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LAST GAME〜楽しいゲームの世界に転生して〜  作者: あき
狂気のデスマッチ編
32/86

32.デートイベント

「あの腕を移植すればオニキスさんが死ぬ事は分かってました」

 アミィが何食わぬ顔で言い放つ。

「え?アミィ、何、言ってるの?その時言ってくれれば、魔石をオニキスに埋め込む必要なんてなかったのに....」

 メーガンは訳が分からないと言った風に呟く。

(それが答えだよ)

 オニキスは悲しげに、あるいは申し訳なさそうにしている。


「そう....私にオニキスを改造させる為にわざと言わなかったのね...」

 メーガンが呆然としながら、アミィの部屋を出ていった。


 オニキスはとりあえずメーガンを追いかけようと、立ち上がる。

「オニキスさん、すいませんでした」

「ああ、分かってる、半分以上は俺のせいだ、ごめん」


 そして1拍置いて、アミィがおずおずと語り出す。

「それと、今言う事では無いかも知れませんが....貴方の舌も治っている筈です」

 オニキスは最初、その言葉が理解出来なかった、そして少し頭を悩ませ、その意味に気づく。

「本当に?!ありがとう!」

 テンションの上がったオニキスは、アミィを引き寄せ、抱きしめる。

「ありがとう....」

 オニキスの目には涙が浮かんでいる。

「早くメーガンさんを追いかけて下さい、そして私の分も謝って置いて下さい」

「ああ、任せて」

 オニキスはアミィから離れ、部屋を走って出て行く。


 部屋に取り残されたアミィは少し名残惜しげな表情を浮かべていた。


ーーーーーー


 外はもう日が落ちており、暗くなっていた。魔法の街灯で街はライトアップされ、ディナーのお店が盛り上がっている。

 街は昼とはまた違う、静かな活気に溢れていた。

「メーガン!」

 オニキスがようやく見つけた、その特徴的な白い髪に話し掛ける。

「オニキス、私を騙して手に入れた体はどう?」

 メーガンが悲しげに笑う。

「メーガン....」

「あんたは私の事どう思ってるの?

 私は....友達だと思ってた!あんたも!アミィも!仲間だって思ってた....」

 悲しみと怒りの同居した顔でメーガンが涙を流している。

「ごめん、メーガン、ちょっとお腹空いてそれどころじゃない」

 空気の読めない、読もうともしていないオニキスがそう言い放つ。

「え?」

「ご飯食べ行こ!食べながら話そうよ」

 オニキスは呆然としているメーガンの手を強引に引き、近くにあった飲食店へ入る。



 オニキスは席に着くなり、メニューを見て片っ端から頼んで行く。

 普段食堂でバランスの良い食事をしているオニキスとは正反対のその姿に、メーガンは驚いている。

「メーガンも頼みなよ、もちろん俺が奢るからさ。

 お、これなんていいんじゃない?」

 オニキスがメニューを、指さす。

 指先にはペスカトーレと書いてあった。

「俺もちょっと食べたいから、来たら一口ちょうだい?」

 オニキスは勝手にメーガンの分も注文する。

 メーガンはオニキスの不可解な行動に、呆然としたままだ。


 最初に届いたのはチキンステーキだった。

「いただきます」

 メーガンの料理を待たずに、オニキスはそのチキンをナイフとフォークで丁寧に切り分ける。皮がパリパリと音を立てている。

 そして1つ、皿に付いているソースを絡めて、口に運ぶ。

「美味しい!」

 オニキスは涙が流しながら、一瞬でチキンを平らげた。


 いつも無表情で食事しているオニキスを知っているメーガンはその変わりように困惑している。

「そんなに、お腹空いてたの?」

「メーガンのおかげだよ....」

 オニキスは手を止めて、メーガンを涙目で、見つめ、頭を下げる。

「ありがとう」

「え?何、なんなの?何がしたいの?」

 メーガンは終始、困惑したままだ。


「メーガン、俺がこの世界で1番好きな飲み物はね、回復薬なんだよ....」

「え?」


 回復薬は、とても甘くて美味しい、オニキスがこの世界に来て、初めて口にあったのは、水と回復薬だけだった。

 しかし一般論では、回復薬は非常に評判が悪い。

 とても苦く、ケミカルな匂い、それに、回復魔法より回復量は低い。

 誰も好き好んで飲む人はいなかった....


 その評判を聞いて幼い頃のオニキスは気づく。

ーああ、おかしいのは俺の舌か....


「俺は何食べても美味しいなんて感じたこと無かったんだよ、こんなに美味しい食事は(この世界に来てから)初めてだ..」


 突然の告白にメーガンは目を見開き驚いている。

 スキャンの魔法でも分からなかったらしい。

「私は、ベロや脳にはあまり手を加えてないはずなんだけど...」

「ベロは正常だったんだよ、おかしいの身体の方」

「?!そうか....病気で味覚が変わってしまった人は確かにいたわ....」

「だからメーガンとアミィのおかげ、ありがとう」

 オニキスが更に追加される食事を頬張り、ニッコリと笑顔を浮かべる。

 そんな笑顔に絆され、メーガンも自然と嬉しくなる。

 同時に、オニキスがここれまで感じていた苦しみの一端に触れ、メーガンの目には少し涙が溜まる。


 眼前にいる幸せそうなオニキスに、メーガンが持っていた罪悪感が消え、彼の苦しみを少しでも取り除けたという達成感に置き変わっていく。

「良かった....」

 誰に向けたものか分からない言葉が、メーガンから漏れる。


「俺達は、法や道徳を犯したかもしれないけど、おかけで俺は救われたんだよ」

 オニキスは身を乗り出し、メーガンの涙を拭き取る。


 「おー、これも美味しい!メーガンも食べなよ!」

 オニキスは皿に乗った肉を1口、フォークに刺して差し出す。

 メーガンが少し恥ずかしそうに、差し出された料理を口に運ぶ。


 その味のせいか、辺りに漂う生暖かい空気のせいか、メーガンはその顔を朱に染め、微笑んだ。


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