38.試験と修学旅行一緒にやっちゃおう!
メーガンは急いでオニキスへ駆け寄る。
「メーガン、見ないでくれ」
オニキスがそう言うと、便器へ胃の内容物を吐き出した。
メーガンはその光景に動じることなく、オニキスの背中に手をあて魔法を使う。
「大丈夫?」
「ああ、ありがとう、少し楽になった」
オニキスの状態は直ぐにどうにかなるものではなく、メーガンは仄かな光を放ちながら治療を続ける。
オニキスは自らの体に、メーガンは治療に集中しているせいで会話が無くなり、トイレに静寂が訪れる。
「メーガン、なんか面白い話してよ」
「は?うるさい、静かにして」
「タンザーの事どう思った?」
「え?強かったとおもうけど....」
「そっか....」
また静寂。
「ごめんね....オニキス」
「何が?」
「もう少し早く止めれば良かったのに....」
「.....そんなに酷いの?俺の体」
「........」
「そっか、面白い話だな」
「何が面白いのよ!!」
メーガンが少し目に涙を貯める。
「冗談だよ、メーガンが悲しむ必要はないよ、これは俺が望んだことなんだから」
ーーーーーーーー
ようやく歩ける程まで回復したオニキスは、メーガンの手に引かれてトイレを出る。
オニキスとメーガンが手を繋いでいるのはオニキスを支える為と、魔法で回復しながら歩く為である。
2人がトイレを出ると、ちょうどオニキスを探していたエメリアと出くわす。
「オニー?」
エメリアの声を聞き、オニキスは姿勢を正す。
「なんでトイレに2人で....いや、なんでもない、元気なら良かった、じゃあね!」
後半早口になったエメリアは、そのまま早歩きで去って行く。
「ちょっ、違う、」
メーガンがエメリアを止めようとするが、聞かずに行ってしまった。
「大丈夫、姉ちゃんは、変な噂を、広めるような人じゃ、ないから」
「でも、、」
「むしろ、ラッキーだ」
「?」
ーーーーーーー
今日の授業を終えたオニキスが、メーガン、アミィとともに生徒会室へ入り、今日の業務に取り掛かる。
「オニキスさん、体調は大丈夫ですか?」
「ありがとうアミィ、大丈夫だよ」
「メーガンさん、後で検査結果教えてください」
「分かった」
「ええ....俺の許可取ってよ...」
オニキスは机の上に足を投げ出し堂々とサボり出した。
「ん?なんだろう?これ」
メーガンが1つの紙を持ち上げ、呟く。
「大型飛行船の予約?」
横から覗き見ていたアミィが、紙の内容を要約して話してくれる。
「実技試験関係じゃない?」
もうその内容を知っているオニキスが、できるだけ自然に答える。
「なるほどねぇー」
「メーガンさんは仲間は決まったんですか?」
アミィが興味なさげにメーガンへ話しかける。
「私は勇者と一緒に行くわ」
「え?俺と組まないの?」
オニキスが驚き、机から足を下ろす。
「アミィから聞いたわ、貴方達、実技試験は手を抜くんでしょ?」
「うん」
「私は1番を目指す」
「そっか...残念だけど、期待してるよ」
オニキスが屈託のない笑顔でそう答えたが、エメリアはそれが気に食わなかった。
ーーーーーーー
そして1週間後、オニキス達1年A組は、大型飛行船に乗っていた。
クラスメイト達は皆座席に座り、正面にアズール先生が立っている。
「静かに」
アズール先生の小さな声が、飛行船に響き渡り、クラスメイト達は口を紡ぐ。
「これから、実技試験の概要について説明を行う」
先生の言葉に飛行船内の空気が引き締まるが、オニキスは退屈そうに窓から、外を見下ろす。
外には真っ青な海に浮かぶ大きな島がある。
「今からお前らはある島で1週間過ごしてもらう、島の名前はルミナリエ島、リゾート地としても有名な島だが、2つの大きなダンジョンと、野生のモンスターが跋扈する山があり、ハンターにも人気の島だ」
「へー、リゾートの方は初耳だなぁ」
リゾートと聞いた瞬間、オニキスの目が輝き初め、隣のメーガンに話しかける。
「自由時間になったら一緒に遊ぼうぜ」
「うるさい、静かにして」
「お前らはその島で自由に生活してもらっていい、私たちが用意したのは宿とある腕輪だけ」
アズール先生が魔法を使う、するとクラスメイト達の頭上から腕輪が突然現れ、落ちてくる。
「その腕輪にはお前らの登録したパーティが討伐したモンスターの数やグレードを集計する機能が備わっている、実技試験の成績はその集計されたポイントによって決まる、つまり、強いモンスターを沢山倒せという事だ」
船が波のように揺れる、オニキスが外を見るといつの間にか着水しており、港のような場所に着いていた。
「何かあったら腕輪の緊急用の魔法を使ってくれ。
では、実技試験、スタートだ」
そう言ってアズール先生は呆然としているクラスメイト達を置いて船から出て行った。
ーーーーーーーー
オニキスは港から海を見渡す。その水は前世で見たどの海より透き通っていた。
「こんな綺麗な景色見ちゃうと、なんかもう人生とかどうでも良くなるよね」
「私は、なりませんね」
オニキスが振り返ると、無表情のアミィが立っていた。アミィの背後には手の加えられていない大森林が生い茂っている。
「本当にリゾートなの?ここ、俺ら意外に人いなくね?森もなんか汚ねえし」
「リゾートは反対側だそうですよ」
「そっか、とりあえずあそこに行こうよ」
「あそこ?」
「あの有名な邪神が封印されてるって所」




