25.最初の代償
今日の生徒会の業務は少し変わっていた。
「アズール先生がこれやっといてだってさ」
生徒会長のサイアンがそこそこの量の紙が、オニキス達、1年生のテーブルに配られる。
「これって....」
配られた紙の中にはオニキスも見覚えのある、ダンジョンに入るのに必要な書類が含まれている。
「俺たちダンジョンに行くのか?」
「パーティも決まってるみたいですね」
アミィがクラスメイトの名前の並んだ紙を持ち上げる。
紙に書かれたパーティは、実力の近い者達を集めるように分けられており、それぞれ実力より数段下のダンジョンに行くように書かれている。
(随分と優しい授業だ....まあ、初めてモンスターと戦う人も多いし、当たり前か...)
「なんか起こらねぇかな...」
オニキスは誰にも聞かれないように呟いた。
ーーー
この国には古い城や宮殿、伝統的な建物が建ち並び、歴史を感じさせる風景がとても魅力的で、それがファンタジー感を醸し出している。
そんな長い歴史を感じさせるこの国だが、中身は全くそうじゃない。
文化的にはオニキスの前世の世界より何歩の先も進んでいる。
言語も体系も芸術も、魔法が発展させてしまった。
例えば食文化、優秀な魔法使いが集まれば天候を操ることなんて造作もない。
それによりこの世界の食料の供給はかなり安定しているし、魔法を使った調理法はオーブンを使うより細かな調整が出来る。
オニキスもこの世界の調味料の多さには驚愕していた。
さらに流通面でも、食材を転送魔法なる物で世界中に送ることが出来る。
もうこの世界に科学が入り込む余地なんてない。
科学式も物理法則も魔法が全てねじ伏せてしまった。
そして、前世の人々が羨む乗り物に、今、オニキス達は乗っている。
オニキスは広々とした車内からこの国を見下ろす。
大きな城壁に囲まれた街は、夜も活気づいており、キラキラと輝いている。
そう、オニキスが乗っているのは空飛ぶ車だ。
車内には、オニキス、メーガン、シルバー、アミィ、エメリアの5人が乗っている。
この5人が今回ダンジョンを一緒に攻略するパーティだ。
他愛のない話をしていると、空飛ぶ車が降下を始める。
目的地についた様だ。
車を降りると、辺りを植物で囲まれた獣道がある。
車で行けるのはここまで、ここから歩いてダンジョンへ向かう。
「私ダンジョン初めてなんですけど、もしかして私だけですか?」
軽い登山を行いながら、アミィが皆に声をかける。
「大丈夫だよ、このダンジョンは私とオニーだけでも攻略出来るくらいの難易度だから」
エメリアがアミィに優しい笑顔を向ける。
「オニキス、エメリアさんと知り合いなの?」
「まあ、幼馴染みたいな感じ」
「そう....強い?」
「えぇ.....なんだその質問、
俺の方が強いけど、一番戦いたく相手って感じかなー」
「そうか...」
シルバーはチラリとエメリアを見て、そして興味無さげに目を逸らした。
しばらく歩くと、大きな洞窟が現れる。
「じゃあ行きますか」
オニキスが一人でスタスタと洞窟に入った。
こうして、サラッとオニキス達のダンジョン攻略が始まった。
ーーーー
「はぁ、はぁ、なんなんだお前ら!」
オニキスは少し広い部屋に寝っ転がり叫ぶ。
他のメンバーも肩で息をしながら座り込んでいる。
結果から言うと、オニキス達のダンジョン攻略は散々だった。
オニキスとシルバーが絶望的に噛み合わない、戦闘中に何回も2人はぶつかり合い、下手したら仲間の剣で死ぬ可能性もあった。
それにアミィとメーガンの経験不足も顕著で、アミィに関しては後ろで見ているだけで何も出来なかった。
「リーダーを決めようか」
エメリアがそう提案する。
「そうだね、じゃあ俺やるから、皆ちゃんと指示聞いてね」
オニキスが立ち上がる。
「オニキスは適任ではないと思います」
ずっと聖女モードだったメーガンが久しぶりに口を開く。
「そうですね」
アミィも同意する。
「えぇ、俺たち仲間だよね...」
「エメリアさんがいいと思います」
アミィが呟く。
ーーーーー
「オニー!下がって」
オニキスがエメリアの声を聞き、下がると、メーガンの遠距離魔法が放たれる。
「シルバーはそれ以上前出ないで!」
少し離れた所から横槍を入れようとするモンスターへ、シルバーが勝手に突撃しようとしたのを、止めて、エメリアが魔法で撃ち抜く。
エメリアの指揮は上手くハマっていた。
パーティが機能し始めるとサクサクと攻略が進んでいく。
呆気なく、ダンジョンの最奥の部屋まで辿り着いてしまった。
「お疲れ様、お昼どこかで食べる?」
「えー疲れたしさっさと帰りたくない?」
「そ」
オニキスとシルバーが一斉に来た道を振り返る。
「なんか、来るぞ」
(なんだこの感じ、魔力じゃないけど、凄い強い事は分かる)
「グオォォォォォォオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ!!!!」
低い音が周囲に響き渡る。大きな音が壁に反響し、音の出処はいまいち分からない。
「鳴き声?」
「アミィ!メーガン!取り敢えず後ろに!全員一旦魔力抑えて!」
エメリアが静かに叫ぶ。
オニキス達が魔力を抑えると、周囲の明かりが消える。
アミィが明かりの魔法を解いたからだ。
耳が鋭敏になると、ひたひたと足音が聞こえ出す。
(こっちに来てる)
音が止まり、真っ赤な点が2つ、部屋の入口に浮かび上がる。
「あれは目だ!もうバレてる!アミィ!明かりを!」
アミィが魔法を発動し、周囲が明るくなった.....




