにしている。

「俺の名前はオニキス、隣はエメリア、そっちは?」

「アガットです!」

「またね、アガットちゃん」

「はい!」

 そう言って俺らは別れた。


「さっきの子気に入ったの?」

「アガットちゃんね、覚えてあげなよ」

「気に入ったんだ、ふーん」

 エメリアは不機嫌そうに言う。

(空気読んだだけなのに...)


 そしてようやく2人はベリルの屋敷につく。


 中ではベリルさんが夕食の準備をしていた。

「おかえり、今日はたくさん精がつくものを用意したわ」


 3人で夕食を囲む。


「明日試験ね、緊張してる?」

「いいえ、ベリルさんが鍛えてくれたんですから、不安はありません」

「そう、保険の用意もしておいたから、頑張ってね、貴方達なら大丈夫よ」

「ありがとうございます」

 ベリルさんが優しく微笑む。


 オニキスは寝支度を済ませて、ベットに寝転がる。 ついに明日、ゲームが始まる。

(まだ本編が始まって無いのに、ここまでやり込んだゲームは初めてだ、ああ、楽しみだなぁ)

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