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LAST GAME〜楽しいゲームの世界に転生して〜  作者: あき
狂気のデスマッチ編
55/86

55.暇つぶし

「何あの行列」

 そろそろお開きかなという空気が流れていた頃、オニキスは山奥に続く人の行列を見つけた。

「あの先には封魔の勇者が張った邪神を封印した結界が見れるスポットがあるんですよ、この島の観光の目玉です」

「行きたいけど、並ぶのか...」

 オニキスの中で勇者の結界を見たいという願望と、長時間並ばなければならないという面倒くささが半々だった。

「魔法でぶっ飛んで行くか?」

「ヒッ、だ、ダメです!」

 ガーネットは何かを思い出し、恐怖に顔を歪めた。

「仕方ねぇか」

 諦めの表情でオニキス達は列の最後尾へ並んだ。



「それで?ガーネットの相談ってなに?」

 オニキスは、長い待ち時間の暇を潰すため、そんな質問をする。

「え....」

 しかし、ガーネットととしてはこんな暇つぶしのために話す軽い話ではないため、言葉に詰まる。

 そして始まる沈黙。


 その沈黙に、オニキスがイラつき始める。

 なんにも無い待ち時間、オニキスの1番嫌いな物がそれだった、それは彼の前世からの物だ、そしてこの世界に来てからもそれは変わらなかった、いや、この世界に来てからもっと酷くなっていた。

 それもそうだろう、オニキスがこの世界に来て最初につまづいた壁、黒い魔力。

 その魔力はずっと彼の体を蝕んできた。

 そうなれば自ずと、自らの持つ時間について考えるようになる。


 誰でも、1日以内にゲームをクリアしろと言われて、放置する人は居ないだろう。

 サブクエは全部無視して進む人もいるかも知れない。

 もちろんオニキスはそんな制限があってもサブクエは全部クリアする派なのだが。


 そんな考えから、オニキスは何も起こりようがないこうゆう時間が世界で1番嫌いだった。


(俺の短い寿命を無駄使いすんなよ)

 彼のイラつきは、人の顔色を伺いがちなガーネットにはすぐ伝わった。

 オニキスの姿はガーネットのトラウマを的確につついていた。

 彼女の体は緊張に強ばり、声も出せなくなる。



「あれぇ、ガーネットさまぁ、何やってるんですかぁ」

 オニキスの神経を逆撫でするような、嘲りを含んだ愉快そうな声。

 声の主はオニキスの見覚えのない、女。

 その女は幾人かの取り巻きを連れている。


「もしかしてガーネット様も邪神を見に来たんですかぁ?」

 その女はガーネットに夢中でオニキスに気づいて居ないようだ。

 オニキスがイラつきを表に出さないように必死に気配を抑えていたのも要因の1つかもしれない。

 だから彼等は気づかなかった、そこにある特大の地雷に。

「私達も邪神がみたいんですよぉ、でもこんなに並ぶなんて思ってなかったんですよぉ、なので、ガーネットさまぁ、順番譲ってくれません?」

 彼女達の集団がクスクス笑いながらそんな事を言うと、ガーネットの顔が恐怖に歪む。

 彼女達への恐怖では無い、背後で膨らむ強烈な気配に。


「君達、ガーネットの友達かい?」

 オニキスはすっと、ガーネットの影から顔を出す。

「なっ、オニキス!てめぇ、なんでこんな所にいやがる!」

 取り巻きの1人が騒ぎ立てる。

「君達、名前教えて?」

 オニキスがゴミを見るような目で問いかけると、彼女達は皆、顔を恐怖に歪めた。

「ご、ごめんなさい!」

 取り巻きの1人が逃げ出す。逃げ出した取り巻きを見てまた1人逃げ出す。

 そうして皆が逃げ出そうと走り出した。


「ちょっと待ってよ」

 しかし、オニキスの手は主犯格の女を捉える。

「ヒッ!放して!皆!待って、置いてかないでよぉぉ!」

 その女が涙を流しながら叫ぶと、周りの並んでいる観光客もなんだなんだとザワザワし始めた。

「うるさい、迷惑だろ?」

 オニキスが掴んだ手で魔法を使う。

 すると、その女から声が消える。

 女はまだ暴れ、必死に声を出そうとしているが、なんの音も出ていない。

「暴れるのもダメ」

 女の体が硬直する。

「いい子だ」

 オニキスがその女の頭を撫でる。

 その女は声も出せず、体も動かせず、涙だけが流れ続けている。

「静かにするって約束してくれるなら、声は返してあげてもいいよ」

 女急いでが頷くと、オニキスが肩を2回叩く。

「っ、はぁーはぁわう」

 女の声が戻った。

「本当は思いっきりぶん殴ってストレス発散したいけど、ここじゃ人目があるからなぁ」

「ヒッ」

「お、オニキスさん、やめてください、後で私がいくらでも殴られますから...」

「優しいねえ、ガーネット、さすがお姫様だ。しょうがないなぁ」

 オニキスがそう言うと、女は安堵したように息をはく。

「軽い罰で許すか」

 女とガーネットは絶望する。

「いい暇つぶしだ、俺と同じ気持ちを味わえ」

「や、やめてください、なんでもしますからぁ」

 女が泣き、懇願する。

「おっけー、じゃあ、俺が質問するから答えて」

 女が頷く。


「君、名前は?」

「レジーナです」

「よろしくレジーナ、君趣味はある?」

「動画鑑賞です」

「おっけー」

 オニキスが2度、レジーナの肩を叩く。すると、レジーナの視力がどんどん落ちていく。

「え....目が、あれ?何も見えない....」

「レジーナはさ、なんか将来こうなりたいみたいな物はあるの?」

「あ......ああ..なにも、見えないよぉ」

「レジーナ?」

「え?ああ、イケメンでお金持ちの人のお嫁さんになって....子供と幸せに暮らす事です」

 また、オニキスが2度、肩を叩く。

 レジーナは、頭とお腹に暖かな熱を感じた。

「とりあえず、子供が産まれない体にしとくか...てかこの国で結婚できるのって20からだよね?20になったら死ぬ魔法も掛けとこ」

 オニキスが呟く。

「あ、ああ...ああああああ」

 レジーナの目からポロポロと涙が流れる。

「やりすぎたかな?目は返してあげるか」

 オニキスがまた肩を叩く。

 レジーナの視力が戻った。

「じゃあ、帰っていいよ」

 レジーナが体の自由を取り戻す。

「や、やだぁ、死にたくなぃよぉ、子供も欲しぃよぉ」

「ガーネットなら治せるかもね」

 レジーナが救いを求める様にガーネットを見る。

「ああ...お願いします、助けて...」

 目の前の地獄絵図に、ガーネットの腰が砕け、その場にへたり込む。


「ははは、冗談だよ、冗談」

 オニキスがレジーナの顔を覗き込み笑う。

「俺がやったのは視力悪くしたり、戻したりしただけ、その他はぜーんぶ、嘘!」

「え...本当に?」

 レジーナがガーネットに尋ねる。

 慌ててガーネットがレジーナに触れ、スキャンする。

「大丈夫です、レジーナさん貴方の体に異常はありません」

 ガーネットの診断結果を聞き、レジーナが声を上げて泣き喚く。


 オニキスはそんな光景を満足そうに眺めていた。

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