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LAST GAME〜楽しいゲームの世界に転生して〜  作者: あき
狂気のデスマッチ編
54/86

54.俺の方が地雷多いよ

 オニキスとガーネットは崖を飛び越え、繁華街へ辿り着く。

 大地を蹴ったり、魔法で飛んだ体をコントロールしたのはオニキスだが、ガーネットがとても疲れたような顔をし、オニキスの顔は清々しい。


 2人は繁華街へ足を踏み入れる。

 さすがリゾート地の繁華街、その街はまるで祭りのような盛り上がりを見せていた。

 両脇に並ぶ商店からは食べ物のいい匂いが漂い、露店の店主は声を張上げ客を呼んでいる。

 どこからか聞こえる陽気な音楽も場を盛り上げ、子供が足元を駆け回っている。


 そんな楽しそうな街と対照的に、オニキスの顔が苦悶に歪む。

「オニキス...さん..?どうかしましたか?」

 ガーネットの言葉でオニキスの顔が明るさを取り戻す。

「いや、大丈夫、どこから行く?てか朝ごはん食べた?」

「いいえ、食べてません」

「よし、まずご飯からだ」

 オニキスがガーネットの手を引き、周囲の食べ歩きできるような屋台を回る。

 

 串に刺さった肉や、ソーセージ、チーズのパンに、手の平サイズのミートパイ、焼きリンゴやクッキーを2人で楽しく分け合いながら食べた。


「もうお腹いっぱい、ガーネットは?」

「私もです」

「じゃあ次はお土産買おうぜ」

 

 そう言って2人は近くの露店へ。

 キラキラと色々な色で光る宝石のアクセサリーの店だった。


 オニキスとガーネットが品を眺めていると、目の前の女性店主がチラチラとオニキスを見ている。

「これいいねぇ、お土産には向かないけど、俺用に買っちゃおうかな」

 オニキスが手に取ったのは金色チェーンに透明な宝石が付いているドロップピアス。

「そうですね、黒髪のお客様によく似合うと思います」

 すかさず、店主がオニキスに話しかける。

「ありがとう」

「そ、それに、この宝石には小規模な魔法陣を刻むことが出来きますよ」

「へぇ、気に入った、これください」

「3万オーリスです」

「え?ここには5万って書いてあるよ?」

「サービスです」

 店主がオニキスへ熱っぽい視線を向けながら答える。

「最高!ありがとう、ガーネットは?欲しいのないの?」

「いいえ、大丈夫です」

 彼女はぶっきらぼうにそう答え、オニキスの手を引き少し強引に店を離れた。



「ちょっと待って、ガーネット」

 しばらく歩いた後、そう言ってオニキスが足を止める。

 ガーネットが振り向き彼の顔を見ると、オニキスが再び苦悶の表情を浮かべ頭を抱えていた。

 

 アレクス、タンザーとの戦いから、オニキスは強化魔法の制御が上手くいっていなかった。

 特に視覚と聴覚は、強く強化したせいなのか、未だに強化されっぱなしである。

 そんな彼の聴覚が周囲の音を勝手に掻き集める。


ー「新鮮なリンゴだよ!城の厨房にも卸してるやつだ!」

ー「おいそこの坊や、触るだけなら帰んな!」

ー「そんでさ、あいつ、また修道士に酒売って怒られてさ!」


 1度周りの音に気になりだしたら、さらに、耳に入る情報はクリアになる。


ー「勇者が来てるなんて、タイミング悪いなー」


ー「へぇ〜……で、捕まったの?」

ー「まさか、逃げ足だけは早ぇんだ!」

ー「……ひとつ300オーリスって、それはちょっと……」

ー「おい!ガキ!こんな所で走り回んな!」

 

 オニキスの聴覚は今、小さな針の落ちた音すら聞き分ける程に強化されていた。


 そんな耳に入る大勢の人の声。

 町に入ってからずっと、音に攻撃されていたオニキスの脳が、大きな頭痛を引き起こしていた。


「大丈夫ですか?」

ー「魔族だけでも厄介なのに....」

 ふらついているオニキスを見てガーネットが心配そうに話しかける。


ー「もうちょいで邪神の封印が解けるのになぁー」


(邪神?)

「誰だ!」

 オニキスが不穏な独り言を言っている誰かを探す。


 オニキスが見つけたのは、虹のように様々な色で光る派手で長い髪の毛。

 チラリと見えた横顔はシュッとして美人の雰囲気の漂う女性だった。


 彼女は人混みに消えていく。


「待て!」

 オニキスの脳内に心臓の音が響き、視界がぼやけていく。


 こうして、オニキスとガーネットのデートは幕を閉じた。


ーーーーーーーー


 オニキスが目を覚ますと、先程とは打って変わって静かな広場のベンチに転がされていた。


「回復魔法....ガーネット?」

 明らかに良くなっている体調に、隣に座るガーネットへ顔を向ける。

「大丈夫ですか?」

「お前も回復魔法使えるのか....どうなってんだ?」


 回復魔法、それだけでも高い難易度を誇るこの魔法だが、完璧に使いこなすには人体の仕組みを把握する知識も必要になる。

 回復魔法が医療機器で、魔法使いは医者のようなイメージだ。

 そのような点が、この魔法が高難易度魔法と呼ばれる所以である。


(こんな能力があってなんでトップ10入りしてないんだ?)


「良かった、五感への刺激を軽減する結界を張ったので、ここでしばらくお休みしましょう」

(頭痛の原因まで分かってるのか......)

「ガーネット....まさか、俺の事スキャンしたか?」

「い、いや!してません」


 オニキスの体には、謎の生き物を埋め込んた跡や、魔石がある。

 人の体の状態を把握する回復魔法の基本、スキャンを使われたらオニキス達の非人道的な改造もバレるし、オニキスが人より魔族に近い生き物だというのもバレてしまう。


 慌てて否定するガーネットをオニキスは疑惑の目で見つめる。

「ならなんで俺の状態を把握してるんだ?」

「それは、似た症例をたまたま見た事があったからです...」


「はぁ、まあいいや、言いふらされたら魔王軍にでも入ろ」

 オニキスがそう言うと、ガーネットが驚き、混乱しているような顔をしている。

(本当に分かってないのかもな...)


「体の五感を制限する魔法は使えないの?」

「え?、つ、使えます...」

 オニキスがポッケを漁り、露店で買ったピアスを取り出す。

「これにその魔法付けて」

「え?その、教えるので自分で刻んだ方がいいんじゃないですか?自分の魔力で動かせなくなりますよ?」

「それでいい、多分俺の魔力じゃピアスが壊れる」

「あ....」

 ガーネットは思い出す、オニキスとシルバーの決闘で、オニキスの剣が壊れた時の事。



 結界内に、魔力の粒子が吹き荒れる。

 色は限りなく黒に近い赤。

 周囲の魔力が彼女の持つピアスに吸い込まれ、透明な宝石に魔法陣を刻んでいった。 

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