48.魔法世界の幽霊
真っ暗な森の中を少し進むと、少し開けた場所に出た。
そこには不自然に明るい空間があり、その中心には幾つもの幾何学模様が折り重なって出来たサークルが。
そしてその円を人が取り囲んでいる。
誰が見ても怪しいその集団に、オニキスはまるで近くのコンビニに寄るように普段通り歩いて近づき、話しかける。
「おーい、そこの黒魔術研究会ー、何やってんのー?」
声をかけた瞬間、目の前の集団がざわめき始める。
ーな?!誰だ!
ー感知の結界は?!
そんな聞き覚えのある声がオニキスに届く。
なんだか不穏な言葉を発している。
(動揺し過ぎだろ、、一気に小物臭くなったな)
オニキスが魔力を纏う。
暗闇の中に真っ黒な光がキラキラと舞う。
ーなっ?!、なんで魔族がこんな所に!
ー陣形を組め
ー皆、待って!あれはオニーよ!
エメリアの最後の言葉に、彼女達のパーティメンバーの動きが止まる。
そこに居たのは、シルバー、タンザー、エメリア、アガット、メーガンの例のつよつよパーティだ。
(全然小物じゃないわ、ごめん)
「お前らまだ黒い魔力=魔族なのか?
俺がこんなに近くにいるのに....」
オニキスが両手を上げ敵意を消すと、目の前のパーティから安堵の空気が流れた。
「オニキスか、こんな時間にどうしたんだ?」
シルバーが空間に剣を仕舞いながら、オニキスに話しかける。
「散歩してたとこ、そっちは?」
「皆で魔法の練習してた所だ」
「なんの魔法?」
「飛行魔法」
シルバーがそう言うと、ほんの一瞬オニキスの顔が苦々しいものに変わる。
オニキスの変化を見て、シルバー達も少し気まずそうな顔をしている。
ーーーーーー
試験が始まる4日前。
オニキス達は1年A組の教室で授業を受けていた時の事。
アズール先生の前には大きな魔法陣が浮かんでいる。
「この魔法は飛行魔法だ、500年前に開発されたこの魔法は、まだ作られて歴史の浅い魔法だが世界に大きな影響を与えた偉大な魔法だ、対人や対モンスター相手と戦う職に着くなら覚えておいて損のない魔法だ」
アズール先生の声は魔法で増幅され、声を張り上げていないのに、大きな教室の隅々までその声が届いてく。
オニキスはいつものように暇そうな顔でその授業を受けていた。
目の前に浮かぶ大きな魔法陣、その途方も無い情報量に多くのクラスメイトもげんなりした表情を浮かべている。
(あの魔法は脳を強化しないと使えないだろうなー)
「でもその魔法って魔族が作った魔法ですよねぇー、大丈夫なんですかー」
教室のどこからか、馬鹿にするような声が放たれ、教室中の視線がオニキスに集中する。
クスクスと笑うような声も上がっている。
その視線をオニキスはもちろん感じ取っていたが、気にせずにぼーっと先生の魔法陣を眺めている。
また、隣からメーガンがチラチラこちらを見ているのにも気づいていた。
「メーガン、お前も俺を魔族扱いするのか?
俺とは関係の無い話だ、こっちを見るな」
「っな?!....」
メーガンは怒鳴りそうになる気持ちを抑え、オニキスを睨みつける事で抗議する。
アズール先生が言葉を発した生徒を冷たい目で眺めて言う。
「お前達ももう子供じゃないんだ、自分に必要ない、又は、使いたくない、と思ったなら覚える必要は無い。
この授業が必要無いと思ったなら出なくてもいい。
だが、真面目に授業を受けてる人の邪魔だけはしないでくれ」
ーーーーーーー
シルバー達もその時の事を思い出していたのだろう、辺りには微妙な空気が流れていた。
「オニキスさん!もしかして、この島の幽霊を探しに来たんですか?」
この空気を断ち切るように、アガットが深い青色の髪の毛を揺らしながら明るい声で話しかける。
「幽霊?」
「知らないんですか?この島は幽霊が出るって結構有名なんですよ?」
「へぇー、探してみるよ」
「オニキスは幽霊を信じているのか?」
タンザーが呆れたように言う。
「信じるっていうか、居ないよりは居た方がいいでしょ?」
オニキスの言葉に、他のメンバーは首を傾げ、エメリアはやれやれといった表情を浮かべる。
「居ない方がいいですよ!怖いじゃないですか!」
アガットが抗議の声を上げる。
「じゃあ、アガットちゃんは死んだ後、無になって何も考えれなくなるのと、幽霊になって皆を驚かせながら楽しく暮らすのどっちがいい?」
「....私はイストリア教の教徒なので、死んだら天国に行きます」
「ははっ、天国か、天国もいいね。
とにかく、死の恐怖を遠ざけられるんだ、幽霊はいたほうがいい」
アガットはその言葉が理解出来なかった様で首を傾げている。
「オニー?今から幽霊探しなんて駄目だからね、眠れないならまた私が一緒に寝て上げようか?」
エメリア怖い笑顔でオニキスを見る。
「分かってるよ、おやすみ」
そう言ってオニキスは来た方へ戻って行った。




