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LAST GAME〜楽しいゲームの世界に転生して〜  作者: あき
狂気のデスマッチ編
56/86

56.恐王 ルガード・モルゲン

 広々とした大きな部屋に、豪華絢爛な装飾、豪勢な食事。

 ここで王が誕生した事を祝うパーティが行われていた。

 

 会場にいるのは派手な衣装に身を包んだ貴族。

 しかし、彼等は物語で語られるような煌びやかな貴族ではなかった、豪勢な食事を喰らい、酒を呷る、彼等にはマナーなどない。


 食べカスはそこらじゅうに落ち、皆口に物が入った状態で喋っている。

 

 そんな彼等を幼き日のガーネットは1段高い場所から見下ろしていた。

 まだ、あどけなさを残し、髪の毛も真っ赤だった頃のガーネットは不快感を表に出さぬように、必死に表情を押し殺していた。

(この国にこんな贅沢するお金なんて無いのに...)


「しっかり見ておけよ、ガーネット、あれが今からお父さんがぶっ壊す奴らの顔だ」

 隣に座っていた父のが私の頭を撫でる。

 真っ赤な髪に周りを見下す目、不敵な笑み。

 まだ30にも満たない新米の王だが、充分過ぎる程、王の風格を纏っていた。

 そんな王の言葉に驚き、周りに聞かれていないか会場を見渡す。

 しかし、会場の貴族達は王の事になんて目もくれず、目の前の食事と酒、他の貴族達との会話に夢中になっている。

「ルガード様、ガーネットの前でそんなはしたない言葉はやめてください」

 父の逆から、母が優しく髪を撫でた。

 母は長い黒髪を後ろで纏めた美しい女性だ。その目には父と似た決意に満ちた覚悟が宿っていた。

 私はそんな母の目が好きだった。

「そうだな.....ガーネット、私は民のためにこの国に変革をもたらす、お前は私だけ見ていろ」

 父が清廉な顔で私に笑いかけた。



ーーーー

 ヴァルムシアは、よく言えば伝統を重んじる国だ。

 悪く言えば時代遅れの国。

 

 中身の無い儀式や法律を、昔からこうだったからとダラダラと続け、そんな制度は意味が無い、変えるべきだと進言した改革派や若者は伝統を軽んじている者として弾圧されていた。

 結果、特定の貴族が大きな力を持ち政治、経済を牛耳った。

 

 そんな停滞している国が周りの国についていける訳もなく、国力はどんどん落ちていく。

 民の生活はどんどん苦しくなっていく、しかし貴族は目もくれずに贅沢三昧。


 それがこの国、ヴァルムシアの現状だった。

 そんな国を変えるため、王になったのが私の父、まだ恐皇と呼ばれる前のルガードだった。


 父は志を同じくした新興貴族を纏め、国の腐敗にメスを入れ始めた。

 ー民の為にー

 そんなスローガンを掲げ、国と戦う新たな王に、国民も大きな期待を寄せていた。


 父の変革は順調に進んでいた。

 あの事件が起こるまでは。


 きっかけは母が新たな子を産んだ事だった。

 私の妹、ルビー。

 私も父も、そして母も妹の誕生を喜んでいた。

 しかし、それは私達の家族だけだった。


 この国には男しか王位を継げないという時代遅れの法がまだ残っていたからだ。

 しかもルガード王は母しか妻を作らなかった、国と戦う王だ、妻にする女性もしっかりと見定めなければならなかったし、それに、母を何よりも愛していたからだ。


 そして、男児を産めなかった母は、多くの誹謗中傷に晒された。

 父を嫌う貴族達はもちろん、父が救うと決めていた国民達からも酷い罵倒の言葉を浴びた。

 そして、父の味方の新興貴族達からも、失望の声が母に届いた。

ー産まれたのが女とは、やはり王妃の器じゃないなあれは

ーなぜ王はあんな女を....この国の未来が掛かっているというのに...

ー俺たちの税金で生きてるくせに、少しは役に立ってくれよ...

ー優しくて、静かで、何もできない王妃様


 私達は伝統から国民を救いたかった、しかしこの国の人々はその伝統に囚われて生きている。

 そんな事実を再確認し、私は絶望した。

 私の前では気丈に振る舞う母も、日に日に衰えていった。


「ガーネット、民を恨まないで、彼等はまだ伝統という名の鎖に繋がれているだけなの....これからの事は頼んだよ....」

 母はそう言って笑って死んだ。

(恨むな?)


ーやっと死んでくれたか

ーこれで王も新しい王妃を作るだろう

ー娘達もサッサと他国へ嫁がせればいいのに...


 母が死んでも街から聞こえるのはそんな声だった。

(お母様が死んで喜んでるような人を恨むな?)


「お父様」

 父の書室に入る。目前の父も憔悴仕切っていた。

 その顔を見て思い浮かぶのは母の死。

(お父様まで死んだら.....)

「どうした?」

 王が優しく笑いかける、気丈に振る舞うその笑顔は母によく似ていた。

「この国も、国民も、私大っ嫌い!」

 涙が溢れ、こぼれ落ち、父はそんな私を優しく抱き締める。

 父に抱かれるのはいつぶりだろうか。

 そんな父の中が心地よくて、悲しくて、だから私は言ってしまったのだ。


「全部、壊してよ、お父さん.....」


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