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2.ニューキャラクター

 広い部屋の大きなベットの上に寝転がる小さな少年を窓からの光が照らす。

 顔が光に照らされ彼の目が覚める。

 

「なんだこの汚ねぇ部屋、ここがゲームの世界?」

 目を開けた彼の目に最初に飛び込んできたのは、太陽の光に照らされキラキラと光る大量の埃だった。


 周りには古臭い家具が並んでいる。

 彼はアンティークのドレッサーを見つけ、鏡を覗き込むと、鏡には黒髪黒目のイケメンがいた、年齢は小学生後半くらいに見える。

「いいね、キャラデザは最高だ」


「で?何すればいいんだ?」

 とりあえずドアに近づき扉を開けようとするが、鍵が掛かっている。

「は?最初の部屋から出れないってどんなゲームだよ、説明書は?」


 取り敢えずこの狭くて暗くて汚い部屋を漁り始める、引き出しから日記を見つけ出す、おそらく主人公の物だろう。

「これが説明書か」


日記から分かった事はこうだ。

・俺の名前はオニキスである事

・この家は貴族である事、名前は分からなかった

・俺が世界中で嫌われている黒い魔力を持っているのでここに幽閉されている事

・外を見たことがない事


「なんか敵キャラみたいな設定だな、面白い」


 『魔力』

 この単語を見てからオニキスはずっとソワソワしていた、正直、日記の後半は流し読みしていた。


「早く魔法使いてぇー

てか、これだろ?魔力って」

(お腹のあたりに熱?を感じる、前世の体には無かった感覚だ、絶対これだ)

 オニキスは確信しながら腹の熱を動かして見る、まるで新しく生えた3番目の腕を動かしているようだ。

(楽しい)

「むっず!なんかチクチクするし!」


 動かした魔力を指先から放出してみる、すると黒い光を放つ粒子が指から漂い初め、まるで火の前にいるような暖かさを感じる。が、同時に倦怠感や気持ち悪さを感じる。

 おそらくこれが魔法の代償なんだろうと、オニキスは勝手に納得する。


 すこしして扉から駆け足の足音が聞こえ勢いよく扉が開かれる、そこには不快感を隠そうともしない様子の、藍色の髪と目を持つ若いメイドが立っていた。


「魔法を使うなと言いましたよね?」

(ダメなの?!日記に書いとけよ!)

「使ってないよ?」

できるだけ可愛く、あざとくを意識して呟く。


「魔力の使用を感じたら、容赦するなとの命令ですの

で」

(こんなイケメンがお願いしてるのに!)

 メイドの体から青く輝く粒子が立ち昇り、体の前に粒子でできた幾何学模様が現れる。

(なんかやばそう)

 オニキスは急いでベットの裏へ隠れ、様子を窺う。メイドの周りにはいくつかの水球が浮かびそのうちの1つがこちらに飛来する。


 咄嗟に頭を下げて回避する。水球は後ろの窓に当たりガラスが割れる。

 

(日記にはあのガラスには魔法が掛かってて壊せないって書いてあったのに!

てか、なんで俺の魔力の使用がばれてんだよ、あんなちょっとの魔力で気づくのかよ)


「隠れてないで出てこい」

 メイドは再び魔法の準備をする。


 オニキスはベットに隠れているが、さっきメイドがいたところから熱を気配を感じる。


(なんだこのあったかいような不思議な感覚、そういえばさっき自分で魔法を使った時にも似たような感覚を感じた........魔力や魔法は見なくても感じ取る事ができるのか⁈

 いい事思いついた)


 魔力を手のひらに集め始める。

「お前が出てこいよバーーカ!」


 魔力を地面に向かって放出する。


「どうやって魔法が使えるようになった?!くそっ!」

 メイドが魔法で作った盾を構えながら魔力の気配に向かって走り出し、ベットの奥を覗き込んだ。


 もちろんオニキスに魔法なんて発動できない為そこには黒い粒子が漂っているだけだ。


 しかしそこにはオニキスもいなかった。


「何処に行った!」

「気持ちいいくらいに引っかかったな!、ほんとにバカだったんだ」


 笑いながらベットの下を潜り抜けてきたオニキスが後ろからメイドの首を締め上げる。

「ヴッッ」


 暴れるメイドを押さえつける。よほどオニキスの行動が予想外だったのか、メイドは軽いパニックになっているようだ。


 少ししてメイドが落ち着きを取り戻す。


 オニキスは背後から魔法の気配を感じた。

(やばい!けど! 次のチャンスは無い!)


 オニキスは背後の魔法を忘れ、目の前のメイドを締め上げる事に集中する。


 じたばたと動くメイドの体から抵抗が消える、失神したようだ。


 しかし、後ろの魔法の気配は消えていない。


「間に合わなかったか....」


 オニキスの背後に大きな水球が現れその背中を襲う。

「熱っい!」

 その水は熱くまた、粘り気を帯びていた、背中を伝って腕にまで絡みつき、火傷の傷を刻んでいく。


 オニキスは着ていた服を脱ぎ捨て、ベットのシーツを使い激痛に耐えながら熱湯を拭き取った。

(このままじゃ下手したら死ぬ、メイドも危ないか?取り敢えず逃げないと!)


 一応メイドを心配する振りをして、近づき、命の危険がないと分かると、頭にチョップをしてから、割れた窓から外へ飛び出した。

 塀を超えて、とりあえず病院を探す。

 道中、肌に当たる風すら、オニキスにダメージを与え、その激痛に顔を歪めた。

 

 オニキスは霞んだ目であたりを見渡す。

(なんか見たことある街並みなんだよなぁ)

 かなりの注目を浴びるがオニキスにそれを気にする余裕はない。

(皆んな見てないで助けてくれよ)

 肌の痛みが少し和らいだかと思ったら、今度は体の内側に激痛が走る。

「ぐぁぁぁぉ」

(あの水には毒でもあったのか?!)

 とうとう走る事すらできなくなった。


「あのー、大丈夫?」

心配そうな顔した、若葉色の髪を肩まで伸ばした少女がオニキスに話しかける。


(こいつの顔にも見覚えがーーー)


 オニキスはここで意識を手放した。

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