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19.魔法の目

 オニキスが演習場に戻ると先程とはまた違う、不思議な空気が流れている。


「お疲れ、腕は大丈夫か?」

振り向くと、クレイともう一人金髪の貴公子がいた。

(またメインキャラだ)

「ああ、剣貸してくれてありがとう」

そう言うとクレイは苦虫を噛み潰したような顔になる。

「あれか...済まなかった、あの負けは俺の剣のせいだ」

「気にしなくていいよ、俺が武器を使うと大体ああなっちゃうんだ」

「そうか...なら、あんたに合う武器をいつか作るよ」

「よろしく」

オニキスとクレイは固い握手を交わす。


オニキス達の会話が終わった事を確認し、金髪の貴公子がオニキスに手を差し出す。

「僕はタンザー、よろしく」

「よろしく、俺はオニキス、オニーでいいよ」

オニキスは手を握り返した。


「で?なんでこんな空気に?」

「あー、簡単に言うと6番の奴が4番の子に喧嘩売って、30番の子が仲介に入って、なんやかんやあって6番と30番が戦う事になった」

「ほぇー」

 オニキスがポカンとした顔で適当に答える。

「分かんなかった?」

「うん、名前すら覚えてないから番号で言われたらもっとわかんないよ」

「1番の余裕か?」

「え?そう見えちゃった?ゴメンネ!」

 オニキスがてれてれしながら謝ると、決闘場に誰がが上がるのが見えた。


 オニキスが演習場に来る前に会った少女が武器を持たずに現れる。

 彼女は藍色の魔力を撒き散らしながら手のひらをグーパーしている。


 そしてもう一人、明るい赤色の髪の少しガラの悪い男が遅れて決闘場へ上がる。

 その手にはシンプルな剣が握られている。

(またメインキャラだ、確か名前は、、アレクスだったかな?)


「なあタンザー、止めなくていいのか?6番と30番だろ?危なくないのか?」

 クレイが心配そうな顔でタンザーを見る。

「まだ入学したばかりだしそんなに差は無いと思ってたんだけどー」

 タンザーがオニキスを見て、やっぱり止めた方がいいか?と呟き思案する。

「でもアズール先生の壁を最初に突破したのはあの子だよ」

 オニキスが少し楽しそうに答える。

「え?まじで?」

「まじ、だからアガットに100オーリス」

「金を掛けるのか、未成年は犯罪だぞ」

「ハハッ、100オーリスまでは犯罪じゃないんだよ?」

 納得していないタンザーを置いてオニキスとクレイは拳を合わせる。

「俺はもちろんアレクスだ!」



 アレクスの体から真っ赤な魔力が火の粉のように上がる。

彼等の準備は整った様だ、またアミィが舞台に上がる。

「よーい、スタート!」


 アミィが腕を振り下ろすとアレクスが翔ていく。

 対するアガットは静観し、なんの構えも取らず脱力している。


 アレクスが振り下ろした剣をアガットは余裕で避ける。その後の鋭い折り返しの剣も彼女には当たらない。

 まるで未来でも見えているかのように、スルスルと彼の攻撃を躱し続ける。

 剣の間合いから逃げるのではなく、剣の間合いの中で避け続けている。


 

「どうゆう事だ?かなりの実力差があるように見えるけど」

 クレイが困惑気味にタンザーへ話しかける。

(クレイはタンザーの事を信頼してるんだな、まあ、そりゃそうか)

「魔眼だ」

「マジか、付与されてる魔法は未来視か?」

「いや、あれは魔眼の基本性能だ、常人離れの観察力による予測だろう」

「あれがただの予測?」


 アレクスの剣の振りと同時にアガットは距離を詰めカウンターを決める。

 完璧なカウンターが顎にクリーンヒットする。

(死なないように手加減してる、いい目だなぁ)


 オニキスが宇宙の様にキラキラしているアガットの目を見つめる。

(欲しい)

 

 アレクスが魔力が体から発散させ、途切れた意識を取り戻すように叫ぶ。

「クソがァァァァァァ!」

 完全に意識を取り戻したアレクスがまた火の粉を散らしながら走る。


「なぁ、タンザー、なんでアレクスは近接戦にこだわるんだ?離れて避けられない程でかい魔法出せばいいんじゃねーの?」

「アレクスはプライド高いから、逃げたと思われるのが嫌とかじゃない?」

 

(なんとなく彼女の前で魔法を使うのは怖い感じがする、彼も同じ事を感じてるのかも)



 アレクスがさっきよりコンパクトな振りで剣を振る。

 が、当たらない、

 そして折り返しのもう一撃をアガットが腕に魔力を纏い防ぐ。

 金属のぶつかり合う音が久々に周辺に響き、アガットは驚きで目を見開く。


「当たった....でもどうやって?確かに速かったけど今まででもそんな攻撃いくらでもあったぞ」

 タンザーが目を細め、いまだに大きな音を立て続ける二人をじっと見つめる。

「...アレクスがフェイントをかけてる」

「フェイント?俺には普通に剣を降ってるように見えるけど」

「とても細かい筋肉によるフェイントだ、魔眼は攻撃の予備動作の予備動作を読んでる、だから普通のフェイントは効かない、なるほど、そこにフェイントを入れればいいのか!」

(お前はそれを魔眼も無しで見抜けるんだな)

「よく分かんないけどフェイントなんてあんな何回も通用するのか?」

 苦悶の表情を浮かべるアガットを見ながらクレイは呟く。

 

 今もアガットはアレクスのフェイントに翻弄され続けている。

 アガットの良すぎる目がフェイントを見逃せず修正しようとしても出来ない様だ。

 ハンターは主にモンスターを相手に戦う職業であり、対人戦に弱い人が多い、恐らくアガットも例外では無いのだろう。


「俺の負けか」


 オニキスがポッケから硬貨を取り出しクレイに投げた。


 硬貨を受け取ったクレイがニヤリと笑う。

「よっしゃ!今晩はご馳走だ!」


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