タイトル未定
オニキスが深く息を吸い、集中する。
集中すると言っても、その対象は対面する相手では無く、自分。
正確には自分の魔力操作に。
オニキスの目はしっかりタンザーを捉えているが、意識は全く別の所にある。
それはタンザーも感じ取っており、剣をしっかり持ち直してから、隙だらけのオニキスに仕掛ける。
タンザーの鋭く、早い剣戟がオニキスを襲う。
オニキスはタンザーの剣を横から拳で触れ、パッシングする。
パッシングとは、相手のパンチの軌道を変える、ボクシングのディフェンスのテクニックだ。
オニキスとシルバーの力と力のぶつかり合いとは違う、技と技のぶつかり合い。
そんな、らしくない戦い方に、クラスメイト達は感嘆し、タンザーは不可解そうな顔をする。
時間が経つにつれて、タンザーの剣が鋭くなっていく。
剣の感覚を取り戻し始めているのだろう。
とうとうパッシングだけで対応出来なくなったオニキスは、右腕で剣をガードする。
「クッ!」
オニキスが苦痛に顔を歪める、化け物の攻撃を受け続けても壊れなかった右腕に、傷が入った。
同時にタンザーも驚いているようで、少し目を見開く。
「手首を切り落としたつもりだったのに...」
(はえぇな、だけど、あと少しだ)
次はオニキスからタンザーへ攻撃を仕掛ける。
この攻撃も、不可解そうな顔でタンザーは受け止める。
ここからはまた同じ流れ、にはならず、オニキスがほんの少し上回っている身体能力を押し付けるように、無理矢理距離を詰めながら戦う。
しかし、タンザーの素早い剣に、為す術もなく、オニキスの体に傷が増えていく。
「早くなってる?」
しかしタンザーの表情は晴れず、呆然とした表情で呟く。
オニキスはまたその距離を詰め、休むこと無く攻撃を続ける。
オニキスの猛攻をタンザーが防ぐ。
その拳は明らかに先程の攻撃より早くなっており、攻撃を受け止めたタンザーは、その勢いを受け止めきれずに腕が流れる。
威力も上がっているようだ。
そのまま体勢が崩れているタンザーを、オニキスが殴りつける。
(ようやく追いついたか)
魔力操作のガタガタなオニキスは、身体強化をゼロの状態から徐々に強める事で、その新たな魔力の感覚を掴もうとしていた。
徐々に、オニキスの身体能力は上がり、遂に今、タンザーの身体能力を完全に上回った。
(まだ行ける)
オニキスは纏う闇を一層濃くしながら、タンザーにまた攻撃を仕掛ける。
オニキスとタンザーの攻防が激しさを増す。オニキスの両腕には幾つもの切り傷ができ、タンザーの剣もボロボロになっていく。
「ごめんね、タンザー、復帰戦だし花を持たせようかなと思ってたんだけど....」
オニキスの纏う怪しい光は一層その輝き増していく。
(アミィ、凄いよこの体、まだ底が見えない)
今もオニキスの身体能力は強くなり続け、限界もまだ見えない。
もう、既にメーターは振り切れており、後どれくらい強くなるのか、今どのくらい強いのか、オニキスにも分からなくなっていた。
オニキスの発する威圧感に、タンザーは怖気付いた様子で少し後退する。
そんなタンザーの様子に、オニキスは少し失望の表情を浮かべる。
瞬間、オニキスの背後に魔力の気配が立ち上った。
オニキスが振り返ると、火球がオニキス目掛けて飛んで来くる。
オニキスは身に襲いかかる火球を一つ、軽々と躱すと、第2、第3と、無数の火球が現れ、また、オニキスを襲う。
「アレクス...お前、魔法の方が才能あるよ」
オニキスはその火球を避けきれないと判断し、最初の火球を右手で掴み取り、それを別の火球に投げつけて相殺する。
オニキスの身体は化け物の素材を使い改造された、それは身体が全て化け物になったと言う訳では無い、特に脳の改造は聖女の魔法を持ってしても、リスクが高すぎて手を加えられなかった。
このように、オニキスの身体は全てが変わった訳ではなく、所々に元の人間の部分が残っている。
しかし、右腕は違う、オニキスに移植された右腕で純度百パーセントの化け物で出来ている。
その真っ黒な右腕は高い魔力への耐性を持っており、ある程度の魔法なら掴み取る事が出来た。
観客はその見慣れない芸当に困惑しつつ、あれが黒魔力の力だと勝手に納得している。
オニキスは降りかかる火球を掴み取っては投げ、回避を交えながらアレクスに近付く。
アレクスは1歩先まで迫るオニキスを見て魔法を切り替える、火球から、火炎放射へ。
アレクスの放つ火炎は魔法により温度を引き上げられ、青く変色し、地面を溶かす。
しかしオニキスは歩みを止めない、身に纏う魔力を濃くしながら炎の中を突き進む。
炎の中から這い出たオニキスはまた、アレクスの鳩尾をつま先をねじ込む。
オニキスの服には煤ひとつ付いていない。
(防御力まで上がってる....)
ある程度の火傷は覚悟していたオニキスは、傷一つ無い自分の身体を見て、心の内から全能感が溢れ出てくる。
オニキスがピュアか笑顔で呟く。
「この身体、何処まで行けるのかな?」




