42.浜辺の戦い、仲間の力
ボードの後ろにアシュリーを乗せ海上を滑り走る。
アシュリーの楽しそうな悲鳴にオニキスはどんどん乗せられて、スピードが上がっていく。
暫くして、魔力と体力をかなりすり減らしたオニキスが浜に帰ってくる。
その頃にはクレイの波乗りも上達しており、クレイも同時に浜へ帰ってきた。
オニキス後ろに乗っていたアシュリーを降ろし、ガーネットを見る。
(俺とガーネットが似てる?どこが?)
オニキスは全く納得していなかった、むしろ反対の性格のように思っていたからだ。
納得していない、しかしアミィの言葉だ、アミィがそう感じたのなら、何か同じ所があるのかもしれないと、切り捨てる事も出来なかった。
オニキスが考え込み、自然とオニキスとガーネットが見つめ合う形になる。
見つめられているガーネットが落ち着かないようにソワソワし始めた時。
オニキスが何かに気づいた様に顔をあげる。
「アシュリー、クレイ、お前らどれくらい戦える?」
オニキスは森を見て、静かに、真剣に呟く。
「え...」
オニキスが、誰のか分からない困惑の声を聞くのと同時に森から轟音と共に熊のような形をしたモンスターが現れる。
体長は10mと越え、低い唸り声を上げながらこちらをじっと見ている。
「オルスガル、ランクBのモンスターだ」
クレイが静かに呟く。
「1匹なら俺一人で何とかなるんだけど....」
オニキスがモンスターが出てきた森をじっと見つめる。
(守り切れるか?いや、無理だ、足でまといが多すぎる)
「皆、ガーネットの後ろに隠れろ」
「え?」
オニキスはガーネットの困惑の声を無視し、魔法で作った剣を握る。
海遊びにかなり魔力を使ったオニキスに、今になって頭痛や眠気の副作用が襲う。
「ガーネット、皆を守る事に集中しろ」
そう言ってオニキスが目の前のオルスガルに向かって疾走する。
オニキスの剣をオルスガルが受け止める。
力はオニキスがやや上、砂の足場も相まってオルスガルがジリジリの後方へ押されていく。
そんな2人の戦いを他所に、横の森からもう一体の熊のモンスター、オルスガルBがガーネット達に向かって飛び出した。
オニキスは目の前のオルスガルを蹴り飛ばし、オルスガルBへ剣を投擲する。
オニキスの剣はオルスガルBの皮に傷を付けるが、意にも介さずガーネット達へ突進する。
「はぁ!?、なんで俺を無視すんだよ!」
オニキスの叫びは届かず、その背中へオルスガルAが襲いかかる。
一方、ガーネットはオルスガルBの攻撃を魔法のバリアで防いでいた。
その大きな爪と牙が、ガーネットのバリアを削る。
「ヒッ」
アシュリーが声にならない悲鳴を放つ。
「ガーネットさん、あとどれ位持ちますか」
アミィが冷静に問う。
「今のペースなら、30分くらいです!」
「なっ!まじか」
クレイがガーネットの答えに驚きの声を上げる。
「分かりました、私が魔法で攻撃します、2分耐えてください、合図と同時にバリアを解除して下さい」
アミィが目を閉じると、足元からふわりと紫色の粒子が立ち上る。
光の粒子がバリア内に充満し、それが次第に形を帯び、それは直線や曲線、点になって組み合わさって行く。
2分経った頃、バリア内は数えきらない程多くの魔法陣がギチギチに詰め込まれていた。
「ガーネットさん」
アミィの合図でガーネットがバリアを解く。
《エクシリウム》
アミィが魔法の名を呼ぶと、フッと目の前のオルスガルBが消えた。
「まだいるぞ!数は6体!」
ガーネット達の間に流れる安堵の空気を切り裂く様に、オニキスが叫ぶ。
オニキスはオルスガルAの心臓から剣を引き抜き、ガーネットのカバーへ向かう。
森から、体長5mはある狼のようなモンスターが1体、油断しきったガーネット達の元へ飛び出す。
狼の足は速く、全員を守れる程大きなバリアを貼る余裕はガーネットにはなかった。
ガーネットが一瞬の思考を終え、狼に突進する。
その身体にバリアを纏い、狼へ殴りかかった。
アミィから見ても、へなちょこなガーネットのパンチはその狼に簡単に躱される。
そして、その狼の牙はバリアを易々と突き破り、ガーネットの右腕へ深々と突き刺さる。
この時間でオニキスは狼に追い付き、剣を振り下す。
狼はガーネットを離し逃げようとするが、ガーネットのバリアが形を変え狼に絡みつき逃がさず、オニキスの剣によって首と胴体が離れる。
「数が減った?近づいてくるぞ!数は3」
オニキスは狼から剣を引き抜き、ボロボロになった魔力剣を捨て、もう一度剣を作り直す。
森から飛び出したモンスターは、例の熊のモンスターだった。
しかし、その体は傷だらけで、今にも倒れそうな程疲弊していた。
「油断するなよ、まだいるぞ」
オニキスはオルスガルには目もくれず、ただ森を注意深く観察していた。




