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27.血戦(2)

 この世界に来てずっと、体に気を使って魔法を使って来た。


 スーパーカーに乗って、ずっと60kmで走っている様な感覚だ。


 1回でいいからもっと早く走りたい、たった数センチアクセルを踏むだけで、それは可能になる。


 自分が死ぬかもしれないと分かってはいても、その欲求が収まることはなかった。


 だからフルスロットルは魔王と戦うまでのお楽しみの筈だった。


ーーーーーー


 フルスロットルと言っても、それは右腕だけだ。

 だが、それだけでもオニキスの中に、強烈な爽快感が駆け巡り、自然と口元が緩む。


 魔力の轟音とオニキスの高らかな笑い声が広いダンジョンの最奥へ響き渡る。


 オニキスは化け物から放たれる無数の触手を全て右腕でガードし、振り払う。

 そのままスルスルと懐に入り込み、右腕でぶん殴り。 

 殴られた化け物は吹き飛んで行き、壁に叩きつけられる。

(どんだけ攻撃食らっても壊れないし、力も無限に溢れてくる)

「はぁー、快.....感.......」


 化け物は今の攻防で腰が引けているのか、オニキスから逃げながら魔法を編んでいく。

 黒い矢と銀色の弾丸が幾つも浮かび上がりオニキスを襲う。


「俺とシルバーの魔法?」

 迫り来る矢の雨を右腕でパッパと払い除ける。

(威力も、俺の設定そのままだ)


「お前、食った魔法が使えるのか?面白いな」

(アミィに解剖させよう)


 矢と弾丸、そして触手、全てがオニキス目掛け飛んでくる。

 咄嗟に魔法で半透明な盾を作り出す。

 ガードで手一杯のオニキスの足が遂に止まる。

(近づけないし、遠距離魔法も食われるし...厄介だなぁ)

 化け物の魔法に息継ぎは無く、魔力が切れる様子も無い。

 遂に、オニキスの盾にヒビが入る。

「化け物の癖に!頭使ってんじゃねぇ!逃げんな!」


「オニキス!」

 シルバーの声が聞こえ、オニキスが顔を向けると、シルバーの手にある聖剣が銀色の光を放っている。

 聖剣の成長が始まる。

 聖剣があの化け物を倒す為に、シルバーに魔法を授ける。

 「目を閉じろ!」

 シルバーが叫ぶ。

 

 オニキスが急いで目を瞑ると、聖剣から巨大な光が放たれるのが、瞼越しにも分かる。


 オニキスが目を開けると、化け物が目を覆い、悶えていた。

 同時に、無尽蔵の魔法の雨も止む。


「オニキス!」


 シルバーの言葉を聞いた瞬間、反射的にオニキスが化け物に向け走り出す。


 化け物とあと一歩の所まで近づいた所で、化け物が動き出し、手を突き出す。


 突き出された化け物の腕が分裂を始める前に、オニキスはその腕を手刀で叩き切る。

 

 化け物のもう片腕の攻撃は避け、胸の魔石に手を伸ばし、奪い取った。



ーーーーー


 エメリアの手当が終わり、ダンジョンを出る。


 オニキスはまだダンジョンに後ろ髪引かれているが、他のメンバーが早く帰りたがっていた。

(あいつの死体全部回収したかったけど、エメリアに見られたらなんて言われるか分かんないしな)


 オニキスがため息をつくと、アミィが近づいて来て、耳元で囁く。

「重要そうな素材は回収しました」

「いつの間に?!」

「それと、腕に色を塗っておきました」

 オニキスの右腕は元の肌色に戻っている。

「いつの間に....」


 アミィは返事もせずスタスタと歩いて下山していく。


ーーーー

 街に着くと、エメリアが小さな魔法陣を作り出し目を瞑っている。

 エメリアは遠距離で会話できる魔法で学校への報告や車の手配をしているのだ。


「じゃあ俺ちょっと用事あるからここで別れるわ、エメリアにも言っといて」

 オニキスがそう言い立ち去ろうとする。

「用事って?」

 メーガンが疲れた顔をしながら、オニキスを呼び止める。

「.....ここの地域って15歳からお酒が飲めるらしいんだよ、だから行ってくる」

「あっそ」

 メーガンが不愉快そうに返事をし、シルバーは少し羨ましそうに見ている。


 そしてアミィは理解できないといった顔で見ていた。


ーーーーーー


 オニキスが家に帰ると、不機嫌そうなベリルが待っていた。

「た、ただいま」

「オニー?何やってたのかな?」

 ベリルの声色はとても優しいが、その目は笑っていない。

「いや、散歩してました.....」

「そう?良かった、エメリアはオニーがお酒飲んでたって言ってたから、帰って来たらどうしてやろうかと考えていたのよ」

「いや!誓ってお酒なんて飲んでないよ!ほら!調べて見て」

 オニキスが両腕を広げる。ベリルはオニキスに近づき匂いを嗅ぐ。

「確かに匂いはしないわね」

 そして手を伸ばしスキャンの魔法陣を展開する。

(やべぇ!スキャンされたら腕の移植がバレる!)


「ごめんなさい!お酒飲みました!」

 オニキスがベリルに触られる前に、土下座して謝る。

「死ぬ前に、飲んでみたかったんです....」

 オニキスが声を震わせ、頭を下げる。


「そっか...私...なんて言ったらいいか....ごめんなさい」

 ベリルは涙を流しながらオニキスを抱きしめた。

(あぶねー)



 ベリルさんから解放されたオニキスが廊下を歩くと、エメリアに遭遇する。

 エメリアの顔は少し楽しそうだ。

「姉ちゃん、なんでベリルさんにチクったんだよ」

「オニーが勝手に帰るからでしょ!

 あの後の雑用全部私がやったんだから....それに一緒にご飯食べようと思ってたのに...」

「あー、ごめん」

(そっか、報告書の事完全に忘れてた)

「そんなにお酒飲みたかったの?」

「まあ、うん」

「じゃあ次は連れてって」

「.....分かった」


 オニキスは胸に、チクリと痛みを感じた。

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