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22.蛇の習性

 オニキス達はトンネルに入る、そこには最小限の明かりしかなく、互いの表情や動きが分からない。


「言われなくても分かると思うけど、俺とエメリアの関係は他の人に勝手に話さないでね!」

「私がそんな無遠慮に見える?!」

「うん!」

「そんな!あんたの方がよっぽど無遠慮じゃない!」


「アミィ!聞いてるのか、お前もだぞ」

 興味無さげに話を聞いているアミィにも、念を押しておく。

「分かりました、だから教えてください」

「?何を?」

「貴方がエメリアさんを避ける理由、迷惑掛かるから、だけじゃないでしょう?」

 アミィの無機質な目がオニキスを捉える。

 そんなアミィに圧倒され、オニキスの返答は遅れてしまう。

「いいや、それだけだよ」


 トンネルを抜けると、広々とした、噴水のある広場にたどり着く、周りにはカップルが沢山おり、人目も気にせずイチャイチャしている。


 すると1人の男が近づいてくる。

「君達、何やってるの?」

 少しいい匂いのする、イケメンだが軽薄そうな男だ。

 チラチラとオニキスを見ている。

「ナンパですか?彼女さんが悲しみますよ」

 アミィがその男を見つめ答える。

「彼女はいないよ」

 

「傷心旅行ですか?」

 アミィの言葉にその男は明らかに動揺し始める。

「な?!なんの話だ?」

「アストリアから来たんですか?」

「っ!何故知っている!」

「原因は貴方でしょう?なのに未練はタラタラ、振られたから旅行なんて...ちょっと大袈裟じゃないですか?」

 その男は顔を恐怖に染めアミィから逃げ出した。


「え?当たってたの?なんで分かったの?」

 メーガンもまた、驚愕に顔を染めながら、アミィを問い詰める。

「右手の指に1つだけ、使い古された指輪がありました、恐らく大切な人の贈り物でしょう。

 それに女物の香水の匂い、恐らく彼女の物でしょう。

 私達に話しかける前、カップルを苛立たしげに見ていました、それにストレスであまり眠れていない様でしたし、彼女の香水を使ったのは未練があるからなのか、ストレスを抑える為か」

 オニキスが楽しそうに笑う。

(探偵みたいだ)

「出身は?!どうやって?」

 メーガンも少し興奮した様子で話しかける。


「旅行者だと分かったのはオニキスさんを知らなかった事ですね。

 場所は香水の匂いから判断しました、デザートウッドの香りなど乾燥地帯でよく見られる匂いがしました。

 彼にはお金があまりなさそうなのでそう遠くない所から来たのでしょう。条件に合いそうなのはアストリアしかありませんでした」

「アミィさん凄い!、じゃああの人は?!」

 メーガンはアミィの腕を取り楽しそうに話している。

(メーガンテンション高いな、素が出ちゃってるよ)


 オニキスが楽しそうな彼女達を羨ましそうに眺めていると、不意に後ろを見たアミィと目が合う。

 その目が雄弁に語っている。


ー私に嘘は通じないー


 オニキスは気まずそうに苦笑いするしかなかった。



 それから5分程歩き、遂にアミィの家に辿り着く、小さくも大きくもない二階建ての家だが、一人で暮らすには大きすぎる家だ。

 

「ここに一人で住んでるの?」

「いいえ1階には老夫婦が住んでいて2階を借りてます」


 ドアを開けるとすぐ階段があり、三人は上がった。

 アミィらしい、本の匂いが溢れる家だった。

 廊下を進みドアを開けると、大きな机の上から大量の本や紙が床に溢れ出ている部屋が現れる。

「アミィ?何この部屋」

「リビングです」

「そうですか」

 メーガンはあまりの衝撃に敬語に戻ってしまった。

 

「お茶を出すのでそこのソファーで待っていてください」

 そう言ってアミィは隣の部屋へ行ってしまう。

 残された二人は顔を見合わせた。

「オニキスさん、ソファーというのは何処にあるのでしょうか?」

「あの不自然な本の山じゃない?」

「ハハハ、ソンナバカナ」

 二人でソファーのあるであろう本の山を軽く片付けていく。二人の手は埃で少し黒くなっている。

「どんなお茶が出てくるのかしら...」

 メーガンが死んだ目で呟いている。


 オニキスはメーガンの様子が面白過ぎて笑いを堪えるのに必死だ。


 ギリギリ座れるくらいに片付けると、ちょうどカップを運ぶアミィが現れる。


「ああ..ありがとう」

 渡された紅茶はパッと見普通だった。

 オニキスが普通にその飲み物を飲んでいるのを見て、メーガンも意を決して飲み込む。

 すると、どんどんメーガンの顔が歪んでいく、聖女のプライドが吐く事を拒否し、必死に飲み込もうとしている。

 メーガンが歪んだ顔でオニキスを睨み付ける。

(こっち見ないでくれ!)

 その面白過ぎる光景を直視出来ず、手元にあった本を読み始めた。


「アミィ、治療するのに寝っ転がれるところはある?」

「そのソファーか、私のベットですかね」

(どっちも嫌って言ったら怒られるかな)

「じゃあベット借りようかな」

「分かりました来てください」


 カップを積み上げられた本の上に置いて、アミィが廊下へ出ていく。

 残された二人も慌ててついて行く。


 別の部屋へ入ると綺麗なベットが置いてあった。

 ベットの周りは決して綺麗とは言えないが、他の部屋と比べたら綺麗に見える。

「ベットは綺麗なのかよ....」

(ここまで綺麗だと逆に使いにくいよ)


「睡眠は大事ですから、

 オニキスさんもその汚い服は脱いでください」


 オニキスはアミィが何を言っているのか分からず、涙が溢れてしまう。

「メーガン....」

「オニー...貴方の気持ちは分かるわ、あの部屋に比べたら貴方はとても綺麗よ」

 メーガンはオニキスの頭を優しい顔で撫でる。

「メーガン....聖女みたいだ....」


「....聖女よ」


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