20.交代
アミィによりアレクスの勝利が宣告され、アガットがエメリアに連れられ医務室へ行く。
「次は誰か俺とやる奴はいねぇのか!」
アレクスが観客と化しているクラスメイトに叫ぶ。
クラスメイトは顔を見合せ何が話しているが、誰もアレクスと戦う者は居ないらしい。
そんな態度が気に入らないアレクスは舌打ちする。
「じゃあ出席番号だ!高ぇ奴は?」
クラスメイトが一斉にオニキスを見る。
オニキスは慌ててタンザーの後ろに隠れた。
「ごめんタンザー、俺もう疲れたから隠して」
クラスメイトの視線を追って、アレクスはタンザーを見つけ、歩いて近づいて来る。
「お前か、久しぶりだな天才剣士、剣は持ってきたのか」
「いや、持ってきてない」
アレクスは舌打ちしてタンザーの襟を掴む。
「雑魚が...剣の使えねぇ天才剣士に興味はねぇんだよ!」
「やめろよアレクス、他人の秘密をペラペラと、いやらしい手使いやがって」
アレクスはクレイには目もくれずタンザーを軽く突き飛ばす。
「俺はもういい、後はお前らで勝手にやれ」
そう言って踵を返して何処かへ歩いていった。
ーーー
天才剣士タンザー、剣聖と呼ばれた男にその才能を見初められ弟子にスカウトされた話はあまりに有名だ。
数多の怪物を排出してきた剣聖が天才と称したのは後にも先にも彼だけだった......
そして僅か10歳で戦争に投入され、それが原因で剣を振れなくなったというのもまた有名な話である。
ーーー
「あいつも悪い奴じゃないんだ、オニーは仲良くしてやってくれ...」
クレイは少し悲しそうにオニキスに呟く。
「クレイ...お前、良い奴だな」
ひょっこり顔を出したオニキスがそう言うと、クレイは少し照れ隠しなのか、少し目を逸らした。
「本当だよね、ありがとうクレイ」
「やめろよ、あんま褒めんな」
クレイは顔を少し赤くしてポッケを弄り、飴を取り出して食べた。
「何その照れ隠し」
タンザーがそう言って笑った。
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それから幾つかの講義を受けた、最初の授業ということもあり、オリエンテーションのような楽しい授業が続くが、教室に漂う嫌な空気が変わることはなかった。
授業の合間にある休み時間で、勇者に話しかける者はいなくなった.....
その避けられ様は原因を作ったオニキスより酷かった。
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昼食の時間。
オニキスは体育館程の広さがある食堂へ行くと、多くの生徒がごった返しになっているのを見て足が止まる。
「昼休み長いなと思ってたけど.....」
オニキスが仕方なく並ぶと、意外にも列はスルスルと進み、すぐに店員さんの所にたどり着いた。
少し視点を下げるとケースがあり、中には多種多様な料理が並んでいる。
「31アイスみたいだ」
オニキスはバランスよく料理を注文し、最後にパンを受け取って席を探す。
すると広い食堂なのに何故か人が集まっている場所を発見する、オニキスが近づくとその中心にはメーガンが見えた。
「聖女様~、一緒に食べよ〜」
オニキスがそう言うと、周りの人混みが、皆オニキスを睨みつけて解散する。
「嫌です」
メーガンは相変わらず無関心な目をオニキスに向けるが、いつもより警戒の色が少ない、恐らくメーガンもあの人混みに苦労していたのだろう。
オニキスが無遠慮にメーガンの前に座る。
「勇者をぶっ飛ばしたの、まだ怒ってるの?」
「なっ!別にシルバーは関係ありません!」
「まあまあ、そんな話がしたいんじゃなくてさー」
オニキスはパンを上下半分に切り分ける。
「ちょっと話す内容纏めるから待ってて」
そのパンに受け取った料理を全て挟み込む。
とても美味しそうには見えない、汚い料理にメーガンはドン引きしている。
(ゲームのストーリーをショートカットしよう)
「この学校に王が来た時、俺はびっくりした、なんでわざわざここに来るのか、他にも重要な拠点はあるのに、明らかな特別扱いだ」
その料理を丁寧にナイフを使って1口台に切り分ける。
「理由を言われても納得出来なかった」
切り分けた料理をフォークで1つ、口に運ぶ。
「でもみんなは当たり前に納得してた」
淡々としたその食事と話にメーガンが引き込まれていく。
「俺もやっと気づいたよ、その理由に」
その汚い料理と上品な食べ方に、メーガンの視線は自然とオニキスに誘導される。
「勇者だろ?」
勇者と聞き、メーガンの心臓が掴まれる。
「皆、勇者が魔王を倒すと信じ切ってる、だから王がここを守るのもみんなにとっては普通なんだ...
街の人も戦争中なのに呑気な空気が流れてるし。
だから皆んな、勇者が俺に負けたのも受け入れられない。弱い勇者が受け入れられない。
ねぇ、聖女様、俺は勇者が可哀想だ... あんな小さな背中が背負っていい重さじゃないよ」
メーガンの目には涙が浮かんでいる。
「そんなの私だって思ってるわよ!私だってどうにかしようとしてきた!」
メーガンが泣き叫ぶ用に訴える。
「もし聖女様が完全に俺に協力してくれるならさぁ」
オニキスはメーガンを落ち着かせるように、彼女の拳に自分の手を添えた。
「代わりに俺が魔王を倒すよ。」




